人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい？誰がんな事すっかバーカ！

第79話 聖女の結婚披露宴 場外乱闘

「お前なんかに彼女は渡さない！　きっとアリエンナはお前に騙されているんだ！！」

　何を言っているのかしら？　ギャモーが私を騙すわけないじゃない。

「あー……。何言ってんのか分からねぇけどよ。アリエンナに聞いたんだが、お前なんか誰も貰ってくれないって言やぁ嫌われるのは当たり前なんじゃねぇのか？」

　そうね。最終的にはそこに行き着くわよね。

　あの時はかなりイラっとして、手加減するのが大変だったんだから。

「棒で叩くのはやり過ぎだが。」

「ギャモー、今その話は関係ありません。」

　びっくりしたような顔で私を見てくるギャモー。

　私が悪いみたいな態度はやめて欲しい。

「……照れ隠しだった。」

「はい？」

「照れ隠しだったんだっ！　アリエンナが好き過ぎて、しかしどうすれば良いのか分からなくて、あんな事を言ってしまったんだ！！」

　大声で過去の過ちを告白するルーシュ君は、会う度に大声を出してばかりで本当にうるさい。

　それに対しギャモーは溜め息をついて答える。

「照れ隠しったって、アリエンナは嫌だったみたいだぜ？」

「子供の頃の過ちくらい察してくれよ！」

「子供の頃のアリエンナに察しろって言っても無理だろ。」

　確かに無理ね。今だって言って貰ったから初めて分かったんだし。

「そういう事だったんですね……。」

「分かってくれたのか！？」

　ルーシュ君はキラキラした目で私を見ている。仲直り出来るから嬉しいのね。

「分かりました。」

「じゃあ……。」

「はい。ギャモーと結婚するのでお祝いして下さい。」

「……。」

　あ、またまたショック受けてる。

　一体何があったのかしら？

「ちょっとちょっと！　さっきから聞いていれば酷いじゃないの！　ルーシュ君をいじめるのは許さないわ！」

　何やら怒りながら私に話しかけて来る美人な女の子。

　名前はリズだ。ルーシュ君とは幼馴染だそうで、今でも仲が良いらしい。

　私が結婚報告の為に村を訪れた際、あまりに失礼な事ばかり言うので頭をブッ叩いて気絶させ、白いワンピースに『性女』と書いて木の下に股を開いて座らせてあげたんだった。

　あと、自分が小さい頃に私をいじめた事は棚にあげているみたい。

「確か……。男の子と遊び過ぎてお股が痒いって言ってましたね。」

「人前で言うなっ！」

　何故怒るの？　前に自分で言ってたのに……。

　そしてリズから若干距離を取るルーシュ君。顔が引き攣っているけど、どうしたの？

「リズ……。君は……。」

「ルーシュ君？　この女は嘘をついているの。私はルーシュ君一筋よ。」

　焦った様子でルーシュ君の腕に絡みつこうとしては避けられているリズ。

　彼女の発言は信用されていないようで、ルーシュ君は只々後ずさりしている。

「リズ！　俺が一番だって言ったのは嘘だったのか！？」

「俺がリズと付き合ってるんだぞ！」

「リズは俺と結婚するって言ってたんだ！」

「は！？　お前ら全員リズと寝たのかよ！」

「いやいや、リズは俺の女だぞ！！」

　流石は『性女』ね。村の男達に大人気なよう。

　と言うか、一体何股してたのかしら？

「リズ……。君はアリエンナの次に美人だから仲良くしてたのに、まさかこんな人だったなんて。」

　ルーシュ君は結構クズなのかもしれない。

　それにしても……

　リズは俺のだ。あんた浮気してたの？　ふざけんな。リズは皆のものだ。

　と周囲は大混乱に陥り、あちこちで男女入り乱れて喧嘩が始まってしまったのは予想外。

　教会内では料理がひっくり返り、物が飛び交い、人が吹っ飛び、酒を飲みすぎて寝ている人もいれば、寝ている女性のパンツを脱がしている男もいる。

　そして私達の披露宴は場外乱闘編へと突入した。

　教会を汚すわけにはいかないと言って皆外で乱闘しているが、ひっくり返った料理や飲み物で建物内はあちこち汚くなってしまっている。

「教会はもう汚れちゃってますけどね。」

　ポツリと呟いたが、誰も聞いていないみたい。

その日の夜。

「一時の過ちが人間関係を破壊してしまう事もある……。人の心は複雑怪奇。愛が憎しみに変わる瞬間とは恐ろしい物ですね。」

「なんで他人事みたいに言ってんだ？　リズも悪かったが、お前が余計な事を言わなきゃあんな風にはならなかったんじゃねぇか。」

「ギャモー、過ぎてしまった事は仕方がありません。お詫びにリズのお股は治療しておきましたので、きっと私に感謝していますよ。」

「そうか……いや、そんなわけねぇだろ。この小せぇ村で人間関係が壊れちまって……明日からどうすんだよ？」

「私はドゥーに帰るので知りませんけど。」

　ギャモーの顔が引き攣っている。どうしたの？

「やはりここで生活している人達が解決すべき問題ではないでしょうか？　私は既に部外者になってしまったので、ブッ叩いて言う事を聞かせるしか出来ませんよ？」

「前々からブッ叩いてただろうが。」

　それに関しては、村人達がいじめてくるから仕方なく反撃してただけなのに。

「仕方なかったんです。村人はいじわるなので反撃しなければいけませんでした。」

「……まぁ、お前の母ちゃんよりは大分対応がマシか。」

「その件に関しては置いておくとして、披露宴のおかげで村人達とも打ち解ける事が出来ました。」

　結婚した事を伝えると、村人達は手の平を返したように態度をコロッと変えたのだ。

　村の女達は「結婚出来て良かったわね。」とギャモーを見ながらニヤつき、村の男達は「考えようによっちゃ人妻なら割り切って遊べるな。」とニヤニヤと笑顔で話しかけてきた。

「今まで辛い思いをしてきたけど、和解出来たのはきっとギャモーの人柄のお蔭ですね。」

「あいつらは多分俺の事馬鹿にして…………いや、何でもねぇ。お前がそう思うならそれでも良いか。」