ステラ ー星が滅ぶまでー
※なまえを きめて ください
プロローグ
7月7日、ベガとアルタイルが煌々と瞬き、織姫と彦星が運命的な出会いをするその日、地球上の全ての人類は騒然としていた。
この日、地球上の全ての秩序は蜘蛛の子を散らすように消え去った。騒然とする町の音とは対照的に、穏やかなクラシックと共にある声がテレビにて放映されている。
「隕石が衝突するまで後24時間となりました。どうか地球のみなさま、最後の時を心安らかにお過ごしください」
普段いつもテレビをつければ見かけるような大人気アナウンサーが、いつもとは違うスーツを着て、厳粛な雰囲気でテレビの前の自分たちに語りかけている。
今となってはニュースは生放送がなじみ深くなったが、今日は違う。それはその映像が事前に撮影されたものだということだ。テレビに映るその人は、実際にはスタジオにいない。その映像は事前に録画されていて、最後の一日を知らせている。全く同じトーンの声で。全く同じクラシックと共に。何度も何度も。
数日前ならば非難されるべき職務怠慢だ。だが今なら道理の通った行動だということが分かる。世界が終わるその時まで、人は労働者になり得ない。人は労働に死ぬのではない。その人生に死ぬのだ。だから皆それぞれの家庭に戻り、「自分」として最後を過ごすのだろう。
それだからか、誰一人としてルールを守ろうとする人はいなかった。警察も消防も、規律を守る立場の人々も職務を放棄して、自らの人生に後悔のない終止符を打とうとしている。そこに職務上の立場などは介在し得ないのだ。今この瞬間、この地球上にルールなどあってないようなものだ。だからか、怒号や破壊音がそこらかしこから聞こえてきて、画面の中の人間が望む安らかな世界とは言えない騒然とした世界が聞こえていた。
後24時間で全ての人類が滅ぶ。
この絶対的で悲劇的な運命は、ある種人類から諦めを奪っていた。
そうだ。自分にはあの時諦めた夢があるではないか。あの時、どうせ出来ないとうち捨ててしまった夢が。あの時押さえた自分の野望が胸の内で息を吹き返す。静かでいつも通りだった心臓が激しく脈動をしだす。
脈動は自分を鼓舞し、今なら出来るのでは無いかと幻想を抱く。諦めるのを諦めようとしている。
そして激しく脈打つその胸はやがて大きな衝動となる。いつの間にか、その衝動は自分の体を突き動かしていた。
――世界が終わるまで、後24時間。
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