第1章
第1話
今日から2年生。
少しずつ春を感じられる陽気になってきた頃合いだ。
「なっちゃ~ん!」
どこか楽し気な声を響かせた友人の声がはるか後方から聞こえた。
「おはよ。どうしたのそんなワクワクして」
「どうしたのじゃないよ!新しいクラスが気にならないのかね君は」
新しいクラス、かぁ。
「あんまりかなぁ」
「なして!?今年こそ3人一緒のクラスにとかないの!?」
「それ望むと3人だけの関係って感じで固まっちゃいそうだし。って考えるとちょっとは刺激ほしいかなぁ」
「酷いぞぉなっちゃん」
酷いと言われましても……。私としては3人だけっていう交友関係だけで高校を終わらせるつもりはないし。
「まぁまぁなっちゃんの言うことも分かるけどねぇ」
「なして!?てか、いつからそこいたのゆーち!」
「ついさっき。2人の後ろ姿が見えたし、声もちょっと聞こえたからちょっと走った」
ゆーちこと
「おうちゃん私たち大好きだもんね~。分かってあげる」
「おう子ども扱いしてるなゆーち?今日こそは許さないよ!」
「…そう勢いづくのが子供っぽいと思う」
「なっちゃん!?」
オーバーリアクションが過ぎると思う。でもまぁ、おうちゃんこと
「3人同じクラス、っていうのを第一に望んでるの、もしかして私だけ?」
「さぁ?私としては3人一緒なら嬉しいけどね。でも、なっちゃんの意見も分かるから悩みどころ」
「へへっ!やっぱりゆーちはゆーちだね!」
「どういう意味よ!?」
「けなしてないってば~」
こうやって友達と笑って喋ったり、放課後にどっか行ってショッピングしたりといった日常も好きではあるけど、それだけで高校生活を終わらせるのもいかがなものか。大学受験を考えたら、人によってはもう準備を始める段階だけど、3年生になったら絶対に今のように遊ぶことはかなわない。
そう考えると、今までなかったような経験をするなら今のうちなわけで。
そう考えていると、不意に声が聞こえた。
「すみません。ちょっといいですか?」
「ん?」
「誰ですかあなた」
「突然すいません。このあたりに最近引っ越してきたんですけど、散歩していたら道に迷ってしまって…。近くの交番まででいいので、案内してもらってもいいですか?」
「はぁ…?どうする?」
「私は良いよ。本人が交番に行きたがってるってことは、危ない人じゃない気がするし」
「その油断に付け込む悪魔だったらどうするよ」
「さすがにそんなことしないでしょ~。さ、あなたも行きましょ」
「……ねぇゆーち」
「私も同じこと思った。でもまぁ、危機管理より優しさが勝つ人間だから仕方ないよ」
なんか変なこと言われてる気がするけど、気にしないで交番まで歩を進めることにした。
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