C×C 〜クラウン×クラウン〜

九月 生

神隠しと変死体

 最近はよくニュースを見るようになった。


 中学時代は一切見なかったニュースだが、今は違う。


「高校生になって世界に興味を持ったからか」と問われれば、「確かにそうだが、少し違う」と答えるだろう。


 正確に言うなら、連日のニュースのせいだ。


『速報です。7月11日の昨日未明、東京駅にて新たなご遺体が発見しました。前回同様、全身を強打されており、身元を確認できるものは所持しておらず、身元が不明とのことです』


「これで3


 東京駅にて3人もの身元不明の死体が3日連続で発見されている。


 こんな事件が起これば、誰だってニュースを見るはずだ。


 しかも、全身強打とキャスターは言っていたが、そんなものでは無いのだろう。


 一昨日のニュースでは警察官が複数人吐いている映像が流れた。


 警官が吐くレベルの死体。


 想像はしたくはない。


 朝から嫌なニュースを見ているわけだが、好んで見ているわけではない。


『もし不審な人物を見かけた方は、通報するようにお願い致します』


 見ている理由は、犯人が捕まったのかどうかを確認するためだ。


「じゃあ、行ってきます」


 俺は両親の遺影写真に挨拶をし、家を後にした。


 俺の高校は江ノ島内にある普通の高校。


 家から20分歩けば着くところにある。


 7月となればもう夏だ。


 江ノ島のビーチでは海開きが始まっており、毎年人が全国からやってくる。


 暑い夏なのに人口の密集もあり、更に暑さを感じる。


 バックの中からペットボトルを取り出し、熱中症対策のために買ってあったスポーツドリンクを飲んでいると、


「よっ、藤慎二ふじ しんじ。何を飲んでんの、俺にも少し分けてくれよ」


「自分のものを飲め。あとフルネームで呼ぶな」


 暑苦しいのに関わらず、肩を組んでくる友人———轟木京介とどろき きょうすけ


「今日は朝から校門で、身だしなみチェックがある。ネックレスなんかバックの中にしまってネクタイを付けろ」


 昔からの友人で、昔からチャラチャラしている男。根は悪い奴じゃ無いんだが、見た目がチャラチャラしていて、性格もチャラチャラしているから、よく勘違いをされる。


 遊び人で誠実さが欠けている。不真面目で不良で、女遊びが酷い男———だったかな、聞いた感じだと。


「マジか。ネックレスの代わりにネクタイでもするか。そういうお前も、今日放課後に頭髪検査があるのに相変わらずモッサリしてるな」


「俺のことは気にするな。天然が入っている分言い訳は出来る」


 天然パーマが少し入っている分、頭髪検査は他の生徒よりも厳しくは見られない。


 とはいえ、少しは気になる。


 髪を少し弄っていると、京介は「ニュース見たか」とネクタイを締めながら横目で聞いてきた。


「少しだけ」


「憂鬱になるよな。変死体が3人分出て、行方不明者が今日で15人らしいぜ」


「行方不明者のニュースは見てなかった」


「そっ。東京では15人、全国だと約150人近くが行方不明なんだと」


「………そうか」


 全然知らなかった訳ではない。今日はたまたまそのニュースを見なかっただけ。


 最近ニュースで話題になり、世間でも話題になっているニュースは2つある。


 1つは今日ニュースで見た変死体の事件。


 身元の判別ができないほど全身が強打されているらしく、犯人の手掛かりすらない。


 もう1つは、京介が言った『神隠し』だ。


 ニュースでは神隠しとは言っていないが、ネットではそう言われている。


 行方不明者は年齢男女問わず、東京都内で消えているらしい。


 消えた理由もどこに消えたのかも分からない。分かっている事は東京都内で消えたとだけ。


 2つの事件は繋がっているのか、専門家達が話している番組はあったが、専門家達ですら分からないらしい。


 水を忘れた、と隣で落ち込んでいる京介に、ペットボトルを押しつけ歩く。


 こんな所で倒れられたら困るのは俺だ。


「サンキューな」


 2人で登校するのは毎度のこと。こういうやり取りも毎度行う。


 いつになったら平和な日常が戻るのだろうか。


 いつになったら京介が飲み物を持ってくるのか。


 どっちが早いのか分からないが、どちらも早めに来て欲しい。


 




 

 

 

 


 


 


 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る