効いてる効いてる。

「て、てめえっ、後で覚えてろにゃああ!?」


 ミーシャ選手、顔真っ赤で涙目になりながら吼える。


「ひぃ、怖い怖い。うう、もう少しで拘束が解けてしまいそうだ……ッ!」

「拘束が外れた時がオマエの最後にゃああ!!」

「機嫌とるために撫でておこう。あと尻尾の付け根を。とんとんとん……」

「ちょまっマジやめろにゃ!? あっあっあっ、やば、こらぁっ!?」


 あー楽しい。これだけのギャラリーの前で猫耳美少女をお尻ぺんぺんとか、そうそうできるプレイじゃあないよ。


「カリーナ選手! それはダメージを蓄積するような攻撃ではないようだが――」

「状態異常付与攻撃ですが、何かッ!?」

「む、むぅ! なら仕方あるまい……」

「てめっ! 審判ゴラァ! ちゃんと止めろにゃ!? こんな状態異常攻撃とかあるわけ……あひっ!」


 ブルッと震えるミーシャ選手。効いてる効いてる。


「ほほほ、身体は正直に状態異常が効いているようだな。っと、やっべ、そろそろ拘束がほどけるっ! 10、9、8……」

「お、お!? あと数秒だにゃ!? うう、は、はやく、トントンやめるにゃ!」

「……なぁーーーーーーーーーーーな、ろぉぉぉーーーーーーーーーっくっ」

「おいいいい!? カウント遅くすんじゃねぇええにゃあああー!!!」


 怒ってジタバタするミーシャ選手。もちろん拘束は外れない。

 ふふふ、打てば響くというのはこう言うことだろう。凄く楽しくなってきたぜ。


「私だって拘束が外れないように頑張って堪えてるんだから、カウントが遅くなったりするに決まってるじゃないですか。ねぇ審判?」

「え? あ、そう、なのかな?」

「おい! 騙されるニャ!? コイツ今カウントしてねぇにゃ!! カウントで解けるとかさては嘘にゃ!?」

「ごー、よーん、さーーーーん……」

「おっ、おっ、あとちょっと! あとちょっと堪えれば解放される……」

「にー、いーち……ゼロッ!(ばしん!) ゼロッ!(ばしーん!) ゼローーーッ!!(ばしーーーーーんっ!!)」

「みぎゃああああああーーーー!?」


 カウント0になったので思いっきり尻を叩いてやると、ミーシャ選手はビクビクと震えながらぐったりとした。


「って、拘束とけてねーにゃ?! 騙したニャ!?」

「いやそもそも私カウントが0になったら解けるなんて一言も言ってないが? はたくまでのカウントダウンだっただけだが?」

「てめーーーーーーッ!!!! ぴにゃあっ!?」


 ばしーんっ!! と尻を叩ききる。ミーシャ選手の目からほろりと涙が零れた。


「ふぅ、あと10発くらい叩いたらきっと拘束が解除されてしまうかも。ねぇミーシャ選手。何回叩いたか数えてくれる?」

「……うう、うっ、ひでーにゃ! 弄ばれてるにゃあ……ッ!!」

「おいおいスパッツ脱がせてない時点で有情だろうが。なんならコロシアムの観客にミーシャのプリケツ晒しても良いんだぜ?」

「やめろぉおおおおーーーーーーー!?」


 ふふふ、そろそろいいかな。


「あ、審判。私、降参しまーす」

「は?」


 私はそう宣言した。


「いやー力の限界でぇ、もうこれ以上ミーシャ選手を拘束できなくてぇ」


 と、ミーシャ選手の尻を撫でつつ言う。ワイングラス傾けながら猫を撫でる悪役の気分だ。


「しょ、勝者! ミーシャ選手……ッ??」


 審判は戸惑いながらもそう宣言した。

 会場からブーイングが飛んでくる。


「なんだとー!? 真面目にやれーーー!!」

「ふざけるな! どう見ても一方的にやられてただろ!?」

「降参だって!? なんで!? ミーシャ選手何もできてねぇじゃん!」


 そりゃそうだ。不真面目なうえに降参とか勝手が過ぎる。ミーシャ選手も私を睨んでいた。


「おま……ふ、ふざけ……大概に……ッ」

「約束の金貨1枚はスパッツの中にいれとくねぇー!」

「にゃひっ! 冷たっ……」


 と、私はミーシャのスパッツに、尻尾穴から金貨をねじ込んだ。

 ヒーラー資金だが、あとで神様から補填はいるしいいだろう。そして、まだ拘束されてるミーシャの耳元にそっと囁く。


「あ、勝負の記念に靴下だけ貰ってくね。いいよねミーシャちゃん?」

「ふぐっ……わ、私が勝ったにゃら、約束が違……」

「あれ? あれれ? これで勝ったつもりなの? ぷぷっ、ウケる」

「……~~~ッ!! も、もってけ、にゃっ……!」


 ミーシャは涙目になりながら、私に靴下を脱がされた。まだ動けなかったので。

 ふう、私もついついノリノリで楽しんでしまったよ。悪かったね。


『……圧倒的に負けながら、勝利を譲られる! これは闘士にとってかなりの屈辱ですねぇ!! さすがカリーナちゃんナイス辱め!! 天才!! 私のいと


 そして神像は上機嫌に輝いていた。



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