人生2周目、ダンジョン生えるとか聞いてない〜現代科学の力で分からせて来ようと思う〜
さこここ
1章
プロローグ
完全に見切り発車です。
カクヨムコン8に応募してたりします。
読者選考突破のため、よければコメントや評価などで応援いただけると嬉しいです!
―――――――――――――――――――
訓練場ダンジョン20層。
総合警備会社の顔を持つHED株式会社の地下訓練場に突如出現した非公開ダンジョンの最奥部には、数時間前に突入した社長以下15名が疲れた表情で座り込んでいた。
「あれ……もう魔物も打ち止めかしら?」
「社長、最奥にダンジョンコアのような存在を確認しました」
「でかしたわ!!是非とも触ってみましょう!」
「社長、不用意に謎の物体に触らないでください!」
「作戦中は隊長と呼んで頂戴、それにもう触っちゃった!」
次の瞬間まばゆいほどの光が地下20階を埋め尽くす――
「うわっ!」
「目が!目があああ!」
「暗視ゴーグルぐわあああ!」
などと阿鼻叫喚な隊員たちの脳内にアナウンスが聞こえた瞬間あたりはピタリと静寂に包まれた。
【ダンジョンが初めて攻略されました。攻略者には報奨が与えられます】
「へぇ……面白そうなご褒美があるじゃないの」
「しゃt……隊長、勘弁してください。以前の私の職場ではあなたのような上官は早死にしました」
「まあ、何とかなったんだし結果オーライってことで!」
「「許せるかぁ!!」」
「えぇぇ…………」
社長で隊長な少女を正座させガミガミと説教をしてくる男たちに耳を傾けながら、何でこうなったんだっけ……などと考えていた。
◇ ◇ ◇
HED株式会社、作戦統括本部にて。
「社長、現時点を持って予定の作戦目標を完了しました」
「いえ……屋敷への侵入を試みた者を始めとした工作員の確保及びそれを手引きした者は実働部隊が捕えております」
「えぇぇ……弱すぎないかしら……」
作戦開始からオペレーター達と共に状況をモニターしていた少女がいた。腰まで届く黒髪が美しい高校生くらいの美少女、
「ねぇ、相手が弱すぎるんだけど実は本命部隊がいるってことはないのよね?」
「お姉ちゃん……前々から、何度も何度も報告してたけどあの程度の工作員は相手にもならないって……」
「ご、ごめんなさい。私が敵の脅威度とあなた達の実力を把握できていなかったようですね…………おかしいわ、相手は国の特殊部隊なのに……」
「何か言いった?」
「ヒッ!何も言っておりません!!」
私のボヤキが聞こえたのか統括部隊隊長でもある
私は読み違えたのだろうか。つい前世の記憶の印象が強くて、少々過剰に対策しすぎた……?でも、私たちの作戦が失敗すればおじい様や両親が潰される。そうなれば花菱本家は混乱し、間接的に雇っている20万人以上に影響が及ぶことを意味している。まあ反省は彼らが帰って来てから行うことにしましょう。
シュンとしてしまった雰囲気が伝わったのか、オペレーターの子がため息を吐きながら肩をポンポンしながら慰めてくれる。
「いいのですよ社長、ですが隊員が帰ってきたらねぎらってくださいね?」
「もちろんです。柳田隊長に予算はたっぷりと渡しておきました!」
「ちょっ!おねぇ、んんっ!社長……幾らですか!あの酒飲み馬鹿共に幾ら渡したのですか!?」
間接部門で働いてくれている三女の
「うわっ!?桜!?ちょ、やめっ……うぷっ」
「お姉ちゃん……ごめん、お金の事になるとつい……」
東京都奥多摩の山中にひっそりとオフィスを構えるEDC株式会社。
日本を支える資産家の、三つ子姉妹の長女である花菱梅華が親の力で設立した新進気鋭のスタートアップ企業である……と周囲は思っているだろうが実態は大きく異なっている。
数日後、作戦から無事に帰投した実働部隊を含めた幹部たちが会議室に集合していた。黒い髪を短く刈り込んだ体格の良い男が報告を行っている。他にも隊員はいるのだが、彼らには作戦完了を祝うための宴会の準備をするように言いつけてあるためここにはいない。
「社長、西条を始めとした隣国工作員による接触リストです」
「柳田さんありがとう。しかし情報が勝敗を決める現代戦において稀に見るお粗末さですね……本当に彼らは隣国の工作員なのですか?」
「そのはずです……お望みでしたら追加で情報収集を行いますが?」
つい先日高校生になったばかりの梅華は部下から齎された情報を確認し、眉をひそめた。家族を狙って仕掛けられた策略の杜撰さに呆れるとともに怒りを覚えていたのだ。しかし――
「なんで前世の私やお爺様は、この動きに気付けなかったのでしょうか……?」
「は……代表、何かおっしゃいましたか?」
いけない、うっかり重要な秘密が漏れてしまっていたようだ。
「いいえ、なんでもありません……ただ、あまりにも相手方が弱すぎたものですから……」
「それは社長……」
部下たちは(((過剰な戦力だってまだ気付いてないのかなぁ……)))などと思っているのだが、そんな彼らの気持ちは梅華に伝わることはなかった。
ついでに言えば、花菱梅華の住む屋敷に侵入を試みて捕らえられた工作員は口を揃えて、「平和ボケした日本にサイバー戦で負けるはずがない!」とか「歴戦の特殊部隊と戦っているようだった」とか「ひぃっ!命だけは!命だけは助けてくれぇぇ!!」などと叫びだす者もいたのだが、そんな彼らの気持ちも残念ながら梅華に伝わることはなかった。
「報告ありがとうございました。今後の動向を見守る必要はありますがひとまずは―――」
解散で、と言おうとした梅華の言葉は突如鳴り響いたスマートデバイスの警報音によって遮られた。
「なんだ!地震か!?」
「大きいぞ!各自安全確保!!」
1分もせずに梅華たちを襲った揺れは収まった。
「初期微動にしては異常な揺れと継続時間です。相部さんはすみませんが情報収集をお願いします」
「了解です!お待ちください!」
情報部隊の相部は今回の作戦において工作員相手に情報戦を完勝してみせた優秀な社員である。彼女に任せておけば何らかの手がかりは掴んでくれるだろう。
「社長、こちらを……」
「これは……ダンジョン?」
数分後、困惑顔の相部が見せてくれたパソコンに映っていたのは、洞窟のような場所の写真と、その内部を闊歩している異形――まるで小説から出てきたような全身緑も肌で覆われた小鬼のような生物の画像であった。
「これは……ゴブリン?それになんだかスライムっぽいのもいませんか?」
「詳細は不明ですが、世界各地で似たような洞窟が確認されているようです」
ドンドンドンと会議室の扉が激しく叩かれる。
「開いています!」
「失礼します!社長、地下施設に異常が発生したので報告に参りました!」
恐らく宴会を始める寸前だったのだろう。防弾防刃ベストも脱ぎかけで手には酒瓶を持った部下が息を切らせて駆けつけてきた。
「今、異常が発生したと言いましたが地下に洞窟でも生えましたか……?」
「さ、さすがは社長です!地下の訓練施設に謎の空間が出現しました」
会議室は静寂に包まれる。
「社長、いかがしましょう」
皆の心を代表して柳田がこちらの返事を待っている。梅華は目を瞑り、しばし考える。
まず魔物っぽい存在が徘徊しているだろう洞窟を放置するのはありえない。もし小説のような超常の存在が闊歩するダンジョンであればそれは危険な存在である。調査も兼ねてウチの精鋭を送り込むべきだろう。幸か不幸か洞窟はウチの私有地内に生えてきてしまったのだ。私は皆を見据えて笑顔でこう言い放った。
「私、先日の作戦があっけなく終わり過ぎてむしゃくしゃしてたのよ。あなたたちも宴会を邪魔された腹いせで殴り込み、したいでしょう?」
唖然とする幹部一同。私の言ったことが聞こえなかったのだろうか。彼らを横目にいそいそと準備を始める。
「早くしないと、置いていくわよ?」
いつの間に準備したのか、防弾防刃ベストを始めとした各種装備を身にまとった梅華がニヤっとした笑みを浮かべたことで会議室は一気に騒がしくなった。
2040年も春を迎えていた某日、突如として世界中にダンジョンと呼ばれる存在が発生。後に世界の情勢を一変させることになる。
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