第13話

「さて、それではリンスに入らせていただきます。リンスとお湯を桶に溶いて髪につけていきます。わっ!お姉ちゃんの髪洗っただけでスベスベですー。リンスで更にパワーアップです!」

「リンスはよく判らないわね?指通りがよくなったような気はするけど?」

「乾いてからのお楽しみです!最後に濯いで終わりますのです」

「えっ?流しちゃうの?勿体ない」



 上がるに上がれず予定より長風呂してしまったが、ノンビリ気持ちよく入れた。

 二人が湯船に浸かったのを見計らい、後ろを向いてもらって服を着た。ヘレナはいいけど、スティアが鼻血をふくなどの可能性を回避するためである。起こる可能性のあることは、五日必ず起こる。マーフィーのしゅを侮ることは、けしてあってはならぬのじゃ。


 お風呂から出た後、彼女には着替えとして山用スリムフィットTシャツ、トレンカ、ホットパンツ、インナー一式、ジャケット、アウトドアシューズ等々のセットを進呈。ヘレナも同じものを出してお揃いにして二人ではしゃいでいる。なぜか収納の中に女性用の服その他関係品目が大量に増えていた。高天原から直接送り込むことが可能なの?

 なぜか僕もお揃いを着せられ、これから、たまにみんなで揃えようという決まりができた。


 温風を噴き出す魔法ってどーやるんだろ?強く思おうにも想像もつかないので、こんな時には、

 =〇天のドライヤーと天の大容量ポータブル電源ー!

 スティアとヘレナの髪を乾かすと艶々のサラサラになった。

 女性陣二人で嬉しい悲鳴を上げている。

 残った電気で自分の髪にも軽く当てて終了。

 さて寝るぞ。


 夜はソフィアの見張りとスティアの持っていた魔獣除けの香のおかげでゆっくり寝れた。

 朝方に風が出て香の煙が流されたから、風上から大型の魔獣が寄ってきた。ソフィアの警告のおかげで50メートルの距離があったので、前に次元収納の中で見つけた同田貫調四尺超えの重い剛刀を片手に現場へ走る。今回は直の戦闘訓練として飛び道具は無し。木と木の間からターゲットを確認し刀身を抜いて全開で加速、すれ違いざまに首を斬りにいった。重量の乗った刃が肉に斬り込み骨ごと断ち切る。素人が振ってこれだけ斬れるって、何で出来てるんだこの刃? 素振りしたとき間違って岩に先端ぶつけても岩砕けて刃こぼれしなかったし。


 ◇


「頭からしっぽの先まで約7メートル、何とかラプトル?額に眼ついてるけど この星の原住生物って恐竜?エルフ何処から生まれたの?実はスティアも髪の中辺りに目があるとか?」

『エルフも恒星間移民の末裔です。この恒星系は超高次元駆動タイプエンジンによる空間跳躍に失敗した際に引き寄せられやすい特性を持った時空的位置に存在している為、一部を除きエルフ以外の種族も同じ理由による入植です』

「後から来た種族が他を制圧しようとしなかった理由は?」

『来る船、来る船、速攻で船を捨てて脱出艇のみで降下しないとならない状態まで壊れている為、そのような行為はできませんでした。おまけに先に降りた種族の方が魔法に長けている上に必然的に多人数になるので、脱出艇に積んでいる程度の武器や機器では太刀打ち不可能だったようです。』

「このさいだから聞いちゃうけど、他にはどんな種族が?」

『代表的な種族だと古い順から、先住のドラゴニア、エルフ、デモン、ドワーフ、ヒューマン、ビーストです。』

「うん、定番、、、、、事故船みんな 先住者のいる賑やかなこの星に来ちゃうのって、遭難して帰れなくなった人達がせめて寂しくないようにってゆー感じの神々の慈悲ってヤツ?」

『ソンナモノハ アリマセンヨ?』

 さて恐竜しまって帰ろう。


「ただいまー」

「おかえりなさいです!あなた! ご飯にする?お風呂にする?それとも、た、わ、し?」

「ただいまヘレナ 朝っぱらからそーゆーネタを振っちゃいけません!」

 あたまをワシャワシャして窘めておく。


「おかえりなさい。今の会話はなんだったの?」

「僕らの故郷の伝統芸能的お芝居で交わされる台詞です」


 ◇


 荷物をしまって風呂と湯を処理。さて出発だ。

 急ぐ旅でもないので、あっち見て、こっち見に行って、薬草積んで道草。

 途中、20メートル幅くらいの川に蔓橋が掛かっている場所があり、渡り終えた所から下の河原に降りられたので そこで釣りして魚を補充しつつ一休み、丁度いいのでこのままお昼に突入の予定。

 天のリール竿を出してルアーを引くと ここでは大きめ、二尺くらいのヤマメタイプな三つ目魚が入れ食い。夕飯と燻製作りが楽しみだ。


「この橋、古そうなのに生きてる植物で作ってあるって、すごいね。ノイスイェーナのエルフ族が維持してるの?」

「そうよ。村の巫女が精霊様にお願いして橋の形に保ってるの。すごいでしょ!」

 スティアが誇らしげに自慢してくる。両岸の蔦と蔦が川をまたいで連絡して絡まりあい補強しあっている。人が歩く所はちゃんと歩道として平らになっていて、ネコ車くらいなら普通に押して通れる幅がある。


「たしかにすごい。それじゃ あの橋の周り光って飛んでる翅が付いた光球みたいなのが精霊様?」

「はいっ?嘘⁉ 見えるの? 精霊様って村の巫女が丸一日儀式を行ってトランス状態になってようやく見えるのが普通なのよ?それに今まで見えるって言ってなかったじゃない⁉」

「他では あの橋程は見えなかったし、この辺はあーゆー生物も多いのかなー?って? そー言えば泉にもいたけど色々あって忙しかったし。 ここ来て妖精ってわかったら、さらに大量に見えるようになった。・・・いわゆる慣れ?」


◇ 


「妖精さん いっぱいいますよ?こっちに気が付いてたくさん飛んできました!お姉ちゃんの髪の毛にいっぱいくっついてます!」

「ええ?本当に?どこ?見えない!本当に? ああ精霊様!」

 スティアが感激して祈り始めた。



 夜の昆虫採集でシーツに光を当てて虫を集めた状態って言ったら罰が当たるだろうか?

 そーいえば、シャンプーとリンスに植物由来成分100%って書いてあったな。




―――――――――――――

読んで頂きありがとうございます。

気に入って頂けたら、作品フォローとか、♡応援とか、★評価、を宜しくお願い致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る