ようこそ猫カフェ『ネコまっしぐランド』〜我々はネコ娘である〜

第13話 アミ店長

　ちょうどその時である。

「おっ、ナル。ここにいたんかいな。ちょっとこっち来てくれへんか？」

　アミ店長がナルを呼びに休憩室へ入って来る。

「ん？お二人さん、向かい合ってどないしたんや？いつの間にずいぶん仲良うなったなぁ」

「て、店長！違います！ちょっと大事な話があっただけです！」

　ナルは慌ててうわずった声を上げる。

「大事な話？男女の？あらまっ」

　アミーナ店長は頬に手を当てニヒヒとニヤける。

「だ、だから違いますって！ちょっと猫実くんも何か言いなさいよ！」

　困ったナルは猫実に振る。

「違いますよ店長。ナル先輩にご指導いただいていただけです」

　猫実好和は真面目に答えた。

「なーんや、オモロないなぁ。ほんで、ナルの指導はどないやった？厳しかったかいな？」

　残念がりながらアミ店長は彼に訊ねた。

「いえ。ナル先輩は優しいので」

　また猫実好和は真面目に答えた。

「えっ」とナル。

「せやろなぁ。ナルはめっちゃええ子やからな」

　店長はうんうんと頷く。

「ですよね」

　重ねて同意する猫実。

「ちょちょちょっと、急になんなの......」

　急遽訪れた褒められ展開に動揺してあたふたとする金髪ツインテネコ娘。

　次第に彼女はいてもたってもいられなくなり、

「ふ、フロアに戻りますぅ！！」

　逃げるようにびゅーっと部屋を飛び出していった。

　猫実とアミ店長は顔を見合わせ、ハハハハ！と笑った。

「しかし猫実くん、なんやかんやうまくやっとるみたいで安心したわ」

　アミ店長が急に責任者らしい表情と口調で言った。

「え？あ、はい」

　意外そうな顔で返事する猫実。

　アミ店長は、いったん遠くを見るような眼差しを宙に向けて何かを想いながら、再び猫実に視線を戻して話し始めた。

「実はな？ウチは猫実くんにはビビッと来るもんを感じてたんや。せやから猫実くんに是非ここで働いて欲しかったんや。ホンマやで？」

「は、はあ」

「......なんとなく、昔、ウチのこと助けてくれた人に雰囲気が似とってな」

　アミ店長はそう言うと、後ろ手を組み、少女のように頬を赤らめてエヘヘと笑った。

「...そ、そうなんですか」

　猫実好和は、唐突に表出したアミ店長の可憐な様子にドキッとしてどぎまぎした。

　アミーナ店長はウフフと微笑みながらクルッときびすを返すと、

「ほな、また後でな！猫実くん！」

　休憩室から去って行った。

　猫実はしばらくボ～ッとドアを見つめていたが、ハッと思い出したように立ち上がり、昼食を取ろうと出かけて行った。