第三話非力な勇者未満の敗北



「やい、やいやいやいやい!てめえみたいなクソ野郎はこの勇者イサミ・ユーディラド様が相手だ!」




いわゆるフランケンシュタインとも言える怪物にイサミは声を震わせながら宣言した。




「ガーハッハッハッハ!威勢だけはいいな、勇者か。だがその震えた脚でなにが出来る?」




イサミの様子を見てフランケンシュタインが派手に嘲笑った。




図星だ。だがイサミはフランケンシュタインの後ろにいる女王と王女が見えた。女王が王女を守ろうと気丈な顔をしているがその腕は震えている。王女本人も顔面蒼白で今にも死にそうだ。




歯を食いしばり脚の震えを止める。




「うっせえ、今に見てろぉ!」




イサミは咆哮と共に右回りに走りフランケンシュタインの後ろ即ち女王と王女を守るように立つ。そのまま止まらずフランケンシュタインに剣を振るった。




だがフランケンシュタインが反転し腕のにベルトにガッ、と鈍い音共に当たった。




「ぎぎぎ、だぁっ!」




イサミは歯を食いしばりフランケンシュタインを押し出す。




だが違和感があった。イサミはまるで相手の方が自分で下がったように感じたのだ。




「その勇気だけは認めてやろう。俺様は魔王軍幹部、フランデン。お前のことはいずれ倒してやろう」




そう言ってフランデンは背後を向いて歩いていく。




「え、あ、逃げるの?」




イサミは呆気に取られてしまった。もはやか細い問いしか出てこない。




「弱い貴様を倒しても面白くない、相応しい強さを得てから倒してやると言っている」




その返答にイサミは声がでなかった。目を横に動かし口を歪め拳を固めて怒りと歯がゆさに揺れる。




「上等だこらぁ!ちょっと待ってろ!勇者に相応しいなんかすげえの手にしてやるからなぁ!」




震えた指をフランデンに突きつけるので精一杯だった。




「フフッ、待っているぞ」




フランデンは一瞬振り返りワイバーンと共に去っていく。口笛が鳴りミノタウロス達もワイバーンに乗って従っていく。




イサミは緊張が一気に解け膝をついてしまう。その姿から王女は目が離せなかった。非力で啖呵を切るしかできなかった弱い勇者を。

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