完璧にピコピコハンマーです。


 『破城壁槌ヘパイストス』。

 美術館の中央展示室、日の光の当たる一番目立つ場所で、鎖につながれて飾られていた。


 金色に輝く両手持ちの巨大な槌。ベースは木製で、オリハルコンと思しき金属が鎧のようにハンマーを装飾している。

 そして先端部分は、ギザギザな蛇腹のようなレリーフが刻まれており――



 ――誤解を恐れずに言えば、カッコ良く豪華にしたピコピコハンマーであった。



 ミーちゃんは、左右に立っていた警備員に軽く挨拶してから、『破城壁槌ヘパイストス』を台座から持ち上げた。

 鎖につながれているのは単なる持ち逃げ防止で、誰でも『破城壁槌ヘパイストス』を持てるような展示になっているらしい。

 ……小さい子供に大きなピコピコハンマー……ロマンを感じる!


「不思議な装飾でしょう? あ、これ内部は空洞で見た目ほど重くないよ。それと城壁を殴る時以外はギザギザ部分が縮んでピコッって鳴るのね」

「……なるほどね?」


 完璧にピコピコハンマーです。ありがとうございました。

 ……これ絶対神様の趣味だな。間違いない。



「ちなみに城壁かそうじゃないかの判定ってどうなってるの?」

「ウチらの研究によると、使い手の認識かな。初代テッシン国王がこれで山を砕いた伝説もあるよ。『山は内部の鉱石オタカラを守る城壁だ!』って言ってアカハガネ周辺の山を開拓しまくったの」


 アイシアの故郷もその一つらしい。

 ってかそれアリなのかよ。そんなの言い出したらなんでもアリじゃん。


「あ、伝説といっても催眠・洗脳系の薬や魔道具をフルに使った記録が残ってるから間違いなく事実だよ」

「わぁ、結構努力が必要だった。なるほどね」


 そうして開発を繰り返して、今に至ると。



「それで、この『破城壁槌ヘパイストス』が怪盗ヘルメスに狙われてる、と」

「うん。これが予告状」


 と、ミーちゃんはおもむろに予告状のカードを取り出した。

 目元を隠す黒い仮面とかちょっと可愛い絵とともに、『3日後の夜、神の宝を頂戴する。怪盗ヘルメス』というメッセージが書かれていた。


「分かりやすくてシンプルだね」

「昨日届いてたらしいから、実際は明日の夜なの」

「わぁ全然時間ないね」


 さて、私もこれどうしたもんかな。急いで決めなければ。


 いっそヘルメスに便乗して『破城壁槌ヘパイストス』を横取りするか……いや、これはないな。ミーちゃんが物理的にクビになってしまうもの。

 んんん……困った!!



「ディア君、何か良いアイディアはない?」

「……とりあえず、『破城壁槌ヘパイストス』を守る方法ならひとつ思いつきましたが」


 えっ。何々どんな案?


「いや、でもこれは……いいんですかね?」

「えー、気になる気になる。教えて!」

「まぁ、怪盗ヘルメスをなんとかしたらじっくり考える時間もできますし、その他のアレコレも解決するかもしれません。分かりました」



 次回! ディア君の冴えたアイディアVS怪盗ヘルメス! デュエルスタンバイ!




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Web版とは大きな違いがあるぞ!


キャラ紹介はここのとこの6人で一旦打ち止め!

しかし公式アカウントはまだなにやらある様子……!!


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