第74話
エリーとの婚約が発表されてから、学園に登校すると大勢の生徒たちからの祝福に照れながら可愛い笑顔を見せるエリー。
そんなエリーを睨む令嬢が何人もいた事を本人には気付かせたくない。
少し離れたところから目を光らせているガルに目配せする。
ガルも俺たちに合流して教室に入った瞬間、エリーに憎悪の視線を向けたのはセルティ嬢だ。
クラスメートがお祝いの言葉をくれる中、セルティ嬢が動くと同時に、俺はエリーを抱き寄せ、ガルは俺たちを庇うように前に出た。
セルティ嬢が王家の発表を噂だと言いかけたところで言葉を遮り、事実だと伝えればエリーを見下した視線を送ってきた。
アランとレイもその視線に気付くなりエリーの横に並び教室の雰囲気が一気に悪くなった。
さすがのエリーもこれには気付いたようだった。
困った顔をするエリーも可愛いが、気を逸らすためにエリーの額にキスを落とす。
エリーが人前でイチャつくのを恥ずかしがることは知っていたからな。
真っ赤になるエリーを見て上手く誤魔化せたと安心する。
担任の声で教室内の嫌な雰囲気もなくなったが、セルティ嬢の目が気になる。
あれは間違いなくエリーに何かするつもりだ。
セルティ嬢が執着しているのは俺か、それとも王妃の椅子なのか、ここまで思い込みが過ぎると誰が何を言っても聞かないだろうが、エリーに手を出させるわけにはいかない。
あんな怖い思いを二度とさせたくない。
対策を考えなければならない。
ふと視線を上げるとガルと目が合った。
頷くガルを見てアイツも同じ事を考えていたのだと分かった。
友人か・・・今まで俺の友人と言えばエリー・・・は今は婚約者だが他にはアランとレイぐらいしかいなかった。
今の俺にはガルもグレイやザックもいる。
アイツらならエリーを守るのに協力してくれるはずだ。
エリーには影も付いているが、学生だけの学園内では動きにくいだろう。
やはり皆に協力してもらおう。
俺一人で対策を考えるよりも、皆の意見を聞けばきっといい案が出るはずだ。
それに頭の回るゾルティーもいる。
エリーには普段と変わらない日常を心穏やかに過ごして欲しいが、常に狙われる可能性があることを自覚させた方がいいとも思う。
本人の自覚があるか無いかで危険を回避する確率が高くなるのも確かだからだ。
昼休憩にいつものカフェのテラスに向かう間もすれ違う生徒たちの祝福に丁寧にお礼を返すエリー。
その中にエリーを睨む令嬢も何人かいたが、アイツらはエリーの優秀さが分かっていない。
王太子妃教育を一週間で終わらせられる令嬢など、この中にはいないだろう。
多少の嫌な視線は俺にも向けられている。
女神のようなエリーに憧れる気持ちは分かるが諦めろ。
俺はしつこ、、、一途な男だからな。
誰にもエリーを譲る気はない。
こっそりガルに伝言を頼みグレイとザックにも俺の執務室に集まってもらった。
もちろんゾルティーとアランもいる。
今日のセルティ嬢のエリーに対する見下した視線のことをガルとアランが話すと、グレイとザックも以前セルティ嬢が俺の婚約者のように振舞っていたことを思い出したようだ。
「ふ~ん彼女まだ諦めてなかったんだね。みんなの前で勘違いするなと言ったのにね。理解出来なかったみたいだね。バカなのかな~?」
ゾルティー相変わらずキツイな。
「常に俺たちが側から離れないようにしているが、令嬢だけの授業の時はレイ嬢頼みになってしまう」
「今のセルティ嬢には取り巻きはいないからね。令嬢を使うことが出来ないとなると、どんな手を使ってくるか予想が難しいよね」
ガルとアランが順に意見を言っている。
「登下校に襲撃させるとか?」
「お茶会の作法授業で毒を入れるとか?」
「おい!グレイ!ザック!」
「有り得るよ。きっとセルティ嬢はエリー嬢さえいなくなれば自分が兄上の婚約者になれると信じているだろうからね」
「それか、ルフラン殿下に媚薬でも盛って強制的に既成事実を作るかも?」
「そうなると責任を取らされますよね?」
「やめろ!グレイ俺はエリー以外興味はない!それにザック!そんな行為はエリーとしかしない!」
「・・・ルフラン殿下・・・僕はそれ以上は聞きたくありませんよ?」
アランの笑顔が怖いのだが?
アランはレイともっと進んでいるだろ?
俺は平気だが姉弟のそんな話しは聞きたくないものなのか?
「例え授業といえど、王族の婚約者であるエリー嬢には毒見が付きます。やはりエリー嬢にも話して警戒してもらうのが一番でしょうね」
「エリーには僕とレイから話すよ。レイも元婚約者のせいで何度も狙われた経験があるからね。説得力があるだろう」
まあレイなら返り討ちにしていただろうがな。
俺たちはそれからも時間があれば俺の執務室に集まっては話し合うことが増えた。
グレイとザックのせいで話が脱線することも多かったがお互いの事を知るいい時間でもあった。
エリーが友達を作りたがっていた意味がようやく分かった。
コイツらは俺にとっても大切な友達だ。
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