第五話城の大浴場、イサミとケイネス二人
かくして勇者イサミと王女アステリア・ハイデリオスとの結婚が決まった。
「いや、マジ意味わかんねえ」
城の大浴場の湯にて思わずイサミは呟いた。騎士学校の寮の大浴場は他の生徒と使うものでありこうしてケイネスと二人だけというのはなかった。そういう意味では、かなりの違和感だ。これだけでもありえない状況である。
勇者を名乗ったのはいい、元よりそうなりたかったのだから。だがいきなり王女と結婚というと急な話でこう呟くのも無理はなかった。
「それはこっちの台詞だよ!勇者名乗ったからて伝説にある通り王女様と結婚とかむちゃくちゃじゃないか!」
ケイネスの混乱はより大きくイサミに叫ぶ。元より彼は勇者など名乗っていないしイサミについて行っただけだ。なのにイサミ同様、城の客として迎えられるとは思ってもいなかったのだ。
騎士になろうと来たにも関わらずこの立ち位置はあまりに奇妙で彼にとって違和感だ。
それゆえに風呂にいるにも関わらず顔色はあまりよくない。
「まあうん、そうだね。棚からぼたもち?なんだこれ、クッキーか」
イサミは口にでたことわざに違和感が出た。まるで異界の言葉のようだ。
「まあ、思ってない幸運というのは間違いないか。安定した地位に後々付けるというのはいいかも」
ケイネスは顎に手を当てる。
「お前なあ、そういうのはあれだぜ。こういう立場になってから言うのはあれだがなんつうか結果を伴ってから高い地位につくのが定石なんだよ。そういう喜び方はなんか変つうか…………」
今度はイサミが声を荒らげる番だった。
「ふっ、馬鹿っぽく見えて真面目だね君は。まあ、なるようになるか」
ケイネスはささやかに笑う。よくわからないままにこうなったが状況を受け入れることにした。
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