第三夜 『 知られざる禁足地 』

 

 この怪談を執筆するにあたって、気になることがあり、ネットで調べてみた。

 

 ――結果――。

 

 衝撃の事実が見つかったので、物語の最後にその記事を記しておきたいと思う。

 ここは実在する場所なので、もし、その近くに行くことがあったら……気を付けて頂きたい。




 これは11年前、亡くなった私の叔父さんから聞いた話である。

 当時、叔父さんは一人キャンプにハマっていた。

 週末、安いキャンプ場を見つけては、バイクにキャンプ道具一式を積んで、ふらっと旅に出る。

 そんな自由な趣味人であった。

 

 その日は首都圏から離れた、茨城県の方に一泊二日のキャンプをすることにした。

 早朝に自宅を出て、午後三時には目的地に着く予定……だったが、高速道路の渋滞で、だいぶ遅れていた。


 山沿いの道をバイクで進むが、ナビは電波圏外の表示。

 仕方ないので途中停車。地図を確認しながら走っていたのだった。


 「やばいなぁ、もうすぐ日が沈む。」


 辺りは外灯が少ない山道。

 焦る気持ちは、走るバイクのスピードメーターに現れていた。

 

 

 そんなとき。

 

 

 ――突如、視界にが映る。

 

 

 ――危ない!!!!

 

 

 咄嗟に急ブレーキを掛ける。

 後輪が滑り、ハンドル操作が効かなくなる――。

 

 

 ――転倒する!!!!

 

 

 と、思った――瞬間、バイクはピタッと止まってくれたのだった。


 「びっくりした……。」

 

 危うく、もう少しでガードレールに衝突する寸前。


 全身の血が逆流するような体験に身が竦んでしまった。

 一度、冷静になるため、バイクを停車。

 何が起きたのか、を確認することにした。


 ――すると。


 その大木は道路の両車線、ちょうど真ん中に立っていた。

 緩やかなカーブの進行方向を塞ぐように生えているのだ。


 ……なぜ?こんなところに……。


 それは何年もの歳月、そこに鎮座していたと云われても疑う者がいないほどの、太い幹。


 その風貌は……。

 まるで、この先を通る者を阻むかのように聳え立っていた。


 …… 妙だな。


 普通、道路を作る時、邪魔になって切ってしまうだろうに不思議だ。

 しかも……道路の造りはその大木を避けるように曲がっている。


 よく見ると、しめ縄が巻いてある。


 御神木……?

 なるほど、だから残しておいたのか……。


 そうこうしているうちに辺りは、夕闇に包まれていった。


 ……まずい……。

 

 急いで目的地に向かったのだと云う。


 しかし……。


 「……おかしいな……キャンプ場が見つからない」


 辺りは

 外灯は一つもなく。

 


 ……もう、これは……しょうがない……。

 

 焦った叔父はその辺の茂みで野営することにしたのだった。

 

 家から持ってきたランプの灯りを頼りに三角のテントを手際よく設営し、焚き火台を設置。

 早速、火起こしをする。

 その日は幸運なことに

 そして、来る途中のスーパーマーケットで買った肉、野菜を出し調理を始めた。

 

 いつもどおりの静かな時間。

 暗闇に燃え上がる火柱。

 香ばしく焼き上がた肉の香り。

 焼き上がりを楽しみに待ちながら缶ビールをプシュ!と開ける。


 うん、上手いー!


 孤独を忘れさせてくれる、至福の一献。


 そして……そのひとときに浸る。


 「サァァァァーーー」


 川の音はずっと木霊している。


 夕食を済まし……。


 その後も時間はゆっくりと流れていく。


 「サァァァァーーー」


 都会とは違った満天の夜空が輝く。


 アウトドアチェアにもたれ、満腹の余韻に浸っていた、時――それは起こった。


 「ゴオオォォォォォ――」


 うん……?川の音が……!?


 突然、川の音が激しくなる。

 前日に雨でも降っていたのだろうか……。

 

 土砂石流。

 それは大雨や長雨などにより、山や川底の石などが大量に谷間や河川に流れ込み、土砂や岩石が粥状に流れ落ちる現象。


 ふと、……その音がおかしいことに気付く。

 

 「ゴオオォォォォォ――」という音の中に……。


 「ア”ァァァーーーーー」

 

 呻きと叫び声。


 その声達は徐々にはっきりと聞こえてきて。


 「ア”ァァァァァァーー」

 

 ――老若男女の怒号に聞こえる――。


 「はっはは、……まさか……な……?」


 酔いが回って来たんだろう……。


 と、その日は早めにテントの中で寝ることにした。

 

 

 が、……。


 バン!


 その音で目を覚ます。


 バン!


 なんだ!?


 テント内のデジタル時計。

 表示は深夜三時十二分。


 バン!


 ……えっ !?


 バン!


 それは、……テントを叩く――衝撃音。

 

 バン!


 ……おかしい……風、一つないのに……まさか野犬か……!?


 バン!


 いや、違う!


 バン!バン!


 この音は……。


 バン!バン!バン!


 テントの……。


 バン!バン!バン!バン!


 そこらじゅうで――聞こえる!!!?

 


 バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!


 

 漏れそうになる悲鳴を必死に抑え、叔父は寝袋を頭まで被る。

 耳も塞いでガタガタと震える身体を丸めながら一夜をそのまま過ごしたと云う。

 

 

 明け方。

 

 ようやく、テントを叩く音が止まった。

 

 やがて……テントの隙間から光が漏れてくる――それは……まさしく救いの光だった。

 

 「……助かった……」

 

 叔父は安堵しながらも恐る恐る外に出る。

 


 が、……。

 


 ……おいおい……噓……だろ……。

 


 その時、叔父の目に飛び込んできたのは……。

 


 四方八方、囲まれた山肌。

 


 その半分以上を埋め尽くすほどの……。



 


 墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓、墓。



 


 そこは……であったと云う。












 この物語を執筆際、あるキーワードが気になったのでネットで検索をかけてみました。


 『茨城県』 『御神木』 『心霊』

 

 すると、あるサイトがヒットしたので、記事の内容を抜粋して紹介させて頂きます。

 

 

 茨城県最強危険心霊スポット★行ってはいけない10選 引用。


 茨城の心霊スポット②伐採できなかった神木、一本杉。


 日立市にある、県道36号線に不自然な形で現れる一本杉です。

 道の邪魔になるからと工事関係者が切ろうとしたところ、次々と不自然な事故が起こり、この木を切るのを断念したという噂が残っています。


 今では神木として祀られています。夜にこの道路を走ると道にいきなり神木が現れるのでびっくりするかもしれません。

 くれぐれも事故には気をつけて下さい。

 

 https://bjtp.tokyo/ibaraki-sinrei-spot/


 

 

 Wikipedia 引用。

 

 一本杉と言う名の通り、一本の杉であり、県道36号線の道の真ん中の位置に生えている。

 樹齢は約450年で所有者は日立鉱山株式会社である。「昔は三本杉であった」または「二本杉であった」とされており、一本になった理由については、「工事会社によって切られた」や「暴風雨によって倒れた」などと言われているが詳細は不明。

 「本山の一本杉」の名称で日立市指定文化財天然記念物として1974年(昭和49年)6月27日に日立市教育委員会から指定され、神木としても奉られている。


「杉を切った、もしくは切ろうとした人に怪我・病・事故で死んでしまったり等、災いが起こる」とされる。

 前述した、「元は二本杉であった」話では元々杉が2本あり、工事会社の人が切ろうとした、もしくは切ったところ、原因不明の病気または事故により死亡したというが――真偽は不明。

 また一本杉付近では昔よく事故が起こっていたが、前述したように神木として奉ったところ、事故は減少したと言う。


 

 更にyoutube 引用。


 霊能者の証言。

 「ここの一本杉に集まる一般の霊ではなく、自然霊。山を護る神とかの類。」

 「一本杉の近くを。たくさん集まっていて霊の集合体になっている。」


 youtuberの証言。

 「地元民はいまだに恐れている。行きたくない。見たくない。触りたくない」

 「近くに鳥居があってそこのほうがヤバい。その鳥居のそばを、鳥居をくぐり抜けた者を呪い殺す」



 

 なお、叔父が一泊した場所は確認出来ませんでした。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る