勇者と魔王がいる生徒会!?~貴様らの嘆願、我々が解決してやろう~

東美桜

議事録1『学生食堂の混雑について(あるいは勇者のお財布事情)』

会長「はい、という訳で展政てんせい高校生徒会定例会を始めたいと思います。よろしくおねがいしまーす。今日も生徒から要望が届いてるから、それについて議論しようか。今日の議題は『学生食堂の混雑を何とかしてほしい』だね」


魔王「ふん、今日も今日とて下らぬ要望だな。そんなものは立ちはだかる者を全て捻じ伏せ、望むモノを手中に収めれば済む話だろう」


会長「思考回路が蛮族のそれなんよ!! もっと平和的な解決策を探そう!?」


魔王「力のないモノに生きる資格なし。生きる事は戦いだ。この世界の連中は考え方がおめでたすぎるな。そうは思わんか、元勇者よ」


勇者『飛び出て轢かれてジャジャジャジャーン!! 元勇者だぜ!! にしても元魔王は思考が野蛮すぎるだろ。中には、俺みたいに金はあるけど友達から乞食ってるやつもいる訳だし』


会長「なんで!? シンプルになんで!? 金あるなら自分の金を使えい!!」


魔王「ほぅ? 勇者は我の考えを否定すると? 我を力で倒し、平和を勝ち取ったお前がそれを言うのか?」


勇者『自分の金は、自動で現地通貨に変わるような便利なもんじゃ無いからあっても使えないんだよね。ちなみに元魔王。あんた復活してるから結局平和勝ち取れてないんすわ。てな訳でその理論は成り立たんよ』


会長「いや両替されてないんかいっ! そして急な修羅場をやめなさい!!」


勇者『やめろと言われてやめられる修羅場だと思うか!!』


魔王「少なくとも向こうの世界は救われたはずであろう? そして、我はこの世界ではまだ何もしとらんが? お前が望むなら、このぬるま湯のような平和を終わらせてやっても良いがな。そして、矮小なる人間よ。生徒会長などという貧相な肩書では我らは止められんよ」


勇者『冷や水ぶっかけてフリーズドライさせようぜ!! 生徒会長!!』


会長「バイオレンスな解決策をやめい!! そんなことより食堂混雑問題の解決策を考えい!! ……勇者はどう思う?」


勇者『うーん……とりあえず座りづらいイスに変えてちょっと不衛生感出してみたら? それか立ち食いスタイル』


会長「却下却下ァ! そんなことしたら客が減りまくって食堂潰れるわ! 加減を考えろ加減を! そして立ち食いが許されるのは駅のホームの蕎麦屋だけだぞ!」


勇者『回転効率の考えを導入すると良くはなると思ったんだけどなー』


会長「割とどこぞのランランルーの発想だよねそれ!?」


魔王「あの不気味な道化師に習って、教室へのテイクアウトでもしてみてはどうだ? 麺類はともかく、カレーなどなら使い捨て容器で提供する事はできよう」


会長「想像以上にマトモな回答っ!! 確かにテイクアウトできれば混雑は緩和されそうだね。購買でも事足りるとも一瞬思ったけど、あそこと食堂は一応メニューの棲み分けはされてるし……割とアリかも」


魔王「まあそれでも料理提供待ちの列は解消されんだろうから、別で策を講じる必要はあるだろうな」


会長「あ~、それもそうだね。どうしたものか……」


魔王「提供するメニューを絞ってみてはどうだ? 日替わりランチのみで三種類程度にするとか」


勇者『あるいはドローンで配達してみる?』


会長「ふむふむ、メニュー絞るのはアリ……かもだけど、それはそれでテイクアウトありのメニューの列がすんごいことになりそうかも。

 そしてドローンは却下! 廊下飛んだら危ないやろがい! 身長190㎝くらいの生徒の頭にぶつかったらどうすんねん!!」


勇者『飛ばないドローンもドローンだわ!!』(勘違いヤロウ)


会長「飛ばねえドローンはただの鉄塊またはプラ塊じゃ!!」


魔王「やはり飛ばすなら人間の首だな。剣でスパっとやった時の爽快感といったら――」


会長「すとぉっぷ!! 会長の名においてスプラッタ案件禁止令を出すぞ!!」


魔王「禁止令だと? 我を縛る事は何人たりとできん! それができるのはそこの勇者くらいのものだ」


勇者『ほらね』(魔法で捕縛する)


魔王「ぬるいわ! 今更この程度の魔法は効かん!」


勇者『安心しろ魔王。捕縛魔法と言ったが、正確に呪いだ。いくら剥がしてもしつこいくらいに捕まえるぞ?』


魔王「ふん、相変わらず性格の悪い男だ。これが勇者だというのだから、世も末だな」


会長「あのぉ……。バチバチしてるとこ悪いけど、とりあえず、生徒会室で戦わんといて? な?」


魔王「……ふん、今回はお前の顔を立ててやろう。まだこの世界の娯楽を堪能しきっていない事だし、騒ぎを起こすつもりはない」


勇者『戦ってるって訳じゃないし、俺からしたら○Mプレイって感じなんだけど』


会長「魔王えらい! 勇者えろい!」


魔王「お前となぞ、死んでも御免だ」


勇者『俺もやだわ!!』


会長「ヤなら言い出すなよ!」


勇者『ノリだよノリ(笑)』


会長「草」


魔王「そこの性悪勇者に他の案はないのか?」


勇者『性悪勇者とはなんだ!! いい言葉じゃねぇか!! それは置いといても、やっぱり時間制が一番いいんじゃね?』


会長「あー、〇年生〇分から〇分まで、みたいな?」


勇者『そうそう。んで、日によってどっかの学年が5分で食えって話になる』


会長「鬼畜!! 魔王より鬼畜!! あなた本当に勇者!?」


勇者『あ。俺Tactical Foolって言います。HK417にエクスカリバー着剣した奴持ってこればいいですか?』


魔王「またそのなんちゃって神器か。この世界で所持は許されるのか?」


勇者『大丈夫だ。問題ない』


会長「銃刀法バリバリ違反ですね。110番☆」


魔王「こいつが警察程度に止められるとは思えんがな。良くも悪くも、我と同程度の実力を持つ人間だぞ」


勇者『やだなぁ…… この神器がなきゃ魔王には敵わねぇよ。それ以外の魔法とか肉体ダメージ出るしでかいし』


魔王「ということだ。即時没収する事を推奨する」


会長「んー。着剣カリバー没収してもいいけど、それなら魔王の力も没収しないと不公平かなあ……」


勇者『安心して。まだ予備あるから』


魔王「そもそも学校の校則に反しているだろう。学業に必要のない不要物の持ち込みだ。教師に言えば没収は間違いあるまい?」


勇者『それ言ったら俺の力はもちろん魔王の魔力もだろう』


魔王「我の魔力はモノではないからな」


会長「STOP。あのぉ、勇者さん。着剣カリバー学校に持ってきてんの?」


勇者『魔法で俺らの出てきた次元から取り出してるだけだから、持ってきてるという定義は間違いだがな』


会長「なにこの超常存在ども。これもしかして、この学校の頂上にいるのは私だってわからせなきゃダメなやつ?」


魔王「ほう、実力行使か? 面白い! この世界の人間の力みせてもらおう」


勇者『良いねぇ!! ほれ、魔王。着剣済みだ。要らねぇか』


魔王「武器を持たぬ相手にそのようなモノを使うわけにいくまい?小細工なしのステゴロと洒落込もうじゃないか」


勇者『おっけ。さっきの捕縛の呪いで魔力だいぶ使って疲れてるから魔王に任せるわ』


魔王「それはさっさと解け」


会長「まだ解いてなかったんかい!」


勇者『あ。わりぃ』


会長「解いちゃったよこの人…… まぁ、ガチ喧嘩は明日の放課後に校舎裏ででもやろうね」


勇者『よくヤンチーがたむろってるし成敗がてら行ってくるか』


魔王「この学校どころか付近一帯が消し飛ぶがよいのだな?」


会長「やっぱやめよう!?」


勇者『大丈夫。俺は実弾しか撃つ気ないから周辺は吹き飛ばんよ。まぁ肉片は吹き飛びまくりだけど』


会長「喧嘩売ったことが間違いだった」


勇者『ちぇっ。つまんねぇの。いっぱい着剣済み準備してたのに』


魔王「量産するな!」


勇者『あー。ありがとうございます。こんなんなんぼあっても困りませんからねー』


魔王「我は困る」


会長「私も困る」


勇者『俺も困る』


会長「勇者は何で困ってるんだよ」


魔王「置き場所では?」


勇者『置き場所もだし、銃砲火器税が高い。あと処理費用も』


会長「金銭的問題かいっ! ってかちゃんと税金払ってるの偉いな!?」


魔王「……おいまて貴様!まさかとは思うが、我が城にあった財宝を換金して生活費に充てていたりはしないだろうな!?」


勇者『安心しろ。国の出費の補填に使った』


会長「それ安心できるの? ……ってか、むしろそのお金で購買の混雑問題解決できな……さそうだね。気軽に両替できるシロモノでもないって言ってたし」


勇者『為替レートとか存在するわけも無いし、固定相場にするととんでもないことになりかねないし』


魔王「お前の方が余程悪ではないか」


勇者『そうか?』


魔王「人の財産を盗んで使い込んでるではないか。盗人と何が違う?」


勇者『なんも違わん。言ってしまえば人類みな盗人みたいなもんだし、この件に関しては向こうの世界に公正な判断が出来る奴は居ない上、証拠も証人も居ないから悪と言い切れはしないだろうがな』


会長「抜け道ェ」


魔王「この言い草がすでに善からほど遠いと思うんだが」


勇者『善悪を判断できる第三者が居ないんじゃあ善悪なんてもんあるわけないぜ!!ヒャッハー!!!!』


会長「この生徒会には私がいます。というわけで度が過ぎた暴虐を行ったら見逃しません。それはそれとして過去のことは知らん」


勇者『ワロッツァー』


魔王「魔王たる我に道理を説かせる勇者とは一体……」


会長「普通の勇者じゃないんだろうね。普通じゃないからこそ魔王をここまで追い詰められるんだけど。でもって勇者! 笑い事じゃないわ!! ここで何かやらかしたら叱りますからね! 罰則はケツバットかタライ落としか選ばせてしんぜよう!!」


勇者『タライバッティングとか楽しそうじゃない?』


魔王「どらでも叩いてろ」


会長「罰になってねぇ!! ……ってか本題なんだっけ?」


勇者『なんだっけ?』


魔王「我もどうでもよくなってきた」


会長「あーもう! これだから毎回会議が進まないんだー! これだから一般生徒に『生徒会には異世界への門があるから近寄るな』って言われるんだー!!」


勇者『間違ってねぇじゃん』


魔王「まあ、この議題についてはこのあたりで良かろう。もう時間も遅い」


会長「せやな……もう完全下校時間近づいてるし。そんじゃあ解散! ……結局何も解決してねえじゃねえか!!」


勇者『おつかれっした〜』


魔王「よし、勇者よ。帰りにゲーセンとやらによっていこうではないか。昨日のリベンジをさせてもらう」


勇者『えー。やだよ。クレーンゲームの筐体揺すったのお前なのに巻き添い食らって俺まで怒られたんだぜ』


魔王「機械を破壊しなかっただけマシであろう」


会長「何やってんのそなたら!?」


勇者『筐体破壊してたら損害賠償もんだからな。巻き添い食らうのだけはゴメンだ!!』


魔王「遊んでおるだけだが」


会長「生徒会の構成員として自覚ある振る舞いをしなさい! ゲーセンの人に迷惑をかけるなかれ!!」


魔王「仕方あるまい」


勇者『俺は止めたからな!? あとついてかねぇからな!?』


会長「連帯責任って言葉知ってる?」


魔王「今日は大人しく帰るとしよう。ではまた明日に」


勇者『じゃあ俺はその連隊から離れるよ。とにかくさようならだな。また今度〜』


会長「だね。そんじゃまたあしたー。お疲れさまでしたー」

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