23. レトロモダン・プログレ6選【プログレ】WOBBLER/TUSMØRKE/GAMAほか

タイトルをご覧になって、レトロモダンとは何ぞや? と思われる方もいらっしゃるでしょう。ロイド眼鏡にカンカン帽、袴姿で大正琴を演奏……も間違いではありませんが、それだと該当する範囲があまりにも限定されてしまいます。


端的に申しますと、プログレッシヴ・ロック全盛期――具体的には1970年代前半――のサウンドを隈なく再現することに特化した、懐古趣味的な現代のバンドたちです。


まるで半世紀前からタイムスリップして来たかのような音、あるいは出で立ち。しかし間違いなく今に生きる彼らの姿をここにご紹介いたします。



★レトロモダン・プログレ6選【プログレ】


WOBBLER

RIKARD SJÖBLOM'S GUNGFLY

TUSMØRKE


GAMA

MERET

MOBIUS



前半はこの手の音楽の一大産地である北欧から3組をピックアップ。



◆WOBBLER


惜しげもなく浴びせられるメロトロンに目眩を覚えるも束の間、骨太なリッケンバッカーに土手っ腹をぶち抜かれ天に召される夢心地。70年代と現代とを力技で地続きにするビンテージサウンドはまさに本テーマの急先鋒に相応しい風格です。


◇まずはこの一枚

『Dwellers Of The Deep』(2020)

Jon Andersonさながらに世界観を染め上げるVo.が心憎し。一応最新作を挙げますが、スタンスは一貫しているので全作自信を持ってオススメできます。




◆RIKARD SJÖBLOM'S GUNGFLY


元BEARD FISH、現BIG BIG TRAINのRikard Sjöblomのソロプロジェクト。王道の英国風シンフォをベースにスウェーデンの先達から受け継いだエッセンスがたっぷり。洒落の利いた楽曲の端々には耳を惹く良メロが満載です。


◇まずはこの一枚

『Alone Together』(2020)

親しみの湧くVo.と絶妙なタッチのGt./Key.が絡み合う大曲・小曲いずれも郷愁を誘う味わいに満ちています。冒頭から泣きメロで迫り来る表題曲も秀逸。




◆TUSMØRKE


一聴して軽妙でエキセントリックな佇まいは時にSAMLA MAMMAS MANNAを思わせます。豊かな演奏力で表現される世界観は陽気で牧歌的だったり、かと思えば陰鬱で暗澹としていたり、振り幅の大きさも非常に魅力的です。


◇まずはこの一枚

『Bydyra』(2017)

ノルウェー語の響きに異国情緒をそそられる快作。他にも何枚か出ている児童向けミュージカルのサントラらしく、コミカルで優しいノリに癒やされます。



ほかにも前述WOBBLERのメンバー参加のCALIGONAUTやトラッド調のJORDSJØ、フロイド風のARABS IN ASPIC、Sax入りクリムゾン風GETSEMANEなど、北欧レトロ勢は層が厚く見所がいっぱいです。




後半はその他の地域から、いずれもマイナーながら高解像度かつ個性豊かな3組を厳選いたしました。



◆GAMA


日本のフォークや英欧サイケ/70sHRを丁寧に咀嚼・再構成した新解釈レトロプログレ。CRESSIDAやGRACIOUS、KESTRELなどの名前が次々と浮かぶ空気感の構築力が素晴らしい。溜めや間を大切にした細やかな曲作りも好感触。天晴です。


◇まずはこの一枚

『In The Land Of Gama』(2022)

冒頭から「今って令和ですよね?」と問いただしたくなること請け合い。弾き語りスタイルにJames Iha、アレンジにはSUGAR BABEみを感じたり。深い。




◆MERET


BUBUやPABLO EL ENTERRADORなどを生んだ知る人ぞ知るプログレ名産地アルゼンチンから新鋭の叙情派。情感豊かなギターとバイオリンのハーモニーはKANSASやPAVLOV'S DOG、はちみつぱいすら思い起こさせてくれます。


◇まずはこの一枚

『Ceremonias』(2022)

素朴なスペイン語Vo.といい、洗練され切らないB級感にはマニア心がくすぐられます。20分に迫る劇的なタイトルトラックは圧巻の出来。掘り出し物。




◆MOBIUS


UKプログレの伝統を踏襲しつつ、イタリアン勢をはじめとした古今東西のシンフォニックロックの精髄をも感じさせる正統派。ズレなく噛み合ったアンサンブルから生み出される哀愁と清涼感はANYONE'S DAUGHTER級です。


◇まずはこの一枚

『Make The Promise』(2021)

全編を覆う初期ELTON JOHNや後期PINK FLOYD的ポップ感が爽やかな逸品。ポンプロックを継承した程良いドラマ性も飽きさせない一因でしょう。




今回は以上となります。


枠を絞り込むのが過去最大級に大変な回でした。前半の流れのままメジャーなバンドに限定してもよかったのですが、やはり本稿としては隠れた良バンドにスポットを当てる意義も感じております。


後半組はとくにGAMAに注目です。あまりにも自然体なのでサラッと聴けてしまいますが、相当に〝濃い〟です。以前紹介の曇ヶ原にピンときたリスナーであれば、何かしら琴線に触れるものがあるはずです。


前半に関しては、今回取り上げられなかったバンドも、いずれ別のテーマで紹介できればと思っています。


次回は皆様ご存知あの国内バンドを『マッケンジー音楽室』的な切り口からお届けしようかと考えています。お楽しみに。




  *  *  *




公式音源をプレイリストにまとめました。


★レトロモダン・プログレ6選【プログレ】

https://www.youtube.com/watch?v=bpOQp9gCfQA&list=PL_guDDmuRSVUqSXKWN2MfwW9n4D5wuhsr


WOBBLERはアルバムに「Five Rooms」として収録されている曲です。

TUSMØRKEは曲の前後を寸劇で挟んだドラマ仕立てのMV。

MOBIUSは18分の長尺曲につき心の準備を。



以下はSpotifyのアルバムリンクです。



◆WOBBLER『Dwellers Of The Deep』(2020)

https://open.spotify.com/album/0aOupcoxV0EXjLfoHXqb2o?si=ZYiwhPMjTFeww2gFiiC_WA


◆RIKARD SJÖBLOM'S GUNGFLY『Aolne Together』(2020)

https://open.spotify.com/album/1DAy3Dfjh46bjgeebUhMEd?si=7735d2024a8e4005


◆TUSMØRKE『Bydyra』(2017)

https://open.spotify.com/album/3yPNqnZpygofTPbUqAfi7s?si=RVgLDPV9S6CeK9kE053g1Q


◆GAMA『In The Land Of Gama』(2022)

https://open.spotify.com/album/5j7DIewBu8pX2sRpMLRK9y?si=7f88c99b980242bb


◆MERET『Ceremonias』(2022)

https://open.spotify.com/album/4Cq3RdhV1kGXo5wmmUTo15?si=48d2ec629e684b57


◆MOBIUS『Make The Promise』(2021)

https://open.spotify.com/album/77z5V4oBMSTSEePQ5Ukb99?si=6aea7a4df1804c98

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