彼女の答え
「私が見ている世界も君が見ている世界も同じ。そこに在るだけ。君が見ようとしてないだけだよ。世界はいつも変わらない。君は君の作った世界で生きているのにそれが不満なの?」
長い間の後にようやく彼女の口が開かれた。
すでに時間は閉園ギリギリ。
彼女はそれだけを言うとそのまま踵を返し出口まで歩いて行ってしまった。
彼女の言葉の意味がわからず立ち尽くす僕を置いて。
その日、僕は動物園の警備の人が閉園を告げに来るまでずっとキリンの目の前で彼女の言葉の意味を考えていた。
だけどいくら考えても僕には彼女の言葉の真意がわからなかった。
彼女は僕が偏見を持って世界を見ていると言いたいのであろうことはなんとなくわかる。
だからこそ僕はその偏見をなくし、彼女を模倣することで正しい世界を見ようとしているのだ。
彼女が見ている世界を僕も見たい。
それは間違ったことなのだろうか?
きれいなものを見て、きれいな世界で生きていたい。
そう思う事は僕じゃなくても誰でも思う事のはずだ。
選べるのであれば汚い世界で生きたい人なんでいるはずがない。
だからこそ余計にわからない。
彼女は何が言いたいのだろうか?
僕と彼女が見ている世界は違いすぎる。
彼女は僕が知っている誰よりも遠い。
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