清楚姫と歓迎会②
「この後、2人で飲み直しませんか?」
隣にいる姫野が言う。
あまりに急な誘いに、僕は思わず変な声が出てしまった。
「えぇ!?」
「ダメでした……?」
上目遣いで小首を傾げる姫野。そんな目で見られちゃ断れない。
「ダメじゃないけど……」
「良かったです!では早速行きましょう!」
ぱあっと顔を輝かせた姫野が元気に改札へと向かうので後を追いかける。
こういう一面があるなんて意外だったな、なんて思いながら。
そうしてやってきたのは、大井町駅からほど近いカクテルバー マロン。
カクテルを数多く揃えているこの店は、姫野の行きつけらしい。
バーなんてあんまり行かないからなんだか緊張するな。
店に入ると、ダンディなバーテンさんがお出迎えしてきた。
「おや、眞尋ちゃん久しぶり。って、隣の男の子はもしかして彼氏さんかな?」
「ち、違います!」
顔を真っ赤にしてブンブンと首を振る姫野。
「こ、こほん。彼は同じ会社の方で、高校時代の同級生でもある篠村さんです。篠村さん、こちらがマスターの城田さんです。」
「あぁ、彼が例の……改めて、このバーのマスターの
「篠村朔です」
紹介された城田さんと簡単に挨拶を交わす。
なんか気になるワードも聞こえたが……姫野が耐えきれ無さそうだ。聞かなかった事にしよう。
席についた俺たちは早速ドリンクを頼む。せっかくなので普段飲まないようなものを、と思いジンバックを注文。姫野はカシスソーダにしたようだ。
「にしても姫野、大丈夫なのか?酒はあんまり得意じゃないんだろう?」
「そ、そのことなんですが、実はですね。あれ、嘘なんです。本当はお酒すごく好きで……け、結構強い方なんですよ?」
これまた意外な言葉だった。まあよく考えたら、酒が苦手なやつに行きつけのバーとかないだろう。
「そうだったのか。なんでまたそんな嘘を?」
「周りからよく、意外だとかそんなふうに見えないとか言われるので、なんとなく恥ずかしくて」
「まあ、清楚姫だもんな」
俺がふとそう言うと、姫野はムッとした表情を浮かべる。
「その呼び方、嫌いです。私は清楚でも姫でもなんでもないですもん」
「まあそりゃそうだよな。言われる側からしたらあんまいい気はしなさそうだし」
当たり前と言えば当たり前だが、本人は清楚姫の呼び名は気に入らないらしい。
「そうです。その点、篠村さんは一度もそう呼んできませんでしたね。そう言うところ、とても好きです」
アルコールが回ってきたのか、表情も口調もへにゃりとしてきた姫野。次はファジーネーブルを頼んでいる。甘い酒が好きなんだな。
てか、好きって言った!?い、いや。これはLIKEであって、特に他意はないだろう。
「まあ、姫野は姫野だからな」
「それ!」
俺の発言に対して、姫野が急に大きな声を出してこちらを指差す。
「その姫野、って言い方!どことなく距離を感じます!」
「そ、そうは言われてもなぁ。じゃあなんて呼んだらいいんだ?」
「眞尋でいいじゃないですか」
そうドヤ顔で言い放つ。いいのか?
「なんか馴れ馴れしくないか?」
「大丈夫です。同級生ですから」
謎理論がすぎるだろう。大した関わりもなかった上に、ブランク何年あると思ってんだ。
「ま、まあわかった。じゃあこれからは眞尋で」
「名前呼び捨て、いいですね。むふふ」
めちゃめちゃ緊張するけど、本人は楽しそうだからいいか。
「会社でも眞尋でいいですからね、篠村くん」
「いや、俺の呼び方は変わらないのかよ」
「いやいや、さん呼びからくん呼びに変わりましたよ?大きな変化です」
「そうなのか……?」
あんまり変わらん気もするけど、何故かドヤ顔をかましている眞尋が可愛いので気にしない事にした。
にしても、名前呼び捨てか。高校時代じゃ考えられなかったな。
ちゃんと呼べるだろうか。変な感じにならないといいが。
そんな不安と、名前呼びできる優越感を流すため、俺は再びジンバックを注文した。
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閲覧ありがとうございます。
昨日は投稿できなくて申し訳ないです。
昼間から幼馴染家族と酒を飲んでいたのですが、そこんちのママがまあ酒豪で。幼馴染はまだ未成年なため、酒のヘイトが私に集まるんですよね。結果ベロベロに酔っ払いました。
いつも、書き溜め分から丁度いい長さを抜粋して、少し修正などをして投稿しているのですが、酔った状態でその作業をするとどうなるかわからなかったので、投稿をしない判断をしました。偉い。
それはそうと、PVが1000を突破!なんなら1400を突破し、もうすぐ1500です。作品フォロワーも70人となりました。本当にありがたい限りです。
昨日のようなハプニングがない限り、年内は毎日投稿を続ける予定ですので、何卒よろしくお願いいたします。
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