第25話 聖女の王宮訪問

 仇討ちに来たゴロツキを退治した翌日の朝。


 朝食を摂った私達が部屋でゆっくり過ごしていると、セリア様とキャロルさんが訪ねて来た。


 お互いに挨拶を交わし合う。


「私達、急用が出来てしまい帰国しなければいけませんの。突然で申し訳ありませんが、またお会いしましょう。」


「ごめんね。」


 どうやら2人には緊急の何かがあるのでしょう。


「出来れば、もっと一緒に遊びたかったですね。」


「えぇ。私も残念でなりませんわ。」


「また会おうね。」


「そうだな。」


 私達は再会を約束し、互いの住所を教え合ってから別れた。


 これで手紙も出せるわね。


「今日は王女様の所に行こうと思います。」


「良いんじゃねぇか? 遊びに来てくれって言ってたしな。」


 私達は出掛ける支度をして王宮に向かう。


 勿論先触れを出すのも忘れない。


 身分の高い相手には必要な事よね。


 馬車が王宮への正門に辿り着き、門番に挨拶する。


「おはようございます。聖女アリエンナと冒険者ギャモーです。」


「おはようございます。王女殿下が中でお待ちです。どうぞお通り下さい。」


 私達は案内に従って王宮の中を歩いていき、王女様の私室に通される。


「いらっしゃい。歓迎しますよ。」


「おはようございます。早速来てしまいました。」


「邪魔する……お邪魔します。」


「言葉遣いは普段通りで構いませんよ?」


 王女様は気軽に提案してくれる。


 考えてみれば当然か。私達、ズッ友だもんね


「助かる。どうも堅苦しい喋り方は苦手でな。」


「王女様。ありがとうございます。」


「アリエンナさんも普段通りで構いませんよ? あと、ルディアと呼んで貰えれば……。」


 親しみやすい王女様ね。


 親友ともなれば、普通なのかしら。


「では、ルディア様とお呼びします。私は普段の話し方がこんな感じですので。」


「確かにアリエンナは普段からこんな感じだな。」


「私も言葉を崩しますね……そうなの?」


「あぁ。たまに乱暴な言葉遣いになるけどな。」


 もう、ギャモーったら恥ずかしいじゃない。


「あまり想像がつかないわね。どんな感じなの?」


「そうだな……昨日なんかだと元SSランク、火炎のゼンと戦闘してよ。そいつをアリエンナが何度もブッ叩いて、言う事を聞かせる為に『返事しろオラッ!』なんて言ってたな。」


 ルディア様が目を丸くして驚いている。


「とてもそんな事を言うようには見えないけど……考えてみれば、アリエーンさんも態度の悪い貴族にはそんな感じだったものね。」


「うっ……恥ずかしいです。それはそうと、火炎のゼンはルディア様にしつこく言い寄ったと聞いていますが。」


「そうね。かなり失礼な男だったわよ?」


「はい。私にもそんな感じでしたので、やむを得ずたくさんブッ叩いておきました。仕方がなかったと思います。」


「仕方なくねぇだろ。あいつ、最後の方は手足が反対向いてたぞ?」


 ルディア様の顔が引き攣っている。きっと関節の柔らかい人がいるって知らないのね。


「もしかして、死なせてしまったとか?」


「いえ、加減を間違え……当たり所が悪かったとは言え元SSランクですから、回復魔法も使いましたし今も元気な姿が見られますよ。」


 多分。


「見るのはやめておくわ。」


「そうですか?」


「えぇ。ところで、アリエーンさんはお元気? 今はどこに住んでるのかしら?」


「元気ですよ。今は深淵の森付近の村に住んでいます。」


「はい?」


 聞こえなかったのかしら?


「深淵の森付近の村です。」


「あんなに強くても自らを鍛えるのね……。」


「別に鍛えているとかではないと思います。お母さんは憩いの場だと言っていましたし……。」


 お母さんは深淵の森にピクニックに行くのが趣味なのよね。


「深淵の森が憩いの場……?」


「はい。魔物達がじゃれてくるのが可愛いんだそうで。」


「可愛いならブッ叩くなよ。」


「良く悪役とかにいるじゃないですか。まぁ可愛い攻撃ね? 攻撃というのはこうするのよ……って言ってブッ叩く人が。」


「可愛いってそういう意味かよ……。」


「もしかして、アリエンナさんもそこに?」


「ついこの前までは住んでいましたね。私も昔から頻繁に森には遊びに行っていました。」


「……ちなみに魔物はどの程度の強さなの?」


「えーと、そこそこ強いのだとグレータースネーク、グレーターデーモン、グレータードラゴンです。その餌になっているのが、キングゴブリン、オークエンペラー、グレーターオーガとかですね。」


「強いのは皆SSSランク下位よね? 餌になる魔物だってSSランク中位だし……。」


「夜型の魔物だとハイリッチ、エルダーヴァンパイア、フェンリルが居ますね。」


「それはSSランク上位ですね。」


「前にヴァンパイアを仲間にした事があるって言ってたよな。それの事か?」


「そうですね。ヴァンパイアは死ににくいから仲間にしやすいですよ? オススメです。」


「エルダーヴァンパイア相手に手加減する余裕なんてねぇよ!」


「何言ってるんです? ミンチにしても何度か復活出来るから、加減しなくて良いんですよ。」


「まるでアリエーンさんみたい……。」


 ルディア様ったら冗談がお上手なんだから。

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