第33話
「教室には入らないし、保健室も人がいるだろうから嫌です。」
「わかってるよ~」
先生はちょっと待っててと言うと職員室に入っていった。
廊下は静かだ、他の生徒たちは授業を受けているから誰もいない、ひんやりしている。
教室にいると息苦しくなる、別に同級生になんて言われてもいいしどうでもいい。言われることはどうでもいいのに会話の一つ一つから私にはないものを感じさせられるのだ。
当時の私は家族愛が憎たらしくて妬ましくて、醜い顔をしていたと思う。
「相談室が開いてるから、学校に来たらそこにいていいよ。暇だったら図書室に行って本を借りてきてもいいし。とにかく給食を食べることが仕事だからね。」
「わかりました。」
相談室はあまり使われていないのか、掃除をされていないのか、少し埃っぽい空気感だった。
「こんなところでご飯なんて食べれな~い」と同級生の女の子たちは言うんだろうか。
そんなことを言うなら私の家に来てみればいい、家に入るとゴミの山、猫のアンモニア臭、水たまりのように猫の尿が当たり前のようにそこにある。
相談室は天国じゃないか。ご飯も食べれて本を読んでいてよくて最高だ。
先生のことを信頼はできなかったが感謝はしている。ありがたく使わせてもらうことにした。
「じゃあ時間になったら給食持ってくるから、雑誌でも読んでて!あとでね~。」
主婦が読むような雑誌が4冊くらいあった、レシピが載っている。
小学生の時は同級生のお菓子を作ったという会話をこそこそと聞いていたからお菓子つくりに憧れていたのを思い出した。
(うちじゃ無理だなぁ…)
どのレシピを見ても、家庭環境が作らせてくれない。
糞尿で溢れた台所で料理なんてしたくないのだ、いくら鈍感にはなっていて、その場に入っていく事に抵抗はなくても、その場で料理と食事をすることは厳しい。
いつか1人暮らしでもして、自由になったら自分で作ってみたいと思いながらソファーで寝ることにした。
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