女神様のミスで俺だけ現代に転移したけど、強くなったから異世界に戻って無双してやるよ
ジョージさん
第1話 集団転移の始まり
ある日、某県内にある
文字通り、当時教室に居た全員が忽然と消えてしまったのである。
事件が起きた時、校庭で体育の授業中だった教師と生徒達から証言を得られた。
事件当時、件の教室から眩いばかりの光が放たれていたそうだ。
校庭、つまりグラウンドから、その二年三組の教室はよく見える場所にあり、窓際で授業を受ける生徒が見える位置にあった。
光が収まると、窓際で授業を受けていた生徒の姿が見えず、異常を察した体育教師が、他の教師を連れて駆け付けると、教室の中には教師も生徒も誰も居なかった。
生徒が書いていたノートを確認したところ、つい先程まで生徒が居たような痕跡も残されており、授業の途中で消えたというのは明白であった。
この事は、直ぐに教頭や校長に伝わり、複数の教師達で学内を探したが誰も見つからない。
結局、警察に通報する事となった。
通報を受けた警察は、普通の捜索願いとして受理する。最初は失踪した人数が多いので、直ぐに見つかるだろうと思われていた。それなのに目撃情報が全く無いことから、捜査は遅々として進まずに日々は過ぎていった。
その間に、ネットでは集団神隠しやら異世界クラス転移やらと好き放題の書き込みが飛び交い、ニュースやワイドショー等で警察の初動捜査が悪いとか、組織の仕組みのせいで動きが遅れたと、マスコミに叩かれていた。
世論の警察に対する不信感により、事態を重く見た警察上層部は、一丸となって全国で目撃情報を募り、組織を挙げて全力で捜査に取り組んだ。
そんな矢先に、一人だけ生徒の保護に成功する。
"徳明高校二年生
彼は東京にある交番に保護を求めてきたそうだ。
交番に勤務していた警察官によると、行方不明になって二週間が経過していたが、彼は消えた当時のままの制服姿で清潔感もあったそうだ。
二週間着の身着のままで過ごしていたにしては、清潔すぎたと語っていた。
赤城少年に事件解決の一縷の望みを託した警察は、彼を保護した後に、事件当時に何があったのか?と聞いてみた。
そんな彼は、事件当時の事を全く覚えていないと言う。
授業を受けていたところまでは覚えているが、光に包まれた後は記憶が無いと証言していた。
赤城少年に嘘を言っている様子はなく、これ以上は情報も得られなかった。警察としては長く勾留も出来ない為、保護者の元へと帰すことになる。
事件は振り出しに戻り、何の進展もないまま月日だけが過ぎていった。
ここからは事件が起こった日に遡る。
徳明高校二年三組の教室では、担任の谷川先生が、俺たち三組の生徒達に日本史の授業をしていた。
「え~であるからして、ここはテストに出る範囲だから覚えておくんだぞ~。何か質問はあるか~?」
特に誰も質問は無かったようで、さっきまで書いていた黒板の内容の前半部分を消していった。
「次に飛鳥時代のことについてだが、ん?なんだ?」
谷川先生が俺たちの足元に目線をやるので、俺たちも足元に目をやると、何やらうっすら床がと光ってた。
「おいおい、誰かのイタズラか?蛍光ペンにしては光が違うような···」
先生が誰かのイタズラかと尋ねるが、皆が自分じゃないとばかりに、周りを確認しあっていた。
「先生、なんか足元の光が強くなってません?」
「お~確かにな。何かの図形みたいだけど、机が邪魔でよく見えないな」
俺も足元を見て思ったけど、これは図形というよりも魔方陣じゃないか?ていうか、これって異世界転移キターってやつか!
その瞬間、急に強くペカーっ!と光ったかと思うと、あまりにも眩しすぎて目を閉じた。
「きゃー!」
「なんだよ!なんなんだよ、これ!」
「わ、私、怖いわ」
「大丈夫だよ、私もついてるから」
「お母さーん!」
クラス中で悲鳴や叫び声が聴こえるけど、誰も動かなかったみたいだ。俺も体を動かそうとしたけど、金縛りにあったように全く動かない。
そりゃ悲鳴もあげるなと思ったら、なんか冷静になれた。
ようやく光が消えたと思ったので、目を開けてみると先程まで椅子に座っていたのに、今は床に座っていた。
周りを見ると、神々しい雰囲気の神殿っぽいような場所で、谷川先生がいる場所よりも奥の方に、女性が一人立っていた。
皆がそちらを見ているので、谷川先生も視線に気付いて後ろを振り返ったら、女性がこちらに話し掛けてきた。
「皆さん、はじめまして。私は愛と平等の女神ラブイラと申します。このような形で皆さんをお呼びしてしまい、申し訳ございません」
その女性は自分で女神だと名乗った。俺達の視線を受けた女神は申し訳なさそうに謝罪をしていた。
確かに容姿やプロポーションは女神っぽい。金髪ロングで出るとこは出てるし。女神認定待ったなしだ。
周りの生徒も谷川先生も、急な展開についていけずに固まっていた。誰も何も言わないので、女神様?は、話の続きを始めた。
「皆さんをお呼びしたのは、私からお願いがあるからです。私の管理する世界、テラフィアを救ってほしいのです。今、テラフィアでは魔族と呼ばれる魔の者が、各地にいる魔物を操って暴れています。これらを討ち倒し、世界を救ってほしいのです」
お決まりっぽい展開だなぁと思って聞いていたが、周りもようやく事態を飲み込み始めたのか、女神様に騒ぎ立て始めた。
「そんなおかしな話があるか!早く地球に帰せ!」
「いやぁぁ!帰りたいよぅお母さ~ん!」
「ふざけんなっ!何勝手なこと言ってやがる!」
「み、皆、落ち着いて!」
「ははは、今日の夢はリアリティあるな」
なんか帰りたい勢が多くて、異世界だやったぜ!ひゃっほう!って思ってるのは俺だけかもしれん。
ヘイトがこちらに向きかねんから、ここは黙っておこうっと。
『静まりなさい』
女神様が何やら力の籠った言葉を発すると、騒いでた奴らや、泣いてた女の子やらが、ピタッと静かになった。
すっげぇー!あれって言霊ってやつじゃね?
「今から行く世界は、剣と魔法の世界と言えば解りますか?日本人なら大抵の人は、これで理解してくれるのですが」
周りを見たら、生徒も谷川先生も理解出来てないっぽいな。女神様も察したみたい。
「٠٠٠こういう事もあるのですね。テラフィアでは、人が魔物と戦う術として、職業やスキル、魔法といった
ここでようやく谷川先生が立ち直った。
「よく解りませんが、あ~女神様?我々を帰してもらうことは出来ないのですか?」
「テラフィアから魔族という脅威を取り除いてもらえれば、その対価として日本にお帰しすることなら出来ます。こちらの一方的なお願いになりますが、どうか皆さんお願いいたします」
「な、そんな!帰れないのか?」
「はい。こちらからお願いするのですから、せめてものお詫びという理由ではないですが、皆さんが戦う為の職業とスキルを授けましょう。どうぞこちらから選んで下さい。職業とスキルは一人につき一つだけ選べますが、誰かと同じものを選ぶことは出来ません。選んだ後に、転移する場所も選択してもらいます。こちらも誰かと同じものを選ぶことは出来ません」
「そ、そんな···!」
谷川先生はショックを受けて愕然としていた。
女神様が手を翳すと、女神様の前にゲームのメニュー画面のようなものが現れた。大きさは学校の黒板を縦にしたぐらいあるから、ここからでも良く見える。
一番左に、上から下まで一列に職業のリストが並んでいた。その横にはスキルが上から下までズラッと並んでいた。更にその横には何かの国名や地名らしき名前も並んでいた。
全て同じ数だけあった。しっかりと全員がバラバラに転移させられるようだな。
暫く沈黙が続いたが、我に返った賢いクラスメイトたちから順に、我先にと女神様の元へと駆け出し、必死になって職業とスキルを選ぼうと生徒同士で揉み合っていた。
「こら!お前たち、落ち着きなさい!」
「みんなー!止めるんだー!冷静に、冷静になるんだ!」
谷川先生と、クラスのリーダー格である
結城正人は、いけ好かないヤツだけど、こういう時はリーダーシップを発揮する。
「うるせぇ!俺が先に選ぶんだ!早い者勝ちだろ!」
「いやだっ!僕が先に有益なものを選ぶ!」
「異世界で死にたくないもん!私が先よ!」
どうやら今回はリーダーシップを発揮できなかったようで、結城の声も無視されていた。
『静まりなさい』
またもや女神様の言霊?で、皆が一斉にピタッと静かになった。
「あまりにも醜い。最初に言いましたが、私は愛と平等の女神です。全て平等にしています。少し詳しく説明しましょう。一番上にある職業やスキルが一番強力なものとなります。下にいくにつれ弱くなっていきます。それと転移する場所ですが、一番上にある場所が最も人が多く、治安も環境も良い場所となります。下にいくにつれ、人も少なく、環境も悪くなります」
皆が固唾を飲んで女神様の話を聞いている。話が終わり次第、飛び出しそうな奴らも何人かいた。
次の女神様の発言によって、全てが最悪の方向に進んでいった。
「それと、強い職業やスキルを選んだ方は、転移する場所を選ぶ順番が後になります。だってそうでしょう?強い職業やスキルがあるんだから、弱い職業やスキルを選んだ人が、先に安全安心な場所を選ぶ権利があると思いませんか?」
これで先に職業やスキルを選ぶ選択肢が変わった。皆から"強いのを選ぶ"という選択肢が無くなったのだ。
そりゃ安全安心な場所を選びたいよね。なんかそんな空気になってるもん。
「私は愛と平等の女神ですから。全ては平等なのです。さあ、選んで下さい」
女神様の話を聞いて、誰も動かなくなった。先に選んでも後に選んでも、誰かしらに恨みを買いそうだもんな。お前のせいでこんな場所に~とかさ。俺ならまずは強いスキルから選ぶけど。
「誰も選ばないのですか?時間が勿体ないので、そうですね٠٠٠では、出席番号順にしましょう。一番の方から選んで下さいね」
女神様の発言でドキッ!とした。恋とかじゃなくて、ビックリのほうね。何故なら一番は、
渋々と前に出て頭をフル回転させる。
何も出席番号順が一番なだけじゃない。何を隠そうクラスで一番のオタクでもあるのだ!
職業はゲームによって変わるから、恩恵もハッキリと解らない。ならばスキルは強力なものをゲットしたい。
それなら、転移する場所を安全安心にする為に、職業とスキルを均衡にする!まさに孔明の策よ!
目の前にある巨大なメニュー画面を指差して、選んだ職業とスキルを女神様に伝えた。
「職業は一番下の『昼行灯』で、スキルは一番上の創造でお願いします」
「はい。それでは次の方どうぞ」
女神様との素っ気ないやりとりを終えて、なんだかホッとした。
メニュー画面から俺の選んだ職業とスキルの名前が消えると、身体に何か力が宿っている事に気付いた。
もしかしてステータスと念じたら出てくるんじゃね?と思った途端、目の前にステータス画面が表示された。
「力を受け取った方は、"ステータス"と念じると、自分の能力一覧が確認できますので、忘れずに確認して下さいね。ステータスの理については、転移した先で教わって下さいね」
メニュー画面から職業を悩んでる生徒を待ってる間に、女神様からステータスの概要を伝えられた。
異世界かぁ~。一番上と下を選択したから、転移先はある程度は選べるな。どこにしようかな~?
ある程度の転移先の候補を絞ってると、女神様からまたもや告知があった。
「どのような場所か情報がないと不安になりますよね?そこにある国名や地名を、頭の中で念じれば景色や情報が浮かんできますよ」
ほほぅ。試しに一番上にある、キングダム王国を念じてみる。
するとその光景が脳裏に浮かんできた。人口は世界で一番多く、周りの国との関係も良好で、国土は広くて国は豊かである。出現する魔物も魔族も低ランクであるそうだ。
なんか始まりの街!ってな感じになってた。
俺は最後の生徒が選び終わるまで、ずっと候補地の情報を調べていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます