第2章 いざ街へ
第5話 チーズバーガー!貴族も騎士も魅了してしまう!
トンボと真人は、住人がまだ寝ている早朝に出発しようとしていた。トンボから変に気を遣わせないようにとの提案であった。
「マサト、そろそろ行くぞ。それにしても、アイテムボックスがあると楽だな。荷物がかさ張ることもねぇ」
「本当にな。前世でも欲しかったよ」
それから二人は、物音を立てないように村の入り口に向かう。すると、後ろから「トンボ、水くせぇな。俺達に最後の挨拶もなしかよ」とトンボと仲の良かった住人が言ってくる。
「お、お前らなんで?」
「仲間の門出を祝わう。当たり前だろうが!トンボ、夢を叶えてこい!でも寂しくなったらいつでも帰ってこいよ」
他の住人もニカッと笑って拳を突きだす。
「お前ら...」
それを見たトンボは、涙を流しながら拳を突きだして応える。
「行って来い!」
「あ、あぁ〜行ってくるぜ!いつかまた会いに来るからなぁぁ」
トンボは、別れを惜しみながらも前を向いて歩きだすのであった。
「いい仲間達だな。当分会えないし、もっと話さなくてよかったのか?」
村から出てきて、暫く歩いた辺りで真人がトンボに尋ねる。
「ガッハハハ。構わねぇよ。一生会えねぇわけじゃねぇんだ。それに、あれ以上いたら離れられなくなっちまう」
「そうか。なら世界を見に行くとしようか」
「おう!」
それから3日間、ギコニルの街を目指して街道を歩き続ける。途中でゴブリンやら狼の魔物が出てきたりしたが、トンボが見事に撃退してくれた。
「なぁ〜トンボ〜あとどれくらいでギコニルの街に着くんだろ?」
野宿をしたり、途中の村で泊めて貰いながら3日も経つが一向に着く気配がないので尋ねてみた真人。
「う〜ん?そうだな〜あと6日くらいじゃねぇかな?俺も小さい頃に爺ちゃんと行ったっきりだからなぁ。正確な距離まではわかんねぇんだわ」
6日と聞いて『マジか』と思う真人だったが、日本とは違い車もバイクも電車もないし、仕方ないかと思うのであった。
「あと6日頑張るかぁ。ってあれは何してるんだろう?」
ちょっと先の道で、鎧を着た人達と馬車が止まっていた。
「車輪が外れてやがる。直すやつが居なくて途方に暮れている感じだな。手伝ってやるか」
そう言って、トンボは近付いて声をかける。しかし、相手は警戒をして剣の柄を握りいつでも抜刀できる構えを見せる。
「おいおい、待ってくれ!俺達は、怪しい者じゃねぇ。車輪を直す手伝いをと思って声をかけたんだ」
「お前直せるのか?」
「あぁ、予備の部品と工具さえあればな。馬車の中に予備部品と備え付けの工具があるはずだ。見せてくれねぇか?」
「すまんが、それは出来ん!」
警戒は、しているようだが、剣の柄からは手を離してくれた。
「じゃあ、無理だな!軸がポッキリ逝っちまってやがるし、付け替えなきゃ直んねぇな」
「それはそうだが...「俺の事は構わん!その者を中に入れてやれ」えっ?あ!はい!畏まりました」
中から出てきたのは、煌びやかな服装ではないが、高級そうな衣服を身に纏った壮年の男であった。
「手伝いを申し出てくれたのにすまんな。騎士達は、心配性なのだ。早速だが、始めてはくれんか?」
その男は、ニカッと笑いながら告げる。
「任せてくれ!時間は多少かかるが完璧にしてやるからよ」
「おい!キーロン様に向かってその口の「マーク、俺は気にしないから周囲の警戒をしていてくれ」ハッ!畏まりました」
「すまんな。マークは、いつもあの調子なんだ。それと最近、賊が多くて警戒しておるんだ。さぁ〜やってくれ」
トンボは、一切気にしていないのか、いつもの感じで「任せときな」と言って修理を始める。それを見ていた真人は、偉いであろう人物にも臆することがないトンボに、度胸があるなと感心するのであった。
そして、一人取り残された真人は、屋台を召喚してトンボの為に食事を作るのであった。
トマトやピクルスなどの野菜を切っていく。次に、牛豚の合い挽き肉を塩コショウで味付けをして、ちょうどよくなるまで混ぜ合わせる。そして、形成した牛豚のミンチを焼き始める。ジュージュー音がして、次第にいい匂いが風に乗って周りへと伝わる。すると、騎士達やキーロンは、クンクンを匂いを嗅ぎ始めて匂いの出処を探る。
「凄くいい匂いがするのだが、何を作っているんだね?」
キーロンが、匂いに釣られて屋台までやってくる。
「これは、チーズバーガーというものを作っています。もう少しで出来上がるので、良かったら食べて見ますか?」
キーロンは、「おー!いいのか?」と言って目を輝かせる。後ろでは騎士が、「キーロン様、何が入っているかわかりません。おやめ下さい」と言っている。真人は、失礼な騎士だなと思うのだった。
「黙れ、お前達!俺は、この匂いに我慢出来ないのだ。俺は、何と言われようと食うぞ」
今にもヨダレを垂らしそうな勢いで身を乗り出して作る様子を見ているキーロン。
「お待たせ致しました。チーズバーガーです。そのまま齧り付いてお召し上がり下さい」
「ナイフもフォークも使わずに、このままか?だが、作った君が言うんだ。その通りにしよう」
大きな口を開けてチーズバーガーに齧り付く。すると、チーズバーガーの端から肉汁とソースとチーズがジュワッと溢れ出す。それ同じで、キーロンの口の中も溢れんばかりの肉汁ととろ~りチーズとトマトソースとマスタードのソースが支配する。あまりのおいしさに驚いたキーロンは、目を丸くしてから、うまそうな顔へと変わる。
「これは...なんという美味な食べ物なのだ。こんな溢れる肉汁の肉と濃厚で複雑なタレを味わったことがない!うむ!食べる手が止まらん!すまんが、もう1つ作ってはくれないか?」
ボリュームのあるチーズバーガーをペロリと平らげたキーロンは、もっと食べたいと懇願する。
「畏まりました。すぐ作りますね」
真人は、すぐに新しいチーズバーガーを作り始める。すると、我慢できなくなったのか?若い騎士が近寄ってくる。
「申し訳ございません。もう我慢できません。僕にも下さい。キーロン様、勝手を申して申し訳ございません。罰は後で受けますので」
若い騎士は、キーロンに頭を下げて謝るが、キーロンは「謝る必要はない!代金は私が払おう。思う存分食していいからな」と言う。若い騎士は、それを聞いて安堵と未知の料理に胸を踊らせる。
「お待たせ致しました。こちらが、キーロンさんの分で、こちらが騎士の方の分になります」
キーロンも若い騎士も、待ちに待ったチーズバーガーを受け取ると、すぐに齧り付いて満面の笑みを浮かべる。
「う、うま〜い!シャキシャキの野菜に、この溢れ出す肉汁と甘いお肉に、この黄色いトロッとした何かとタレが相まって...ん〜これ程、美味いものを食べたことがありません」
若い騎士は、バクバクと食べ進めていく。真人は、これだと足らないだろうと新しいパティを焼き始めるのであった。
「すまんが君、代金は払うので他の騎士達にも作ってやってはくれないか?」
「はい!いいですよ。では、準備しますね」
それを聞いた騎士達は、歓喜の声をあげるのであった。
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