第24話 牛丼と子フェンリルが仲間になりました。

ペロペロペロペロ


「ゔゔうう〜ん、ん?え?うわぁぁぁぁやめろってブッハハハハくすぐったいだろ」


「呼びかけても起きないんだもん」


フェンリルの子供は、顔をこれでもかと舐めて起こしてきたのだ。


「起きなかったのは悪かったけど、次から舐めるのはなしだからな」


「わかったよ...あ!パパとママを紹介するね。パパ〜ママ〜」


子フェンリルがそう言うと、何もなかった場所からフェンリルが2体姿を現す。


「うわぁぁぁ〜」


狼の何倍もあるフェンリルが2体現れて、真人は腰を抜かす。


「ん?マサトどうした?・・・・・」


真人の驚く声で起きたトンボの目の前にフェンリルが2体もいて驚くが声が出ない。流石のトンボもポカーンとなっているのだ。


「昨日は、我の子が世話になったと聞いた。それに、なんでも食べたことのない料理を食べたとも聞いている。申し訳ないが我と妻にも作ってはくれないか?」


「貴方、急にそんなこと言っても人間が驚くだけだわ。ごめんなさいね人間。まずは、この子がお世話になったことに礼を言うわ。ありがとう。それと、話しやすい姿になりましょうか。貴方も変身してちょうだい」


そう言うと、2人はなんと人間の姿に変身したのだ。


「久々に、この姿になったけどどうかしら?」


母フェンリルが、優雅にポーズを決めて旦那に聞いている。見た目は、スタイルもよく顔立ちも絶世の美女である。


「うむ。やはり最高の妻だな。綺麗だ。」


「あら〜やだわ。貴方ったら、貴方も素敵よ」


旦那フェンリルの方は、ハリウッド俳優のようなイケオジで、誰もが振り向くような容姿をしていた。


「パパとママだけズルいよ!僕も変身したい」


「まだ早いわ。早く大きくなりなさい。そうすれば変身も出来るようになるわよ」


「そうだ。我のように強く逞しい男になるのだ。ブッハハハハ」


フェンリル一家の家族の会話を聞いていた真人とトンボは、あまりにも普通の家族のようで拍子抜けというか、自然と冷静さを取り戻す。


「なぁ〜トンボ、フェンリルって意外に普通の存在だな」


「あ、あ〜思っていたのとは違うな。もっとプライドが高く獰猛で容赦ない存在だと...」


「まぁ〜普通に話せそうだから対話してみるよ」


真人とトンボは、冷静さを取り戻して、フェンリルに話しかけようとする。


「フェンリルさん、驚いてしまい申し訳ございませんでした。えっと、私の料理を食べたいのですか?」


木製の椅子に座り直して父フェンリルに話しかける。


「構わん構わん!驚くのは仕方がない。そうだ。なんでも美味な食事らしいのでな。朝飯がてら食いに来たのだよ。どうだ?作ってくれるか?」


3体のフェンリルは、全員期待のこもった顔で見てくる。


「わかりました。少し時間を頂きますが、朝食を作りましょう。飲み物を用意しますので飲みながらお待ち下さい」


そう言って、オレンジジュースを渡す。


フェンリルの子供は、「おいしい」と言っていたが、大人たちは酒がいいなと言っており、仕方なくトンボにワインとビール缶を渡して、あとはトンボに任せた。


朝から重たいとは、思ったけどフェンリルが満足する物を考えたら牛丼だろと思い、牛丼を作ることにした。今日は、1人前レシピを紹介していく。


まず、牛バラ肉200gを5cm幅に切って準備をしておく。 玉ねぎ1/2を5mm幅のくし切りにして、中火に熱したフライパンにサラダ油をひき、玉ねぎを投入、油が馴染むまで中火で炒める。味付けの為に、水200mlとしょうゆ大さじ3と砂糖大さじ3とみりん大さじ1と料理酒大さじ1と顆粒和風だし小さじ2を入れて、中火でひと煮立ちさせる。そして、牛バラ肉を入れ、アクを取りながら中火で10分程煮込み、ごはんを盛った丼に盛り付けたら出来上がり。紅生姜とかはお好みでどうぞ。


「出来上がったぞ。ってそこ〜酒盛りしないの!」


トンボとフェンリルは、すっかり仲良くなって、結構渡したはずのお酒を全て空にしているのだ。


「おっ!出来たのか?それより、あとで酒を譲ってくれないか?あのワインとビールのうまさに感動してしまった」


父フェンリルは、ワインボトルを持ちながら話してくる。


「その話はあとです。早く食べて下さい。それより、君はこっちにおいで。食べさせてあげるから」


あんな酒ばかりの集団には任せておけないと、フェンリルの子供を膝の上に呼ぶ真人。


「わ〜い!マサトにご飯食べさせてもらえる。よいしょっと。あ!わ〜ありがとう」


短い前足を伸ばして頑張って登ろうとしているのを、真人は脇を抱えて膝の上に乗せるのであった。


「生卵が乗っていますが、新鮮なのでおいしいですよ。潰して肉と下の白い米と一緒に食べて見て下さい。はい!あ〜んして」


フェンリルの子供は、言われた通りに大きな口を開ける。


「あ〜ん。ん〜おいしい〜。僕昨日のよりこっちが好き!甘辛のお肉と野菜と白いのが混ざっておいしい〜」


おいしいそうに食べる姿を見て思わず笑顔になる真人。元々犬好きな真人は、感情を表に出したり話すことのできるフェンリルの虜になっているのだ。


「おぉぉぉ〜なんだこの食い物はぁぁぁぁ!こんなうまいの食ったことがない。ただ肉を焼いただけだと思ったが、未知の味付けと、それを優しく包み込む卵と白い米!なんと完成された食べ物なのだ!それに、肉も臭くなくて噛む度に旨味とタレの味がしてうまい!」


父フェンリルも、ガツガツ食べて大満足のようだ。


「凄いわ!あの街で昔食べた料理は、ゴミね。マサトさんだったかしら。貴方素晴らしいわ。是非うちの子を連れて行ってくれないかしら?」


「ちょっ、急に何故そうなるんですか!心配にならないのですか?」


「それは、我から説明しよう。フェンリルとは、幼い頃に旅をさせるのだ。そこで色々見て回り勉強をする。それに、危機が迫れば念話で話すことも出来るのでな。あれは、何十年前だったか?1番上の子が人間に捕まって、国を滅ぼしたことがあったな。まぁ、気軽に友として連れて行ってくれればいい」


真人は、国を滅ぼした辺りから、そんな重要人物怖くて連れ回せませんよと思うのだった。


「マサト〜駄目?僕迷惑かけないよ。だから一緒につれていって」


ウルウルした瞳で体をこれでもかと擦り付けて甘えてくる子フェンリル。


「あ〜わかったわかった。連れて行くよ。その代わり、ちゃんと言うことを聞くこといいね?」


「うん!マサト大好き」


真人は、完全に子フェンリルの魅了に抗うことが出来ずに負けてしまったのである。


「フフッ、貴方これで安心してもう1人育てられるわね」


「そうだな。今日にでも子作りをしようではないか」


お〜い!お前ら〜人に大事な子を預けたのは子作りしたい為だったのかぁ〜と心の中で発狂する真人だったが、国を滅ぼすフェンリルに臆して言葉にはできないのであった。

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