第34話 トロピカンランドへ行くpart3

「うわ……すごい怖いね」

「あはは!面白そう!」


超戦慄迷宮は、古い学校をイメージしたお化け屋敷だ。

ガチでめっちゃくちゃ怖いと有名。

しかも、最近リニューアルして、さらに怖くなったらしい。


「パパ……本当に入るの?」


入口で、未来は不安そうな顔で言った。

ボロボロの木造の校舎で、ツタが壁に巻きついている。

中から何かのうめき声が聞こえる。

……入る前からすでにゾクゾクする。


「ママ……怖いなら、外で待ってて。愛花とパパで行くから」

「こ、怖いわけないでしょ!愛花こそ、おしっこちびっちゃうんじゃないの?」

「ぶー!ちびるのはママだよ!」 

「な、なんですって!」


ポカポカとお互いに叩き合う未来と愛花ちゃん。


「はあ……とにかく入るぞ」


無事に出てこれるかな……


◇◇◇


俺たちは超戦慄迷宮に入った。

中は薄暗くて寒い。

いかにも何か出て来そうな空気だ。


「パパ……近くにいて」


未来が俺の手を握った。


「大丈夫だよ。ただのお化け屋敷だから」

「うん。わかってるけど、こういうの苦手で……」

「未来は俺が守るから」

「……ありがとう」


俺は未来の手を、ぎゅっと握り返した。

……本当に危ない状況ってわけじゃない。

これはお化け屋敷。アトラクションだ。

でも、怖がる未来を見ると、俺は男として守らないといけないと思った。


超戦慄迷宮では、1階から3階に上がって、その後また3階から1階へ降りて、反対側の出口を目指す。


俺たちが下駄箱を通り過ぎると……


「ぎょえええええええええああああああああああ!」


包帯を巻いたミイラ男が出てきた。


「きゃああああああああああああああああ!」


未来は叫びながら、俺に抱きついた。

ぎゅうっと、俺に胸にしがみつく。

未来の柔らかいものが、たゆんっと俺に押し当たる。


「ミイラさんだぁ!やっつけちゃえ!」


愛花ちゃんがミイラ男に突撃する。 


「愛花ちゃん!ダメだ!」 


俺は叫んだが、


ゴンっ!


ミイラ男の股間に、愛花ちゃんの頭突きがクリティカルヒット。


「ぎゃあああああああああああああああ!」


会心の一撃だったようで、ミイラ男は股間を押さえながら床にのたうち回った。


◇◇◇


「本当にすみませんでした!」


俺と未来はミイラ男に謝った。


「愛花がやっつけたのにー」

「こら!ちゃんとミイラさんに謝りなさい!」


さすがの俺も、ちょっとキツめに叱る。


「はぁーい……ミイラさん、ごめんなさい」


不満そうに、愛花ちゃんはペコっと頭を下げる。


「はは……大丈夫ですよ。子どもがしたことですから」


ミイラ男は笑って許してくれた。

優しいミイラ男……じゃなくて、スタッフさんだ。


「そーだ!そーだ!子どもがしたことだもん!」

「こら!愛花!お尻ペンペンするよ!」


未来が愛花ちゃんを叱る。


「やだあー!パパ助けて!」


愛花ちゃんが俺に抱きついた。


「ははは。元気いっぱいですね」

「……申し訳ありません」

「仲良くていいですね。あの、そろそろ次のお客さんが来ますので……」

「あ、すみません」


迷惑だから、早く行けっことか。

まあ、そうだよな……


俺は未来と愛花ちゃんに抱きつかれながら、先に進むことにした。



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