第29話
プレハブでの生活は快適だった。
父は借金の返済が終わり、一緒に暮らすようになって自分の経営している会社の方を回すようになっていた。一緒に暮らすと言っても父は母屋、私はプレハブだから接点などほぼほぼない。
母屋からは毎日怒声が聞こえる。祖母と父が言い争いをしているのだろう。
勝手にしてくれという感じだ、私には関係ない。
祖母が怒鳴られているならざまあみろと言った感じだし、父が怒り狂っているならその通りだろう、父には怒る権利があると思っていたし。
火の粉が私に降りかかる気配を少しでも感じれば少しのお金を持ってそそくさと家を出て散歩なり、マクドナルドなりに逃げればいいのだ、簡単な話だ。
中学1年生の頃は父に毎日罵声を浴びせられた。
「学校に休みの連絡入れろっつうのがわかんねぇのか!?何回同じこと言わせんだ、何回も同じこと言う俺の身になったことがあんのかぁ!?お前はピーマンなのか?脳みそが詰まってねぇから理解できねえのか?」
「担任の先生には明日から来ないって言った!!それ以上も以下もないじゃん!なんで毎日電話してくんだよ!つぅか電話くらいしろよ親だろ!!!今まで何にもしてこなかったんだからそんくらいしろよふざけんな!!!」
罵声が怖くないはずないのだ、父は180㎝超えのガタイのいい顔の怖い男だ、そんな人が怒声を上げながら壁を殴ればさすがに怖い。
祖母にされることはもう慣れっこだったが父からの恐怖には耐性がついていなかった。
でもここで負けるわけにはいかないのだ、プレハブは自由だ 二階に位置する高さにあるし、鍵がかかるから祖母がドアを叩いても窓から飛び降りれば逃げることができる、パソコンで娯楽を堪能することができる。
ここは私の誰にも干渉されない完全な安全地帯なのだ。
そんなやり取りをして父とバトルをするのに嫌気がさしたころに先生からの電話がなくなった。
諦めたんだろう、いい感じだ。
これ以上電話をかけてくるなと思った、私が父に怒られるのだ。
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