第42話

コンビニでご飯を買ってくればあとは食べるだけだ、おつりは貰っていた、夜食代だ。

のんびりした時間が大好きだ、好きな曲を聞いてアニメを見るか本を読めばいい。

プレハブ小屋は夏は30度を超え、冬は氷点下とすごく嫌な環境だったが、夏は父がつけてくれたエアコンが機能するし、冬は灯油ヒーターを使えばよかった。

難点は結露がしやすいのと、カビが生えやすいことだったが、私にとってそんな小さなことはどうでもいいことだった。

壁が薄いから外の物音、声、足音まで全部が聞こえる。私のプライバシーなんて見えないだけであったもんじゃなかったけど、別に常に横になって音楽を聴きながらパソコンをいじるか本を読むだけだったから気にしていなかった。

夜も0時を回ればお腹が空いてくる、夕方起床の私が夜中に眠くなるわけがなかった。

0時も過ぎてくると祖母は寝る、寝る頃を見計らって母屋に行き、シャワーを浴び、水を飲む。

最初はなんで祖母の生活リズムに合わせて私が行動しなければいけないんだと思っていたし、衝突することが多かったが、私は祖母に絡まれなければ怪我をすることなく、穏やかに過ごせるのだ。

当時、私はずっと短気で直情型だと思っていたけど、私が私自身に評価をするなら、だいぶ穏やかで相当に気が長いと思っている。母と嫌な人たちに対しての対応がイレギュラーなんだと思っている。イレギュラーな時に出る姿が本性と言われるかもしれないが、好きな人たちに怒ることも嫌悪を抱くことも少ない、限りなく0に近いと思っている。

お風呂上りでさっぱりすれば、プレハブで髪を乾かして、コンビニに行く準備をする。

夜中にコンビニに行くのは私にとっての散歩だ。

雨が降っていなければ1時間から1時間半、夜中に外をふらふらする時間が大好きだった。

外はびっくりするくらい静かで、昼間のうるさい環境と切り離された別世界のようだった。

田舎だから星は綺麗で、夜の空気の匂いと、夏は少し蒸し暑さが残る空気感、冬はひんやりした空気感どっちも大好きだった。

ふらふらしていてパトカーが横を通っても堂々としていればいいことに気づいたのはいつだったのか、最初からあまりパトカーもなにも気にはしていなかったけど。

その時の私は茶色のロングヘアに夏なら半袖のTシャツに太もも丈のショートパンツ、冬ならトレーナーの上に厚くて重いコート、タイツを履いてショートパンツを履くだけだった、年間を通してショートパンツにお世話になっている。

警察の事情は知らないが、何か言われたら家庭状況を言ってやろうと思っていたが、私が警察に職務質問されることになるのは、関東に出て来て、終電を乗り間違えて漂流した時が最初で最後の1回のみだ。

私の強みは立ち直りが早いことだと思っているし、自由が何よりも大好きで、縛られることが大嫌いなんだと気づいたのはこの時間があって、色々空想に耽っていたからだと思う。

意外となにが起きても気が動転することが少ない、強心臓かもしれないと思ったのもこのころだ。

ふらふらして、思い立ったらそこにあるコンビニに入り、安上がりになりそうな物と、少しの贅沢とアイスを買って食べながら帰るのが至福だったのだ。

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