018 スライム娘にも穴はある
16日21時間45分45秒目。タイラントことおれはウィークリー・マンションの704号室へ戻ってきた。
ただしひとりで帰ってきたわけではない。隣には女子中学生くらいの年頃の少女ミリットがいる。
「寒ッ!!」
携帯電話ですべての暖房機能をつけ始め、わずか10秒間で部屋が温まった。こうなると上着は不要なのでコートやらジャケットやらセーターやら全部脱いでしまう。
「はーッ。あったけえ。あーッ。やることねえ……」
実際、異世界生活といえど住んでいる場所の発展具合は21世紀日本より発展しているくらいだ。ならばゲームかネット・サーフィンでもして過ごせば良い。だが問題はただのスライムだった日々の所為で、ロスト・エンジェルスをなにも知らないことだ。
流行りのゲームとか知りたいな、と思い、おれはミリットの方向を向く。この手の根暗そうな女子はゲームやアニメにも詳しいだろう(偏見)と。
「……。なに?」
なんでカノジョは白いパンツと黒いブラジャーしか着ていないのでしょうか? 悪いスライムじゃないおれは当然イチゴを渡していないのですが。
「ぁ、あーンの……なぜそのような格好に?」
「暑いから。暖房効き過ぎ」
「恥じらいわないのかお?」
「なんで同級生みたいな反応するの?」
たしかにおれはロリコンじゃない。ただ、据え膳食わぬは男の恥とは思っている。
この女、なにを考えているんだ? これからR18な展開を望んでいるのか? あしたのワイドショーに載るのはゴメンだぞ? でも据え膳だろこれ? どうすりゃ良いんだ……。
「あ」
そんなとき、絶対に反応しているはずのムスコがいないことに気がつく。ピクピクもしないとか、サラサラした汁が垂れてこないとかじゃない。そもそも股間にそれがないのだ。
「なに?」
「いや、失う前は邪魔だと思うときが多かったけど、いざ失うとあんな思い出やこんな思い出にはいつもいた相棒を思い出して……」
「意味分かんない。というか、ひんやりしてて涼しそうだから触って良い?」
ミリット。前々から思っていたけどさ、オマエ危機感なさすぎ。スライム娘の中身が男でしたっていう想像とかしたこと無いのかよ? と言いたくなるけど、ミリットはお構いなしにおれの身体へペタペタ触ってくる。ペタペタ、サワサワ、脚から胸まで。
「スライム娘ってもっと柔らかいと思ってた。けど案外弾力がある」
クラスの端っこで本でも読んでいそうな地味系少女は、スライム娘の胸を触ってそんなことを言った。
「というか、ほとんど人間と変わんない……なんで黙ってるの?」
あれだな、あれ。そう、あれだよ。こちょこちょするかのように触ってくるからさ、なにもないはずの股から液体が流れてきたよ。でもあれだ。それはスライムだ。スライム娘がスライム垂らしてなにが悪い?
「……ミリー、もう寝よう。腹減ったんなら冷蔵庫にフィッシュ・アンド・チップスが入ってるはずだから、それ食べてくれ」
おれはトイレへ向かう。なにをするって? そんなこと女の子に訊くなよ。
*R-18
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