第22話 スカウト【side.セーレ】

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 前期末試験の総合評価が掲示板に貼り出された。総合1位は納得の殿下で、ドロテさんも同じ得点で一位タイだ。


 彼女は実技試験でもかなりの実力を発揮して、対戦相手であった殿下を体術のみでほぼ互角の戦いを演じてみせた。殿下の方も得意の細剣と、身体強化の部位を手足に特化させるという離れ業が評価され、実技試験で点を伸ばしたらしい。


「セーレは572点ですか。魔法での加点が無い点を考えたら、十分驚異的な結果ですね」


「カロリーヌさんもね」


「あ、あはは……」


 ちなみにカロリーヌさんは、56点。筆記は463点だったのだから、実技試験で100点満点中102点を獲得したことになる。そのおかげでカロリーヌさんは学年中4位という大躍進を見せていた。


 この結果に異議を唱える人間はいないだろう。彼女も試験中に魔法は一切使わなかったものの、それを補って余りある圧倒的な剣術と戦闘センスは、教員も含めた全員が認めるところなのだから。


 ……ああ、来た来た。甘い蜜に惹かれた蟻どもがわらわらと。


「カロリーヌ嬢、今日の昼は空いているだろうか?是非ランチを共にしたい」


「カロリーヌ嬢、放課後のお茶会にお呼びしてもよろしいだろうか」


「オフレ子爵令嬢、手合せを願いたい。夕刻に、校庭でどうだ」


 昨日の追試験とあわせて少々派手にやり過ぎたらしく、掲示された結果と相まってカロリーヌさんは注目の的となってしまっていた。……流石に3人目はちょっと珍しいタイプだけど。


 反面、彼女に嫌がらせをしようとしていた女子たちは完全にターゲットから外したようで、目を合わせようともしない。


 まあ、弱そうだった子爵令嬢が学園最強レベルだったのだから、距離を離そうとするのも当然だろう。最初から馬鹿な真似をしなければ、窮屈な思いをせずに済んだのにね。


「え、て、手合せ?えーっと……」


「申し訳ありませんけれど、どれも先約がありますの。手合せも間に合ってますわ。さ、行きましょう、カロリーヌさん」


「あ、はい!」


 さて、前期末の結果は良好。上位4名には入れた訳だし、ひとまず公爵令嬢としてのメンツは保てたわ。この調子なら、問題なく学園生活を送れそうね。


 そんな楽観的な思いでカロリーヌさんと帰りにお茶でもしようかと思っていたら、拡声魔法による校内放送が流れた。


【生徒会よりお知らせです。一年生の筆記試験優秀者2名と、実技試験優秀者2名は、生徒会室までお越しください。繰り返します。一年生の―】


「……これって」


「呼び出し、ですね……?」


「……あ」


 そうだ、忘れていた。この学園の成績優秀者は――。




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