第二章 ブロッサムの力

第13話 屋上で

「ブロッサム——か」


 誰もいない学校の屋上で、そんな言葉を口にしつつ、雲一つない空を見上げていた。

 本当に、<ベスティア>がこの世界にいるのだろうか?という疑問。

 自分に問いかけてみるも、もちろん答えは「分からない」の一択だった。

「はぁ」

 小さくため息をつき視線を自分の足元にやる。

 屋上の柵に寄りかかり何やら考え事をする少女。彼女が——ブロッサム、リリー・グレイだ。

 妖精の敵である、この世のものとは思えない黒い怪物<ベスティア>を倒す存在、ブロッサム。

 そのうちの一人が、彼女である。

「私って、そんなに適性が高いのかな」

 ふと、自分の腕を見てそう言う。

 妖精は、「魔力に対して適性が高い」と言っていた。つまり、適性が高いとブロッサムになる可能性があるということ。

 この世の終わりの可能性があるから、何とかしてブロッサムになれる人材を探していたそうだ。

「これがあれば、<ベスティア>を倒せるって、あの子たちが言ってたよね」

 そして、制服のポケットから取り出したのは——カラフルな色をした石だった。

 これがいわゆる、魔力の役割をしてくれるらしい。

 とにかく、リリーがするべきことはただ一つ。この世界にいる黒い怪物<ベスティア>を排除することである。

「はぁ」

 そしてまた一つ、小さくため息をつく。


「——おーい、リリー!こんなところで何してんだー!?」


「……あ、蓮人くん」

 その時、ガチャリと屋上の扉が勢いよく開いたと思うと、そこには肩で息をする日暮蓮人の姿があった。

「どうしたの、そんなに息切らして」

 ぜぇぜぇという蓮人に、リリーは少し笑いながら声をかける。

「お前……急にどっか行っちゃうから心配したぞ、マジで」

「あ、ああ、ごめんね」

「ま、まぁ良いけど。で、こんなところで何してたの?」

「うーん、日光浴、かな」

 ニコッと笑顔でそう言うリリー。

 蓮人は心拍を落ち着かせるために、大きく深呼吸を数回してから言う。

「日光浴ってお前……っ、とにかく、あと少しで授業始まるから用意しろよ」

「あ、うん、ありがと。えっと、次は移動だったよね?」

「ああ」

「なら早く行こうよ。っていうか、移動とか辛いんですけどぉー」

 顔を膨れさせて、行きたくないアピールを蓮人にする。

 だが蓮人はそんなことに構っている暇は無かった。

「……だだこねてないで行くぞ」

「むぅ、はーい」

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