第9話 証拠と中継

 す、ストックが切れたので2-3日投稿できないかもです……ストックの量=心の余裕は真実でした。

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 朝、か。どうやら随分とぐっすり寝てしまっていたようだ。

 まあこれまでダンジョンの中で寝ていたし会社のベッドが快適に感じるし動きたくないな。


 しかし、今日もタスクが溜まっているはずだ。社長だからといってダラダラしていたら部下にもそれが伝わってしまうからな。特にウチのような小さな会社は気を付けなければいけない。


「う、ん……」


 いざ起きようとするも何やら動きづらい。しょぼしょぼする目をこすりながらふとシーツを捲り上げると


「桜…………木春まで……」


 私の胸に顔をうずめるように桜が抱き着き、背後からは木春が私に抱き着いている。挟まれた私はさしずめサンドイッチの具状態である。


 スヤスヤと気持ちよさそうに寝ているみたいだし、起こしてしまうのは可哀そうだ。


 改めて妹達を至近距離から眺めているけど、相変わらずめちゃくちゃ顔が整っているなあ。我が妹ながら、たまにドキっとしていることがあるのは内緒だ。


 さりげなく「休日だし、買い物にでも行かない?」と提案して、「そっ、その日は外せない用事があるから……」と断られないかチェックしていたりするのだが、全くそれらしい反応もなければ私の誘いに「お姉様とデートっっ!!」と鼻息が荒くなる始末だ。


 べ、別にそれが嫌でもなんでもないんだけどこう……女としての本能というか家のためにもきちんとした男性と付き合って結婚をして欲しい。でも、もしそうなっても最低1人はHEDから護衛を連れて行ってもらおう。うん、その方が安心安全だ。


「んぅ……」


 しっかし、同じシャンプーに同じトリートメントを使っているというのにも関わらずどうしてこう髪の手触りとか匂いとかが違うように感じるのだろう?桜も木春もいつみてもサラサラつやつやな髪でお姉ちゃん羨ましくなっちゃうな。


「んー。おねぇ……さま?」


 ふんふん。うーむ、髪の匂いもこう……なっっっんていうかどこか甘い匂いがするというか、思わず抱きしめたくなるんだよね。


「ひゃわっ!?おおおおおおおお姉様!?!?一体何を!?」

「あ、桜起きたんだ。おはよう~」

「お、おはようございますお姉様。木春姉も起こしちゃってごめんなさい……」

「いや……実は少し前から起きていたと言いますか……お姉ちゃんが桜の匂いを嗅ぎ始めたところから起きてたんだよねー」


 たははっと木春が笑うが私はやべっという気持ちとともに妹様の顔をチラリと伺う。


「――がれた……ぐすっ」

「桜!?」

「お風呂上がりならまだしも寝起きでお姉様に匂い嗅がれたあああ!うわああああんっっ!」


 ブツブツと何事かつぶやいていたかと思うと、突如シーツを跳ね上げて部屋から逃げ出すように出て行ってしまった。き、気持ち悪いと思われたかな……。


 もしかして、桜に嫌われた……???


 落雷にも似た衝撃が私の脳内を貫くような錯覚を覚えた。前世の分の清算を終え、私はすっかり弱くなってしまったみたいだ。私より身体が大きくて、力も強い男にさえ立ち向かっていける、ダンジョンの恐ろしい魔物でさえ私は恐怖しなかったのに、妹に嫌われたかもと思うだけで身体の震えが止まらない。


 と、未だにベッドでまどろんでいた木春が背後からそっと抱き締めてくれたようで、ふわりと甘い香りと共に怯えていた私の心が溶けていくような感覚を覚えた。

 勇気を出して木春に問いかけてみることにする。


「き……嫌われたかな……?」

「んー、それは無いと思うけどなんで?」

「いや、桜の嫌がる事しちゃったかなって……気持ち悪いお姉ちゃんだったのかな」

「うーん……それなら、いい考えがあるよお姉ちゃん――」

「んなっ!?ほ、本当にそれで分かるものなの!?」

「大丈夫だよお姉、私を信じて。伊達に統括部隊の隊長やってないし、それに私だってお姉ちゃんのことす、すすすすすすっ好きなんだしっ!!」


 木春も慌ただしく部屋を出て行ってしまった。木春の言ったことが間違っていなければ桜は私を嫌っていないという。


 木春の作戦が予想外すぎて本当に桜に嫌われてないかを確かめるために、背に腹は代えられない。


「私もそろそろ起きないと……」


 少しダルい身体を起こしつつ、身だしなみを整えていく。私が寝泊まりしている部屋は、HEDの社長室横にある宿泊部屋だ。


 ウチはブラック企業ではないのだが、業務が故に致し方なく備え付けることとなった。まあ今となっては杞憂であったのだが、避難先としても機能するように出来ている。オマケに地下に建設された施設だから安全性も問題ない。


 しっかし、妹達は着替えもせずに部屋を飛び出して行ったのだが大丈夫だっただろうか。特に桜は結構際どい格好していたはずだから男性隊員の諸君には目の毒だろう。


「あとで防犯カメラのデータを消しとかないと……妹の素肌は私が守らねば……」



「このあたりの動画はカット、このデータは私のUSBに移して……はっ!いけません!これではまるで盗撮!紛うことなき変態ではありませんか!!!」


 後日、何に使うのか分からないが大量の防犯カメラデータと格闘する社長の姿がしばしば目撃されるようになったのだとか。


 そんな平和な時間が過ぎていく中――


 ◇  ◇  ◇

「はぁー、今後の世論や支持率の事を考えると憂鬱でしかないのだが、得てしまった以上この情報は国民のために開示されるべき、か。あの首相、いけ好かないと思っていたがこういう時の思い切りの良さというか判断は、さすが国民の代表ってところかねぇ」

「東町室長。会見の準備が整いましたので定刻通りに入場をお願いしますね」

「馬場君……分かってるって。今更会見を無しってことにもできないし、国民の安全を考えると絶対開示しないといけない情報だよ」


 激しく焚かれるカメラのフラッシュ。スーツを着込んだ馬場という男と共に、東町統合幕僚長……いや、洞窟型危険地域対策室室長東町常博が姿を現した。


「それでは統合幕僚長兼、洞窟型危険地域対策室、通称【ダンジョン対策室】の会見を行います。マスコミ各社に置かれましては事前の―――」


 国民は知りたがっている。報道各社は国民の言葉(笑)を盾に、質疑の時間を今か今かと待っている。


 好奇と悪意は、再び梅華の足元へはい寄ろうとしているのだった。

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