第17話 寒い日はおでんと日本酒で温まろう!
「そろそろ体も温まってきたから、ビールを貰っていいか?サリルにも、ビールを出してやってくれ。それとこれは、なんて食べ物なんだ?」
四角い箱に仕切りがされた中に、色々な具が入った物を指差して聞くルーベン。
「これは、おでんですよ。おでんとならビールよりぬる燗の方が合いますよ」
それを聞いたルーベンは、グツグツ煮込まれたおでんの匂いが鼻腔をくすぐり、もの凄く食べたくなる。サリルは、腹をグゥ~と鳴らして身を乗り出しておでんを見ている。
「じゃあ、任せるか。おでんも適当に頼む」
大根・たまご・こんにゃく・ちくわ・ソーセージ・タコを入れてサリルとルーベンに渡す。
「これが大根!これがたまご!これがこんにゃく!これがちくわ!これがソーセージ!これがタコです」
ルーベンもサリルも、すぐにフォークを掴んで食べ始める。
「あちぃはふはふはふ、この大根ってやつ柔らかくて噛むたびにジュワァァァとスープが溢れ出てくるぞ。こっちのソーセージってやつは、普段からよく食ってるが、こんなにパリッとして味が染み込んでうまいのは初めてだ」
「待て待て!このたまごの方が凄いだろ?濃厚な黄身もそうだが、白身にこんな旨味が染み込んでるなんて有り得ないだろ。それに、ジュワッとスープが出てくるちくわに、プリプリくにくにのこんにゃく。うめぇ〜のは、こっちだ」
その後も、どっちの方がうまいのか言い合いをしていたが、見兼ねた真人がぬる燗を出す。
「ぬる燗です。そんな言い合いしてないでタコも食べて下さいよ」
だが、二人は凄く嫌な顔をする。
「これって...ビッグオクトパスの足だろ?あのぬるぬるして毒の墨を吐いてくる」
「あの時は、死ぬかと思ったよな。ビッグオクトパスのフルスイングの足に当たって吹き飛ばされて死にかけたりな」
二人は、何か嫌な思い出があるのだろうなと思うが、真人からしたらビッグオクトパスも知らないし毒の墨とか聞いたこともないから実感が湧かない。でも、そんな化け物がいたら食べるのを躊躇してしまうなと思うのだった。そこで、地球のタコを取り出して2人に見せる。
「これが、そのタコですよ。毒も吐きませんし、足で攻撃もしませんよ。騙されたと思って食べて下さいよ」
「えっ?それがこいつなのか?見た目は、ビッグオクトパスだが、大きさが全然違うな。それに、店主が出す物にまずい物はないしな。まぁ騙されたと思って食ってみるか!ん?ん?・・・・うまい...独特の食感に甘みのある身に噛むたびに旨味が溢れ出てくるぞ。サリルも、騙されたと思って食ってみろ」
ルーベンは、引っかかるものがなくなったからか、ぬる燗とお代わりのおでんを美味しそうに飲み食いしている。
「呑気に飲みやがって...うぐぐ...くそ!食べてやるよ。ええい!・・・・う、うまい・・・ぬるぬるしねぇし柔らかいし、おでんのスープの味が染みてていい」
どうやらサリルも、思い切って正解だったようだ。異世界でもおでんの味が受け入れられてよかったと思う真人。
「タコうまいでしょ?」
「驚いた。それに、ぬる燗いいな。熱燗より香りが柔らかいし優しく感じるのが、おでんを殺してないしぬる燗で正解だったな。明日も熱燗からのぬる燗にするか」
どうやら、ルーベンは明日も通ってくれるようである。
「店主さん、ここにはいつまでいるんだ?俺達、この屋台以外で食えそうにないんだ」
「もうちょっとしたら王都に向かいますね。世界を旅しながら周ろうとしてまして」
「おい!ルーベン、王都に行くぞ!この飯なしじゃ生きていけない」
「俺も同じこと思ってたところだ。店主、王都に行く前日教えてくれよ。追って行くからよ」
サリルとルーベンは、顔を見合わせて「よし、決まりだな」と勝手についてくることを決めていたようである。
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