第8話:踊り子の仕事

 「えーっと、あなたは?」


 「あたしはミーシャ。ミーシャの舘の話は神父殿から聞いてないかい?そこの主人だよ。」


 「あぁ、そうだったんですね。俺はシンタといいます。」


 「あぁ、よろしく。早速だけど時間あるかい?」


 「はい、大丈夫ですよ。」


 「OKだ。じゃぁ踊り子について指導してあげるから、ついておいで」


 神父さんが言っていた『ミーシャの舘』に訪れようとしていたら、まさか向こうからやってくるとは。そのままミーシャさんの後をついていく。道中暇だったので、踊り子について聞いてみた。


 踊り子というのは舞踊短剣と呼ばれる特殊な短剣を用いて攻撃することで、バフ・デバフを行う支援職だという。ただし、敵に攻撃する際は決まった型をなぞって当てないとスキルが発動しないため、かなり扱いが難しい職業だそうだ。スキルによっては当てる部位によって効果が異なる物もあるとか。


 そんな扱いの難しい踊り子を選んだ人向けの指導をしているのが『ミーシャの舘』とのこと。当人が望むのなら仕事の斡旋もしてくれるとか。



 「着いたぞ、ここがミーシャの舘だ。中に入るぞ。」


 そんなこんなで話しているうちにいつの間にか目的にたどり着いていた。外見は薄ピンク色でキュートな雰囲気のある二階建ての建物。


 ・娼館みたいだな

 ・娼館?

 ・シンタきゅんを指名できるってこと!?

 ・シンちゃんとあんなことやこんなことを・・・ぐふふ

 ・[AKI]1階はキャバクラだからあながち間違ってないかも

 ・[Natsu]そうね。ミーシャさんの継ぐお酒は美味しいのよ。

 ・マジかよ俺通うわ。

 ・俺も俺も


 「うぇえっ!?」


 「ん?どうした?何を慌てている。ついてこい。」


 「はっ、はい!」


 変なコメントを見てちょっと動揺した。娼館とかキャバクラて・・・。ってそんなこと考えてないで、ミーシャさんについていかないと!


 

 「ミンレイ。いるか?」


 「はいにゃ~、いま行くにゃ~」


 「か・・・可愛い!」

 

 建物に入り、奥から出てきたのは二本足で立っているちょっと大きめの猫。いわゆるケットシーという種族で、ピンクを主体としたメイド服を着ている。なんだこの可愛い生き物可愛いぞ。


 「にゃにゃ~、私は~、ミーシャの舘のアイドルの~、ミンレイにゃ~!新人踊り子さんの名前を教えてなのにゃ~」


 「はっ、はい、シンタといいます。よろしくお願いします。」


 「よろなのにゃ~、この子は私が担当ということかにゃ~?」


 「あぁ、そうだ。初期職で踊り子を選んだ子だから、スキルの説明とかその辺も頼む。」


 「了解にゃ~、それじゃぁシンタついてくるのにゃ~」


 「はっ、はい!」


 ・可愛い

 ・なんだこの猫可愛すぎるぞ。

 ・キュートが過ぎる

 ・ミンレイちゃんをガン見しすぎて建物の内装とか殆ど映らないの草

 ・可愛いからしゃぁない

 ・ミンレイちゃんが出てきてからミーシャさんの方一回も見てなかったしなw


 コメントで何か言ってるが、そんなことよりもこの可愛い生き物を目に焼き付けるほうが大事。何よりも大事なことだ。


 「にゃにゃ~、私が魅力的なのはわかるけどそろそろ戻ってくるのにゃ~」


 「はっ!すみません先輩!見惚れてました!」


 ミンレイちゃんをガン見しているうちにいつの間にか庭についていた。ここで練習を行うらしい。


 「まずはスキルについての説明からにゃ~、どこまで知ってるのにゃ~?」


 「えっと、何も知らないです。」


 「なるほどにゃ~、じゃぁ簡単に説明するにゃ~、スキルっていうのは世界に認められた技能のことにゃ~、習得すれば誰でも同じ効果を持つスキルを使用できるようになるにゃ~。習得したスキルを忘れることもないにゃ~。習得にはたくさんの練習が必要にゃ~。ちなみにスキルとして存在しないものでもその技能が世界に認められればスキルに昇華することもあるのにゃ~。まぁ、それは気にしなくていいのにゃ~。ここまでで何かあるかにゃ~」


 「ええっと、スキルっていうのは練習すれば誰でも習得できるんですか?職業関係なく」


 「職業が関係ないスキルもあるにはあるにゃ~、けど大抵は職業ごとに取得できるスキルが異なるにゃ~、偶に同じスキルを習得できる職業もあるにゃ~。例えば魔剣士と魔法士ならどっちも属性付与を使えるにゃ~、使い方は異なるけど効果はおなじにゃ~」


 「なるほど。そういう感じなんですね。」

 

 「そういうことにゃ~。にゃ~、スキルの発動方法について説明するの忘れてたにゃ~。多くのスキルはスキル名を叫んだりスキルを使うと念じることで使用可能にゃ~。ただ中には特定の動きと紐づいたスキルや、発動条件がある物があるにゃ~。それが顕著なのが踊り子という職業にゃ~、というかそういうスキルしかないにゃ~。スキルを習得しても使いこなすのは大変にゃ~。」


 「そ、そうなんですね。」


 めっちゃ大変そう。


 「でも不安になることはないにゃ。アイドルの私が手取り足取り教えてあげるにゃ。まずは踊り子がどんな感じかを見てもらうにゃ。」


 そういってミンレイは庭に置かれている木人形に向けて攻撃し始めた。まず手始めに首に向けた上段蹴り。からの首にかけた脚を軸にして回転しつつ肩に乗っかる。その際、肩に乗るまでの間に身体を切りつけていく。

 そして回転の勢いで肩に乗ったかと思えば、そのまま流れるように宙返り。その際にも短剣で切りつけることを忘れない忘れない。そして着地と共に今度は足元を

スライディングしながら切りつけ、最後にバク転しつつナイフを頭に投げて終了した。


 もはや攻撃というよりも舞というのにふさわしい動き。相手が動いてなくてもかなり派手に見えたのだから、もし相手が動く魔物であれば、まるで熟年夫婦の如く息のあった舞になったことだろう。踊り子の名にふさわしい技だったと思う。


 ・88888

 ・8888888

 ・素晴らしい

 ・最高だった

 ・これだけでお金取れるレベル

 ・ここに魔法とか混ぜたらもっと凄いことになりそう

 ・思わぬエンタメを見ることが出来て最高だった


 「とまぁこんな感じにゃ~。シンタにはこれを出来るようになってもらうにゃ~」


 「で・・・出来るかーー!!!!」

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