第6話 金縛りの攻防
あれは私が高校生の頃。
宿題を終えた夜中、私は自室のベッドに入って寝ることにした。電気を消して、仰向けになって寝ようとした、直後。
キィーーーーーンッ。
突然、ひどい耳鳴りに襲われた。同時に身体が動かなくなる。手も足も固まってしまったかのように重い。なぜか目だけは開く。けれども霊感はないから、視界には暗い部屋が映るだけだ。
しかしなんだか、腹の部分に圧迫感があった。腹の部分に重りが乗っているような、だれかに押さえつけられているような感覚があった。
金縛りを初体験した私は、半ばパニックになりながらも、この状況を打破しようとあがいた。手足に力を込めて、なんとか動かそうとする。声も出ないが、「うぅー」とか「あぁー」とかなんとか絞り出そうとする。
そうやってあがいていると、不意に金縛りが解け、私は跳び起きた。
とりあえず、部屋の電気を点ける。しばらく辺りを警戒していたが、異常はない。
私は再び電気を消して、ベッドに仰向けに寝た。
キィーーーーーンッ。
またか!?
再び鳴る耳鳴り。身体が動かず、腹を押さえつけられているような感覚もある。
私はまた金縛りと戦った。全身に力を込めて、この状況から抜け出そうとあがいた。
ようやく金縛りが解けて、今度は横向きに寝てみることにした。
キィーーーーーンッ。
やっぱりダメかっ!?
横向きでも、横腹を押さえつけられるような感覚があり、身体が動かなくなった。
それからしばらく、私は金縛りと熾烈な攻防を繰り広げた。身体が動かなくなってはあがき、跳び起きて再び寝るが、また身体が動かなくなる。その繰り返しが何度か続いた。
そして、私は負けた……。
「もう疲れた……。なんにでもすればいいよ……」
いちいちあがくのが面倒くさくなった私は、金縛りにあっても放っておくことにした。耳鳴りがキィーンッとなっている。腹の圧迫感もある。けれどもあがくのは止めて、そのまま寝ることにした。
腹の押さえつけている重みは、ゆっくりと脇腹へ移動し、また腹の上を押さえる。なんだか痛くて気持ちいい。マッサージを受けているみたい。
そんなふうに思っているうちに、私は眠っていた。次に起きた時には、朝になっていた。
それからも、たまに金縛りに遭うことがあったが、あがいたり放置したりしているうちに、いつのまにか起こらなくなっていた。
ちなみに、金縛りはメジャーな心霊現象だが、調べてみると、医学的には睡眠麻痺と呼ばれる睡眠障害の一種らしい。睡眠中の人は、身体も脳も休んでいるノンレム睡眠と、脳は起きているが身体は休んでいるレム睡眠を交互に繰り返している。しかし、なんらかの原因で、レム睡眠中に覚醒してしまうと、金縛りが起きたように感じるそうだ。
私が体験した金縛りも、ただの睡眠麻痺だったのか。それとも、霊の仕業だったのか。
ほんとに、あの金縛りはなんだったんだろう……。
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