3
「あぁ、なるほど、異世界転生ならぬ異世界転性?」
うふふと笑って言ってみるものの、頭は全く動いていません。
あるべきものがなくなり、無いものが生まれてしまった状況。
とりあえず、今一度確認をせねばと、胸元へと視線をおとします。
見間違いであってくれればと願いましたが、そこにあったのは、相変わらずの深い渓谷であり、叩くと波打ちたゆんと揺れあそばされる光景。
「うふふ、揺れてる……。夢じゃないのはわかる、感覚的に。でも現実だとして受け入れるのは無理がある」
目を閉じて、大きく何度かの深呼吸をし、とりあえず、自らの全体像を把握せねばと辺りを見渡し、部屋の中にある大きめの姿見を発見。
立ち上がり姿見の場所まで歩くのですが、
「か、体が重い」
自分の体であるのに自分の体でないような。
……っていうか自分の体では確実にないんですけれど、この体は自分の意思でうごいているわけで。
「クッ、ややこしい」
胸が重けりゃ、身体も重い。
そう思いながら鏡の前に立った僕は、しばしの沈黙。
その後、大きく叫んだのです。
「(思っていた以上の)ヴァ、ヴァインヴァインじゃないかぁぁーーー!!」
と。
叫び声が響いたのか、途端にバタバタと騒がしくなり、少々乱暴にドアをノックする音が響きます。
「な、何?!」
突然のことに驚いて言えば、非常に焦ったような返事が聞こえてきました。
「お嬢様、大丈夫ですか?!」
「お、お嬢様!?」
「入らせていただきます!」
そう言ってドアからなだれ込んできたのは、喫茶店か! と言わんばかりのメイドさんと、ホテルか! と言わんばかりのスーツの男共。
なだれ込んだ人々は辺りを見渡した後、姿見の前に立っている自分を見つけます。
「お、お嬢様?」
うん、見事なポカン顔。
そりゃそうか。鏡の前で両胸に両手を添えて、その大きさと形その他を確かめていた状態なわけで。
繕う間もなくなだれ込まれれば、当然そのままの姿で出迎えるわけで。
一般ピープル(元男)がお嬢様と言われて、すぐさま対応できるわけでもなく、そのまま振り返ってコクリと頷けば、何かを察したのか、一人のメイドさんを除いて皆コクリと頷きながらその場から出ていきました。
残ったメイドさんは、ぱっと見アラフィフに見える感じで、私に近づいてきてじっと見つめてきます。
「お嬢様、一体何をされておいでで?」
「……ちょっとお確かめ遊ばしました」
「あぁ、なるほど?」
表情全てで「意味がわからん」といっているのがわかるほどであったが、そこはプロフェッショナルだからだろうか、一呼吸置いた後、ニッコリと微笑んできました。
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