第二話 こんな大ケガ放っておけるわけない!


「のぞみ、突然で悪いけど湿布貰える?」


 あれは中二の終わり頃だったかな。


 私が先に帰って宿題をしていたとき、海斗が我が家のインターホンを鳴らしたことがあった。


「うん、あるから玄関で待っていてくれる?」


 この時間なら学校帰りだから、部活でどこか痛めたのかな?


 珍しいことじゃなかったから、いつも通りだと思って薬箱の中から湿布の袋と包帯を持って玄関に小走りで向かう。


「どうしたの? 診せて……。ちょっと! 湿布どころじゃないよ。お医者さん行こう? 私も一緒に行ってあげるから、すぐ準備するまで! 動いちゃだめだよ!」


 その部分を診せてもらって、私は即座に決断した。


 だって、海斗はユニフォームは脱いでジャージ姿だったけれど、明らかに普段とは違うことが私にはすぐに分かった。


 右の足首が腫れ上がっちゃって、これは湿布だけでは引かないと直感が告げたから。もしかしたら骨も痛めてるかもしれない。


 ちなみに私のお母さんは看護師だから、小さい頃から怪我の手当は教わっていた。そんなこともあって保健委員は私の定位置。


 海斗のお家から保険証とか診察券を預かって、私の自転車の荷台に座ってもらって、近所の整形外科に連れて行った。


「もう、無理してアタックしたんでしょ」


「のぞみにはいっつも迷惑かけちゃうな……。さっきだって宿題やってたんだろ?」


「宿題なんてあとでやればいいもん。それより病院が終わる前に入れてよかった」


 診察室から待合室に戻って会計を待っているときのこんな会話はいつものこと。


 時間も遅かったから、病院に着いたのは受付が終わる5分前だったもん。私は海斗が診察を受けている間、誰もいない待合室で一人待っていた。


 診察結果は想像どおりに酷い捻挫。


 不幸中の幸いで骨は平気だったけれど、筋の痛みや腫れが落ち着くまでは外用だけじゃなく内服のお薬を飲んでも数日かかるだろうってことだった。


 おまけに痛みが落ち着くまではと、病院からは松葉杖を借りて帰ってくる事に。


「明日から、少し早めに出ないとね。荷物は私が持つからいいとして、自転車に乗っていくわけにいかないもんね」


 さすがに今みたいに自転車の後ろに座ってもらう、二人乗りにならないように私が押して歩いてもだ……。学校でも注目を浴びることの多い海斗の気持ち的にも厳しいと思うから。


「ごめんな、のぞみに心配とか迷惑ばっかで……」


「これまでにも怪我して手当したなんてこといつもだったじゃない。どうしたの? 元気ないよ?」


 まぁ、仕方ないか。この怪我じゃしばらく試合の出場はもちろん禁止だし、練習だって出来ないから部活もお休みだろうしね。



 でもね、海斗が怪我をした瞬間を見ていた子から翌朝一番で意外なことを聞いたんだよ……。

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