第8話 VS不良生徒×3、二人目の仲間

構えると同時に周りを見渡す、俺の真正面に棒切れの男。


背後には素手二人が退路を塞ぐように立っていて、囲まれている。


「マロンは素手の二人をお願い、俺はこの棒切れ野郎を倒す」

「了解だ」

「なめんなよ……!」


棒切れの男がこちらに殴りかかる。


だが、今度は不意打ちで無いため左腕でガードし、

右腕で隙だらけの腹に一撃パンチを入れる。


「ごふッ!痛えな!」


腹を打たれ、反撃に転じようとしたのか強引に棒切れを振り回し始めた。


だがそんな雑な攻撃が当たるはずもなく、俺は簡単に躱す。


「くそっ……この女強えって……」


チラッとマロンの方を見ると、一人は腰を打ったのか倒れながら腰をさすり、

もう一人はマロンを恐れてタジタジになっている。

大丈夫そうだな。


「よそ見すんな!」


「遅いっての!」


棒切れ男が上段に構えた棒切れで襲い来る。


しかし、俺はそれに合わせたカウンターで顔面に掌底を叩き込む!


「ブホッ!」


男は空中で半回転し、仰向けに倒れた。


「くっ……なんでそんな迷い無く人を殴れんだよ……」


「迷っていられない理由が有るんだよ、俺からもセイラに伝言だ。

『文句があるなら直接来い』って伝えとけ」


「ノーティス、終わったぞ」


マロンに呼ばれ振り返ると、倒れた男はそのままだがもう一人がいない。

逃げたようだ。


「そっか、じゃあ行こう」

「分かった」


また襲われるのも嫌なので俺らは廊下を去った。



ここは生徒会室、かつては学園のトップ層が集う誇り高き仕事場だった。


だが、今はセイラ・リドゥーに従順な者達が彼女の為に整えた女王の

私室となっている。


「……セイラ、彼らが失敗したようだ」

「そうですか」


元黄色組リーダーエリトがそう伝えるが、

部屋の主セイラは落ち着いた様子を気取っている。


(まあ、仮にも私の兄だしね……こんな事で倒せるとは思って無かったけど)


「それと、彼らは伝言を預かっていたようだよ」


「?」


「『文句があるなら直接来い』だってさ」


「ふっ……」


(覚悟は出来てるって受け取って良いよね……そっちがその気なら本気で

ぶっ潰してあげる!)



身体を動かした後は腹が減る。


人間の本能に従って食堂に来た俺らは窓に近い席を選んで各々料理を注文する。


「俺は……トマトスープと柔らかめのパンで」


「私は……海鮮丼とデザートのモンブランを頼む。あ、海鮮丼は大盛りで」


「あいよ!」


注文を済ませ、俺はさっきの事について礼を言った。


「さっきは二人相手取ってくれてありがとう、俺だけじゃ三人はキツかった」


「ふっ、奴ら普段の鍛錬をしていないようだったからな、余裕だったぞ」


「頼もしい事言ってくれるじゃん?」


「お待たせしましたー!海鮮丼、トマトスープとパンのセットですー!」


ここでデザートを除いた料理が届く。


俺が頼んだトマトスープは暖かい湯気が立ち上り、鼻にトマトの風味を感じる。


「……美味い」


(食べるの早っ!)


俺が料理を目と鼻で楽しんでる間にマロンは海鮮丼を口に頬張っていた。

釣られて俺もトマトスープを口に運ぼうとしたその時。


「ヘイヘイ!シャドウ・ノーティスさんでよろしいでしょうか!」


「誰だ君は!?」


空気を読むという概念を知らないのか小柄な女生徒が声を掛けてきた。

ピンクのロングヘアーに茶色ハンチング帽、赤の制服。


そして、一目で分かる関わると面倒な事になるだろう無駄に明るいオーラが全身から漂っている。


彼女は確か……


「カイ・シュザイさん……だっけ?」

「おっと!話題の中心人物に知られているとは光栄ですね!」


カイ・シュザイ。

ゲームではセーブポイントの役目を担っている学級新聞の執筆者。


ゲームでは転校そうそう赤組リーダーになった

主人公に取材の名目で関わって来る。


しかし、ゲームの時は意識していなかったがこんな

騒々しいキャラだったか……?


「さっそく先程の乱闘騒ぎについて取材を……」


「あの、これから飯食べる所なんだけど」


「そんな事気にしていたら取材なんて出来ません!」


一周まわって清々しい酷い言葉が飛び出す。


横目でマロンを見ると、食事に夢中で全く気づいていない。

俺が取材を受けるのは避けられ無さそうだ……


「わかった、わかったけど一つ条件が有る」


「何でしょう?金以外なら何でも聞きますよ?」


「あーうん、今度のクラス対抗戦で俺の仲間として戦って欲しい」


「良いですよ!」


いいのか。割と適当に誘ったのにホイホイ乗ってこられたのでこっちが驚く。


「じゃあ後で職員室に来て欲しいんだけど……先に取材を受けようか?」


「はい!よろしくお願いします!」


災害のように唐突に、カイの取材が始まった。



一応主人公の見せ場で終わった第一章。

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