第2話 説教なんていらねぇよ

生徒会室では、イライラしながらクリスがサラサを待っていた。

なぜイライラしているかというとサラサが来ないからである。

ウロウロと歩き、また座り頭をガシガシかき、またウロウロと歩く。

なんかもう嫌んなっちゃったな、そう思った時サラサが呑気に現れた。


「失礼しまーす」

「遅いっ!」

「ご飯食べてましたー」


ご飯、ご飯・・・だと?このたぬき女の考えてることがわからない。

こういう場合まず生徒会室に来ないか?


「承認印くれる人って誰ですか?」

「俺だ」

「じゃあ、早くください」

「待て待て待て」


頭を抱えるクリスをキョトン顔で見つめるサラサ。

この女、本当になにもわかってない。


「まず、これに書かれていることは本当か?」

「はい」

「貧乏なのか?」

「はい。8年前に父が投資で失敗しました」

「ちなみにどんな投資を?」

「ダイヤモンド鉱山です」


クリスは自分の魂が抜けていくのを感じた。ダイヤモンド、おめえはダメだ。


「いかほど?」

「全ツッパしました」


うわぁ、お父様男だね、いや漢だねって違うわ。


「それで契約結婚して家に援助してほしいと?」

「違います。私だけを養ってほしいのです」

「どういうこと?」

「働きたくないでござる」

「働けよっ!!」


サラサは両手を後ろ手で組み、つま先を床にグリグリさせながら口を尖らせている。

なんだそれ、可愛いな。


「とにかく、これは許可できない。結婚相手は別の方法で探しなさい」

「はぁ、わかりました。ビラまきにシフトチェンジします」

「待て待て待て。それも却下だ」

「もう、あれも駄目これも駄目って、そう言う時は代替案を出してくださいよ。それもせずにダメ出しばかりするのは上に立つ人間じゃありません。わかりましたか?明日、また同じ時間に来ますから代替案考えといてくださいよ。頼みましたよ」

「・・・はい」


遅刻しないように、と言ってサラサは出ていった。

その後すぐ鐘が鳴りクリスは慌てて教室に戻って授業を受けた。

その後生徒会室で、今季の行事日程の確認している時


「なんなんだーあのたぬき女!!」


怒りが時間差で来たらしい。



次の日生徒会室


「考えて来ましたか?」

と、サラサは言いながら丸いパンをもちもち食べる。

ちなみに、クリスが入室した時には既にソファに陣取り「よっ」と手刀をきった。

「いや、おかしいだろ?なんで俺が考えなくちゃいけない?」

「昨日、はいって返事しましたよね?」

「あれは思わずっていうか、勢いに呑まれたっていうか」

「あなた、そんなんでこの先大丈夫ですか?セールストークに呑まれてはい契約しますってなるんじゃないですか?」


ダイヤモンドに全ツッパした父をもつ娘には言われたくない台詞である。


「じゃあ、期限を設けます。1週間後、私が働かなくてもいいような代替案お願いしますよ。こっちは言質とってますからね」


それでは、と言ってサラサは出ていった。


クリスは戦慄した。

学園内に人間の姿をしたなにかがいる。やだ、怖い。

俺が、生徒会長のこの俺がなんとかしなければ!

あの女を真っ当な人間にしなくてはならない。

やってやる!俺だって男なんだ!

生徒会長なんだ!


クリスはとても真面目ないい子だが、ちょっとアホの子でもあった。

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