重荷

 奴には、長男という重荷を背負わせすぎたのかもしれない、期待をよせすぎたのかもしれん。なにせ生まれたときから優れていた奴は、失敗や間違いを侵す暇などなかったのだろうから。

 説明しおえた生善はクノハをふりかえる。クノハが初めて自分の隠し事―この物置にある“ソレ”を管理している事に気づいたとき、クノハは、申し訳なさそうにこういった。

【付け回してしまってすみません、私には、大きな秘密があるのです、話しましょう、もし信用していただければ、あらぬ疑いがはれるかもしれません】

「……あの日、お前が言ったことをすべて信じているわけではないよ、けれどお前の力が悪いものと決めつけるのも問題なのだと思うのだ、私は私の退魔師の宗派において、納得いく判断をしてきたつもりだった、だがすべてが正しかったとはいいきれない、奴を変えてしまった事件で、奴がよい霊だといっていた霊を裁いてしまったからな、奴はあれから変わった、反抗するようになり、ついに失踪、クレンは知らないが兄は“悪霊使いに落ちた”という噂も耳にする」

「悪霊使い?」

「正式には、カルマテイカーというらしい、霊能力者が自分の利益のために、あるいは以来の為だけに、悪い霊や悪い行いまで憚らず、霊能力を使い活動する集団のことだ、結局私は、子供の一人を私の判断ミスで悪と決めつけ、それから仲を元に戻すことはできなかった、あれから少しは丸くなったつもりなのだ、贖罪―といえば自分に都合がよすぎるが」

「しかし、“ソレ”がここにあるということは、“ソレ”をめぐる因縁はずっと続くことでしょう」

「ああ、それを一人で抱えることも覚悟していたが、君が一緒ならあるいは……あの“予言”も真実になるやも」

「予言?」

「いや、何でもない……ただ、私がクレンに対してかつて犯したような過ちをまた押し付けるのであれば、お前が止めてくれるか、クノハ」

 クノハは一瞬とまどう、クレンの事は慕っているし、できる事は何でもするつもりだが、親子の間に割って入るような間柄ではまだない。それとも、生善はそれを期待しているのだろうか?自分とこの家族との縁を考えれば、不思議ではない事だが、クノハは、それでもクレンになつかしいにおいと力、美しい思い出を重ねて、回答した。

「ええ、まかせてください」

 胸に手を当て、自分を信頼してほしいという一心でそういうと、生善は、まるで何か重責から解き放たれ、信頼できる仲間ができたというような表情で笑った

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