第七話 私にできることを探して…


 あの日、二人で家に帰ったのは夜の十時を過ぎていたと思う。


 そして、クリスマスイブ当日の土曜日に熱が出て病院に行ったらインフルエンザの陽性だったなんて。


 あのまま暖かいお家の中にいたら、こんなことにはならなかったと思うのに……。


 本当に罪作りな私にできることってなんだろう……。


 熱は高くないと言っても、寝ていなきゃならないから、宿題に手を付けることもできないよね。


 インフルエンザで周囲にうつしてしまう一番危ない期間は発症前日から発症日から三日目くらいまでの間。


 だから、海斗もその間はお見舞いに来ないように何度も釘を差していたっけ。その都度私に症状が出てないことも確認していた。


 時々スマホでメッセージを送ったり声を聞きながら、その間に休み中の課題を済ませてしまうことにした。


 それなら、一人で外に出る必要もないし、休みだから遊んでいると言われることもないからね……。



 十二月二十九日、ようやくお互いの我慢の日々が終わって、私は学校の宿題の入ったトートバッグを持って海斗の部屋に向かった。


「心配かけたよな。のぞみが罹らなかったからよかった」


「もう、そんなの言ってこないで? うちは毎年お母さんに言われてワクチン接種が必ず飛んでくるんだから」


 そう、お母さんの仕事柄ね。それに、注射の腕が落ちていないかと、シーズンピークになる前に勤務先の病院で私たち家族で実験するんだもの……。これから逃げることはできない。


 病み上がりだから外に行くわけに行かないし。寝込んでいた間の時間を取り戻すように、私たちは模範学生のように休み中の課題を片付けていった。


 そう、これが昔からの私たちのスタイル。分からないところがあったら、ブツブツ言いながら悩むより前に電話してどちらかの部屋に集まっては二つの頭で考える方が早いんだもの。


 休憩時間以外は参考書を広げて朝から夕方までお互いのワークを片付けている高校生に文句を言う人はいないよね。


 そんな年末だったから、大晦日には課題として出されていたワークは年をまたぐことなく全部のページを埋め終わった。




「おわったぁ!」


 カーペットの上に大の字になる海斗。そうだよね、あれだけ出遅れたのを終わらせちゃったのだから。


「この前のお礼だって、今日はお父さんがお蕎麦打ってるから。みんなで来てって」


「おじさんが?」


「そう。なんかカルチャースクールで教わったら面白くなったみたいでね。最近はなんとか食べられるようになったけど」


 私はスマホで家に電話をして宿題が終わったことを話すと、時間になったらみんなで来てほしいって。


 こうして両家族の年越しそばもなんとか無事にみんなのお腹の中に収まった。


「明日、初詣に行くんでしょ?」


 お母さんが私達に聞いてきた。


「うん、午前中は混んでると思うから、お昼からでもいい?」


「まぁ、今夜がこんなに遅くなっちゃったからな」


 みんなでワイワイしていたらもう夜の十一時。このまま年越しをしてもいいけれど、そのまま寝落ちしちゃったら大変だもんね。


「じゃぁ、良いお年を」


 遠くから除夜の鐘も聞こえる中、私たち二人の一年は終わったんだ。

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