第8話

私には親がいないのだ。

いるにはいるが居ないのと同じだ。なんせもう会話らしい会話なんて数年していない。

日本の法律上親とは完全に縁が切れないらしいが、誰が何と言おうが縁が切れているのだ。


父、当時17歳高校2年生。実家に嫌気がさしていてグレていた、グレながらも正義感があったらしい、阪神淡路大震災で関西方面が打撃を受けているのを見て、当時高校生だった父はボランティアに参加しようとしたらしく、教員にボランティアに参加するために休学届を出すことを相談したときに言われた一言で学校をやめることになったのだ。

「ボランティア?そんなことより学生は勉強が大事だろ。」

こんな教員に教わることは何もないと思ったらしくすぐに退学届けを提出したそうだ。

「先生が何を思って言ったのかは全然わからんし、高校生の俺が行ったところで役に立たない、余計な世話だと思って言ったのかもしれないけどなぁ、その時そんなことよりっていう言葉にむかっ腹が立ったんだよ、何人も死んでいるのにそんなことって言うやつが教員免許持ってるんだからおそろしいよなぁ。」

学校も辞めて家にもいたくない。

そんな時に友達の紹介で母と出会ったらしい。


私が小学生の頃、一瞬話す機会があったためにこれだけは聞いておきたい、ルーツではないが私が今ここにいる原因、理由をと、父になぜ母と付き合って結婚したのかを質問したことがある。

「最初は逃げ場になってくれて都合がいいと思った、最初にアパートを訪ねて行ったときに出てきたやつを見てなんだこいはって思ったけどな。」

インターホンを押して出てきた母は、金髪で頭頂部は黒く、眉毛がなかったらしい。その金髪はブリーチを繰り返しすぎて、引っ張るとゴムのように伸びて戻らないんだという。

友達の紹介で父が来ることを知っていた母は事情を理解すると家に招き入れたそうだ。

母は前日に前の彼氏との子供を堕胎しに行っていたらしく、精神的にダメージを受けていたという。

前の彼氏というのはバイクの交通事故で亡くなってしまっていたようで、子供は泣く泣く堕ろしたと説明されたそうだ。とても今寂しくて、人肌が恋しいのだと言われて

(ほっとけない)

と思ったそうで、家にいたくない父と、寂しい母。利害が一致したらしく同居が始まったらしい。

そんな生活を1年も続けていると恋しさなのか愛なのかわからないが二人の間に何かが起きたのだろう。

19歳になった2人はお互い子供が欲しいということで私を作ったということだった。

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