第4話 2/2

「タイムリープの代償が重過ぎる……けど」


「けど、なんじゃ? 急にシリアスになりおって」


「例えば……さ、俺の寿命を8年渡したら、8年前にリープできるのか?」


「できるぞ。しかしオススメはせん」


「なんでだよ?」


「ジュンよ……今いくつじゃ?」


「14歳」


「それじゃとタイムリープ先が6歳じゃ。わざわざ戻りたいということは何か変えたい運命があるのじゃろ? しかし、その年齢じゃ無理じゃな」


「なんで6歳だと無理なんだよ」


「オヌシの精神を飛ばしてやることはできるが、受け入れ先の頭が追い付かん。頭が未発達なのじゃ」


「つまり……リープ先が幼すぎると処理能力が足りないということか」


「そうじゃな。最悪、今のオヌシの記憶と知識だけで頭がパンクするかもしれんの。これが28歳から20歳にリープするなら、同じ8年でも問題は無いのじゃが……」


「そっか。そんなことまで教えてくれるなんて、お前良いやつだな」



 カノガミから笑みが消える。



 真剣……とも違う。



 怒り……とも違うな。



 例えるなら「無」そのもの。



 一体どういう表情なんだコレは?



「しまったああぁぁ!! 8年分の寿命を逃したぁぁぁ!?」



 何も考えていないだけだった。


 良いやつというかバカなだけなのでは……?



「ところで、俺の寿命を得ることがお前にとって何の得があるんだよ?」


「いや実はウチなぁ。長いこと封印されていたせいでめちゃくちゃ弱ってるみたいなのじゃ。記憶も曖昧じゃし……」


「と、いうことは俺の寿命を渡すことで力が強くなるのか」


「そういうことじゃ。こうやって実体化できるのも1時間分の寿命あってこそじゃ。ま、生き物に干渉のものもジュンにだけじゃがな。 霊感が強い奴にはかもしれんがの」


 カノガミがウィンクしてくる。


 ……。


 イラっとした。


「実際は貰った寿命の大部分はリープに使う。ウチの力に貯めておくのは数%じゃ。手数料みたいなもんじゃの」


「手数料が恐ろしすぎる……ちなみに未来の俺にはリープできるのか?」


「できるがやりたくない」


「やりたくないってなんだよ」


「じゃって、未来のジュンが死んでたらどうするんじゃ!? リープ・即・デスじゃぞ!?」


 リープ・即・デスってなんだよ。毎回オーバーリアクションだなぁコイツ。


「昔は未来を見ることができたのにのぉ。めっちゃ疲れるが。でも、そしたら何の心配もなくリープさせてやったのに……」


「ふぅん。じゃあ例えばさ、今から1日前にリープする。それからまた1日後の今にリープして帰ってくることはできるのか?」


「それならできるぞ。ジュンが今生きとるのをウチも確認しとるから安心じゃ」


 なるほど。じゃあ今カノガミができることは、数分前から1年前くらいまでの期間をタイムリープで行き来できるということくらいか。


 それでもとてつもない力だけど。


「あとさ、カノガミはどれくらい回復したら俺から離れてくれるんだ?」



 つまり、俺がどれだけの寿命を差し出せばコイツが離れてくれるのか……ということを知りたい。


 まさか寿命の半分……とか過酷なことを中学2年生に要求してはこないよな?



「ジュンが寿命で死ぬまでじゃ」


「は?」


「言ったじゃろ? 封印が解かれた瞬間からウチとジュンは一心同体。離れられない運命なのじゃ……」


 あ。そうか。


 カノガミは「弱っている」と言った。


 さっきはふざけて言ってはいたが、コイツは俺から離れられない……いつか消えてしまうのかも。

 

 そう思うと少し可哀想だな。カミなんだから本来寿なんてないハズ。



 ん? 



 じゃあなんでコイツ自分から俺の寿命縮めてくるんだ?



「ちなみに聞くけど、俺が死んだらカノガミも消えるのか?」



「いや、ウチは消えないぞ♡」



「じゃあなんで俺から離れないんだよ!」



「ジュンの魂とウチがアロンア○ファみたいにくっついちゃったからじゃぞ♡」



「何が一心同体だよ!? 不公平だろぉぉ!?」



「ウチは! ジュンが死ぬまで! 寿命を吸うのをやめない!!」



 コイツやっぱり悪霊の類いだろ……。

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