第24話 合コン③

「店長はもういいです!もずきゅん先輩の自己紹介に移ってください!」

 なんとか流れを戻そうとする猫実好和。


「なんや猫実くん冷たいわぁ」

 急に寂しそうな色を浮かべるアミ店長。


「と、とにかく!もずきゅん先輩お願いします!」


 一同の視線がもずきゅんに集中する。


 もずきゅんはアワワワとなり、怯えきった表情で口を開く。

「あ、ああああの、わわわわたしは、もずきゅんと申します...」

 すでに恥ずかしさMAX顔の人見知りネコ娘。


 そんなもずきゅんの安全そうな雰囲気に安心したのか、千代の攻撃で怯んだに見えた秋多が息を吹き返して質問する。

「もずきゅんさん!趣味は何ですか!?」


「ひ、ひいぃぃぃ!」

 秋多の勢いにさらに怯えるもずきゅん。


 柴井が秋多に釘を刺すように注意する。

「おい秋多。もずきゅんさんが怖がってるぞ。すいません、もずきゅんさん」


「い、いいいいえいえ!そ、そそそんな!」

 もずきゅんは怯えながらアタフタと恐縮する。


 彼女の人見知り&コミュ障ぶりをよく知る猫実好和が、穏やかにフォローに入る。

「もずきゅん先輩。怖がらせてしまったならすいません。無理せず落ち着いてください。もずきゅん先輩はアニメやゲームが好きなんですよね?」


「え?あ、そ、そそそその、はい。アニメとかゲームとか、す、すすす好きです」

 信頼関係を築きつつある猫実好和の言葉に落ち着きを取り戻したのか、もずきゅんは秋多の質問に回答した。


「そうなんですか!おれもゲームやりますよ!どんなのやるんですか!?」

 早速、秋多がグイグイと反応する。


「ど、どどどんなのって......ハッ!」

 ここで突如、もずきゅんの頭に電球がピコーンと光り、閃きが舞い降りる。

ーーーそ、そうだ!この合コンも、ゲームだと思えばいいんだ!そうすれば、緊張しないで、フツーに話せるかも!ーーー


「あの...もずきゅんさん?」

 唐突に上の空の顔でぼんやりするもずきゅんに、秋多が不思議そうに問いかけた。


「もずきゅんは先輩?......ハッ!」

 猫実好和は何かを察知する。


 それは、彼の脳裏に刻まれし、狂気の記憶......。


 もずきゅんは思考する。

ーーーこれはゲームだ!彼らを攻略する、シミュレーションゲームーーー


「え~と、もずきゅんさん?」

 秋多が再度問いかけた。


 もずきゅんの電脳が走り出す。


ーーーどの選択肢にしよう?ーーー


・「ゲームは色々やるよ!アクションとかシューティングとかパズルとか何でもやるよ!」

・「囲碁とか将棋とかチェスとか何でもやるよ!」

・「鬼ごっことかかくれんぼとか缶蹴りとか何でもやるよ!」

・「ゲームはRPG一択!」


ーーーよし!「RPG一択」だ!ーーー


 秋多×1があらわれた。


 どうする?

・たたかう

・にげる

・ぼうぎょ

・どうぐ


ーーーよし!「どうぐ」だ!ーーー


・おしぼり

・はし

・グラス

・クナイ


ーーーよし!「クナイ」だ!ーーー


・なげつける

・なげつける

・なげつける

・なげつける


ーーーもはや、投げつけるしかない!ーーー



 ...もずきゅんは、ぬらりと立ち上がる。


「???」

 一同は一斉に疑問の視線を向ける。


 もずきゅんはゆらりと壁を向き、アミ店長のすぐ後ろの壁にグッサリ突き刺さっていたクナイに手を伸ばすと、グッと引き抜いた。


「もずきゅん先輩!!」

 猫実好和の叫びも遅し。


 ビュンッ!


 もずきゅんの手から秋多めがけてクナイが放たれた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る