第19話 アイドルさんに噛み付かれました


「えっ、あっいや」

「私1人でもどうとでもなったと言っているんですのっ。いつまでもアホヅラ晒してないでください」


 俺が喋ろうとすると目の前の長坂さんは早口でまくし立てる。……なんか、面倒そうな人だ。


「余計なお世話でしたね。では」

「ちょっ」

「えっ?」


 これ以上この人と話すのは得策ではないと判断した俺は目的はもう達成したのでその場を離れようとするが、彼女は離れようとした俺の服を掴んで離してくれない。


「アナタ……私をお茶に誘ったりしませんの?」

「? いや、しないですが」


 俺は彼女の発言の意味が分からず首をかしげる。……どういうことだ?


「私ほどの美人を助けておいて誘わないんですの?」

「えっ? まぁ、友達も待たせてますし」


 自分で言うのかと思いながらも口には出さず早く去りたい俺は話を切ろうとする。


「ムカつきますね。何故、私に全力でアプローチしないんですの? 男性なら普通しますよね?」

「いや、純粋に興味がないというかなんというか」


 さっきからこの人は何を言っているのだろうか?


「興味がないわけないでしょう。私はとてつもなく美人ですよ」


 自分で言うんだパート2。


「まぁ、じゃあ……はい」


 うん、ヤバイ人だなオッケー。全力で逃げた方が良さそうだ。そして俺は逃げるべく後ろへと回転し、駆け出そう____。


「伊賀先輩! 大丈夫ですか」

「うわっ」


 として新井とぶつかりそうになり、足を止めた。……びっくりした。


「す、すみません。先輩があまりに遅かったので心配になって」

「いや、全然気にしてないから謝る必要はないぞ」


 まぁ、驚きはしたが待たせたことは事実なので非があるとするならば俺の方だ。


「っ!?」


 一瞬、金髪美人さんが新井を見て驚いたような顔をした気がしたが気のせいか?


「ま、まあいいですわ。そこの彼は私を誘いに来たようなのでアナタは帰ってもらえますか?」

「えっ? どういうことですか、先輩」

に受けるな」


 真顔で俺へと詰め寄ってくる新井に俺はそう返す。割とマジで危険人物だなこの人。


「ふーん、何故私になびかないかと思っていたら彼女さんがいらしたんですね」

「違うわっ」

 長坂さんにそう言われ、俺は反射的にツッコミを入れる。


「ふーん、違うんですの。にしても新井さんの方は大分その気のようですけどね。……アナタ名前は?」


 新井が登場してからか何故か俺に興味を示すようになった気がしなくもない長坂さんにそう問われる。この場合はどうするべきだろうか? なーんか嫌な感じがするんだよな。


「早くしてくださいなっ」


 俺が黙りこくっていると長坂さんが少し怒ったように言う。……こりゃ、言うまで離してくれそうにない雰囲気だ。新井もいるし強引に逃げ出すわけにもいかないし。


「伊賀 光太郎って言います」

「ふーん、普通ですね。もっとこうネギ山 ネギ太郎みたいな名前かと思ってました」


 いるわけねぇだろっ、そんな奴!


「まぁ、知っているとは思いますが私は長坂 可憐と言います。アナタとは同じ高校ですし」

「はぁ、まぁそうですね」


 余程、自分に自信を持っているのか知っていると思いますがと言ってきたな。容姿とかはいいから目立つしあまりお近づきにはなりたくない。


「では」

「だから待ちなさいと言っているんですのっ」

「せ、先輩の手をなに勝手に掴んでるんですかっ」


 そして俺が新井と共に去ろうとすると今度は俺の手を掴んできた。というか新井に見せつけるように掴まなかったか? 気のせいか?


「なんですか?」

「アナタ中々顔はいいですしデートくらいな

 らしてあげてもいいですわよ」

「デ、デート!?」

「結構です」


 新井がかなり焦ったように反応するが……普通に考えて受けるわけないだろ。


「というか手……離してもらっていいですか?」

「なっ!?」


 俺にこういった対応を取られるのは予想外だったのか酷く狼狽えた様子を見せる長坂さん。


「そういうことだよ、長坂さん。なにを狙ってるかは分からないけど、こうくんはキミになびくような子じゃないから諦めた方がいい」

「ツバッサ、アナタいたんですの?」

「その言い方やめてって言ったよね?」


 するとそこに翼が現れて長坂さんに牽制するような態度を取る。翼はやけに詳しいなと思ったが……知り合いだったのか。


「今日はこの辺で引くとしますわ。中々に面白い発見もありましたし、ね」


 そう言って俺の方を見る長坂さん。この人に目をつけられるのスゲェ嫌なんだけど。


「では」


 そして長坂さんは去っていってしまった。


「今日はどうする?」

「「解散で」」

「だよねぇ〜」


 そして、長坂さん遭遇により疲れた俺たちも各々帰ることに決めるのだった。


 *


 私こと長坂 可憐は自分の部屋へと帰ると息をつく。


「あぁ、まさか今日新井 瑞穂に会うことになるなんて」


 私は興奮する体をなんとか押さえる。そう、焦ってはいけない。アナタは私なんか知らないでしょうけど私は忘れない。

 私から全てを奪った。新井 瑞穂のことは。


「弱点も見つけましたしね」


 いずれ会ってどんな目に遭わせてやろうかと考えていましたが今日の新井の様子を見て私はなにをするか決めた。まぁ、もう実は新井への攻撃は始めているのだけど楽しみが増えたわね。


「伊賀 光太郎……彼を取られた時アナタはどんな顔を見せてくれるしらね」


 そう、今日分かったこと、新井は伊賀 光太郎のことが好きであるということ。

 これを利用しない手はないだろう。




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 今日はあと1話更新します。良かったら星や応援お願いします。


 次回「伊賀ハーレムってなんですか?」


 では!



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