第27話

中学の入学式は想定していた通り、何事もなく終わった。

入学式の後に中学で使う物の物販があった、父は

「~~君のお母さんに頼んでおいたから一緒に買いに行くと良い。」

と言っていたので、とりあえず終わった後にその2人を探したがいなかったようだったので帰路につくことにした。

その同級生の母は、自分の息子が大好きで しょっちゅう写真を撮っているのを見かけていたし、そんな場所に私が入っていっても邪魔者になるだけだろうとも考えた。


校門に向かってく最中 周りをちらりと見れば皆両親なり、片親なり来ているし、始終笑顔でいる。そんな中で中学生になったばかりの私だけが1人だった。

あまり気にしていないつもりだったのに帰り道の途中で虚しさが膨らんで弾けたようだった。

声を上げずにぽろぽろと涙を流しながら帰った。

(父は忙しいんだ、しょうがない。祖母の借金を背負って、私を育てるためにお金も稼いでいる。今も困っている人のために必死で働いているだろう、私にとっても誇らしいことなんだ。授業参観も来てくれなくていいそんな時間があるなら休むか好きなことをしててほしい。)

その時に考えたのだ、父の人生って何なんだろうと。

父は私が居なければ実家に帰ることもなく、祖母の借金を背負うこともなかったんじゃないか。

(祖母の言う疫病神はあながち間違ってないかもしれないなぁ。)

(私の居場所ってどこなんだろう。)

入学式で晴れ晴れしい記憶はない、ひたすら気持ちが沈んでいくのを感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る