第30話 依頼

ベルside


 彼の言葉が忘れられなかった。

 

 まるで鈍器で頭を殴られたかのような感覚が続いて、結局あまり眠れなかった。


 そして、

 

 今日もこの前と似たような夢を見た。


 メイド服を着たハーフエルフ、レイナ王女殿下、エリカがカールに仕えている場面。


 そして、自分の幼馴染であるルナが3人の姿を見て、興味深げにカールのところへ行こうとする場面。


 悲しみながらルナの手を引っ張る自分。


 そして


「お前の幼馴染だけを気にしろ」


 3人を侍らせながら上から目線で自分にまた言ってくるカール。


「……」


 目が覚めても、この気色悪い夢は鮮明に思い出す事ができる。


「ちくしょ……」


 今の自分じゃ、カールには絶対敵わない。


 彼と親睦を深める計画も結局玉砕。


 だとしたら、自分にできることは何か。

 

 それは決まっている。


「一人で頑張るしかないか……っ!」


 ベルが急に頭痛でもするかのように、頭を抑えた。


 そして、見えてくる記憶の片鱗。


 これは実際あったかもしれないしなかったかもしれない、いわば幻。


「ベルさん〜」

「ベルくん」

「ベル、貴様!」

「おい、ベル」


 頭の中で王女殿下と金髪ドリルの姉カトリナ、剣の扱いが上手いナオミ、ノルン先生がベルを呼んでいた。


 彼女らはもともとベルのヒロインである。


 本来、この4人とベルが関わることで、未熟だった主人公ベルがだんだん強くなり、諸悪の根源だったカールを殺して、自分は出世する。


 だけど、そのストーリーはカールによって潰されたため、ベルにはきゃっきゃうははな展開は訪れない。

 

 ベッドから降りて、鏡を見つめてくるベル。


 目元は腫れ上がっている。


 やっぱり、自分はカールより不細工で、体付きだってカールの足元にも及ばない。


「強くなってやる……強くなって、ルナに結婚を申し込むから……」


 そう言って、決心するも、


『お前がいつまでもこんなだったら、間違いなくルナはお前から離れていくんだろうな。お前とルナはとてもじゃないが釣り合わない。だから、人に頼むようなことはやめて、強くなる努力をしろ。お前の国を強くしたいだろ?そんな馬鹿馬鹿しい頼みをしてくる今のお前にそんなことできるのか?笑わせるな!』


 昨日のカールの放った言葉は相変わらず頭の中でこだまする。


 また涙が流れてしまった。


 マジック★トラップでは、ルナを寝取るキモデブのカールを見た瞬間、涙を初めて流すが、ベルは今泣いている。


「絶対、強くなってやろう!幻なんか所詮幻だ。俺とは関係ねー。俺は、あいつのいう通り、ルナだけを気にすればいいんだ……」

 

 と、つぶやいて、彼は出かける支度をする。


 そして、学生寮の出口に立って自分を待ってくれたルナに挨拶する。


「ルナ、おはよう」

「あ、ベル!おはよう!って、目どうしたの?」

「俺の目?」

「なんかクマも出来たし、全体的に晴れているけど」

「別に、大したことはないよ。夜遅くまで勉強してて」


X X X


カールside


 今日はノルン先生がパーティーがこなす依頼について説明をしてくれている。


「さて、パーティーが結成されてまだ日が浅いが、早速依頼を出したいと思う」


 実に有能なOLっぽいノルン先生がメガネを光らせながらいう。

 

 学生たちは依頼という単語を聞いて騒然としている。


 それもそのはず。


 パーティースコアを稼げる唯一の手段がオルビス魔法学園が出す依頼だからである。


「オルビス魔法学園の裏山にダンジョンができたそうだ。そこからゴブリンたちが現れて、山に住む動物たちに被害を与えている。だから、ボスゴブリンを退治して、ダンジョンを攻略してほしい。ダンジョンレベルは15だ」


 15か。

 

 割と高い方ではある。


 この世の中にはダンジョンが存在しており、レベルまでついている。


 難関試験をクリアすれば、ダンジョン鑑定士という専門職になれて、その人が法律や知識や経験に基づいてレベルを与える。


 もちろん、レベル不明のダンジョンのほうが数自体は圧倒的に多い。

 

 つまり、俺たちは安全が確保されたダンジョンに挑もうとしているのだ。


 レベル15


 つまり、ゴブリンが出現するダンジョンを攻略するためには、パーティーメンバーのレベルが15以上じゃないと結構キツいと言えよう。


 レベル15未満の奴らは雑魚ゴブリンを倒してレベルを15に上げる必要があるだろう。


 だが、俺たちは安心だ。


 すでにエリカのレベルは20。


 俺だってレベルは低いが、集中、理解、憑依でサポートができる。

  

 レイナ王女殿下とルナも立派な攻撃スキルと防御スキルを有している。

 


 つまり、俺や他のパーティーメンバーのレベルが15未満だとしても、やりようによっては、ボスを倒せる。


 俺が頭の中で作戦などを考えると、

 

 ベルが俺に熱のこもった視線をおくってきた。


 まるで、絶対勝ってやろうと言わんばかりに、握り拳を作って、俺を睨んでいやがる。

 


 はあ、



 本当に面倒臭い。







追記


 海外旅行に来てます(ベトナム)。


 なので、文字数は一日2000字くらいにします。


 ご了承くださいませ。


 旅先でも熱烈執筆中です、


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