第4話深き感情

息絶えた姿は なんとも美しく


これが饒舌たる


彼女の器かと思うとゾッとした


重く閉じられた瞼の奥


凍り付いた瞳は私を見ている


そう思えてならない


眩暈を覚え しばらく瞼を閉じていた


数分後 軽く瞼を開けた


煙草の煙が静かに揺らめいていて


誘われるように瞼を再び閉じた


煙草の火を消さなければと思い


数分間の眠りと別れ 瞼を開けた


生きた煙草など どこにもなかった


私はしばらく呆然とし


確かに存在した 揺れる煙を思った


まるで騙されたかの様で 誰かの悪戯の様に


私は彼女の瞳を思った


動く事もない その瞳を思った


饒舌たる彼女は最後まで饒舌であった


彼女の器はより美しく思えた

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