第7話 人間界と魔力の関係

「私たち妖精は、魔力と言われるモノで構成されています。恐らくですが……この世界、つまり人間界では、魔力を根絶する力があるのかと思います」

「魔力を根絶……例えば?」

「さっきも言ったように、体が妖精界に比べて重く感じること。他には……これです」

 朝食終了後、蓮人は素早く後片付けを行い、再びリビングにてテーブルを挟んでフェアリーから話を聞いていた。

 フェアリーはパジャマのポケットから、小さい石のようなものを取り出しテーブルに広げる。

「……これは?」

 もちろん、蓮人にはそれはただの石のようにしか見えない。

「これは『花の結晶』というものです。魔力を生成してため込む性質があります。本当は、赤や青などといった色を持ちますが……魔力を根絶する人間界では、このように色がない。つまり、真っ黒なんです」

「だから人間界は魔力を根絶する力があると言えるのか……」 

「そう言うことです」

 正直言って、その魔力というのは一体なんなのか。そして、その魔力はどんな力を持っているのか。蓮人にはまだ分かるわけがなかった。

 目を上げフェアリーの顔をちらっと見ると、なぜか顔色が悪いように見えた。

「えっと……大丈夫?」

「えっ、あ、はい。どうしてですか?」

「いや、なんか顔色悪いような気がして」

「……多分、魔力を根絶しているからだと思います。体調は全然大丈夫なので気にしないでくださいっ」

 そう言ってフェアリーは、満面の笑みを浮かべた。

「な、ならいいけど」

「はいっ」

 もう一度笑みを浮かべると、何を思い出したのか、そそくさとリビングを出て行った。

「うーん……あ、学校に行く支度しなきゃ」

 蓮人もソファから立ち上がり、自分の部屋へと戻っていった。


 

「おはよー」

 蓮人が学校についたのは、午前8時過ぎだった。

 教室に入るなり声をかけてきたのは、自分の幼馴染である玲華だった。長い黒髪が特徴的な彼女は、クラスの男子から非常にモテている。それは、単に彼女が長い黒髪だからではない。

 肌は一切汚れのない砂浜のように白く、襟元から覗く首は、少し力を入れたら折れてしまうのではないかと思うほどに細い。そして容姿端麗。

「あ、うん。おはよう」

 そんな可愛いと一言で言っては申しわけない彼女に、蓮人は何も動じずそう返す。

「今日、転校生が来るって!」

「へー、転校生?」

「そうなの!もし女の子だったら仲良くしたいなー」

「昨日の時点で、そんな話されてたっけ?」

「うん。昨日の帰りに、先生言ってたよ?」

「…………いや、聞いてないけど」

「とりあえず、席につこうよ。そろそろホームルーム始まるし」

「そ、そうだな」

 玲華にそう言われ、蓮人は自分の席にバッグをかけ座る。

 蓮人の席は、窓際の後ろから二列目である。そして玲華は、反対に廊下側の一番前の席だった。


「はーい、みなさんおはようございます」


 教室の扉がガラリと開くと、元気のいい声と共に担任である斎藤詩音さいとうしおんが入ってきた。

「えっと、昨日ちょっとお話したけど、転校生が入ってきます。みんな仲良くしてねー」

「転校生……いや、昨日聞いてないと思うんだけど……」

 蓮人は誰にも聞こえないくらいの音量で、そんなことを呟く。

 蓮人以外の人は、「どんな人なんだろ!?」とか「イケメンだったらいいな!」などと、楽しそうな声がクラスに飛び交う。

「はいはい、みなさん落ち着いて。……それでは、入ってきてー」

 詩音先生がみんなを静かにさせると、廊下にいた転校生に入ってくるよう指示する。


 コツ、コツと、ゆっくりとした足取りで教室に入ってきた——。













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