第68話

俺が馬に跨ると走り出すラン。


ランの後ろをついて行くと、迷わず学園の裏に到着した。

そこでランが辺りの匂いを嗅ぎながらウロウロしている。


今頼りになるのは、エリーとレイが訓練をしたというランだけだ。


そこへウォルシュ家の護衛が遅れて到着した。

その護衛には通行止めがあった場所での聞き込を任せていた。


護衛からの報告を聞いてウォルシュ家の馬車をこの人気のない学園の裏までおびき寄せる為に通行止めを装った事が判明した。


これは計画的犯行だ。


エリーが学園に編入してまだ2ヶ月程だ。

その間にこれだけの計画を立てたのか?

10人以上の男たちを雇って?


犯人はある程度の金を動かせる人物なのは間違いない。


頭に浮かぶのはレックス。


そこまで考えた時にランが走り出す。


俺たちも慌てて馬に乗りランを追いかける。


森の中を走るランは途中で止まりながら匂いを嗅ぎまた走り出す。


それを何度も繰り返しながら見えてきたのはひっそりと佇む古い建物だ。

大きくもないが、小さくもない。

周囲には木が生い茂っていてまるで建物を隠しているかのようだ。ここは王都からそれ程離れていない場所だ。


あそこで間違いないのだろう。

ランが今にも駆けだしそうだ。


あそこに攫われたエリーがいるかと思うと一秒でも早く救い出してやりたい。


建物の出入口を確認して、俺の護衛とウォルシュ家の護衛で突入するタイミングを合わせる。



「ラン、エリーの居場所が分かるか?」


真っ直ぐ俺の目を見るラン。


「よし!行くぞ!」


一斉に建物に突撃したあとはランについて行く。


地下だと?

エリーは地下に閉じ込められているのか?

生きていてくれ!

エリーが無事ならそれだけでいい。


地下には似つかわしくない、豪華な扉の前でランが吠える。


ここか!


「エリー!エリー無事か?俺だ!」


力の限り扉を叩く。


「ルフラン私は大丈夫!待ってて今開けるわ」


エリーの声が聞こえた。


扉が開くと同時にランがエリーに駆け出し飛びついた。

少し疲れは見えるがエリーの無事な姿を確認した途端、震えが止まらなくなった。


この愛しい大切なエリーを失っていたかもしれない。


エリーと俺の間にいる邪魔なランはレイが引き取ってくれた。


エリーを強く強く抱きしめる。



そのレイから告げられた作戦に反対したが、二度と犯人がエリーを狙えないようにする為だと言われれば頷くしかない。



レイがランを連れて部屋から退室してくれた。

俺はすぐさまエリーに口付けしようとしたがランに顔を舐められてベタベタだからイヤだと拒否される。


洗面所で顔を洗ってきたエリーをソファに押し倒す。

まだ顔色が悪い。

怖い思いをさせてしまった。

初めてエリーの弱音を聞いた。

俺に相応しくなくなるのが怖かったと泣くエリー。

そんなこと関係ない。

たとえエリーが傷物にされようが、顔に傷が残ったとしても俺の気持ちは変わらない。


エリーをもう手放せないんだよ。


昨日よりも激しくなる口付け、もっとと強請るエリー。

エリーの目に熱が籠っている。

可愛くて愛しくてどうにかなってしまいそうだ。


突然起き上がったエリーが俺のシャツのボタンを外し鎖骨に唇を押し当て吸い付いてきた。



鏡で印を見た時に私を思い出してねそう言って離れるエリーに俺もエリーに付けたいと伝えた。少し考えてからエリーもボタンを外し『ここに付けて』と言ってきた。


エリーの膨らみが目の前にあった。

吸い込まれるように指定された場所に吸い付いた。

贅沢言うのならもう一つボタンを外して欲しい。胸の上の部分しか見えない。


白い肌に俺の印を付けても離れたくない。

エリーの匂いをもっと堪能したい。

終わりだと言われても嫌だと言って胸の柔らかさを顔を振ることで感じられた。

すべすべしていて気持ちいい。


結婚するまでは綺麗な身体でいたいと言ったエリーとの約束は守るから今だけ、もう少しだけこのままを許してくれ。



その時外のレイから合図がきた。


くっそー!邪魔しやがって!

エリーの胸をペロリと舐めてから離れる。


作戦通り俺は扉の陰に隠れる。


ノックの音の後入ってきたのはレックスだった。


やっぱりな。

こんな計画的な犯行を思い付き、大人数の男たちを雇い、こんな部屋を用意できる。


これでお前の人生終わったな。








「エリー僕の帰りをいい子で待っていたかい?」


俺の存在には気付いていない。

エリーは目を見開いてレックスを凝視している。


「やっと2人になれたね。ずっと会いたかったんだよ。君も私に会いたかっただろ?」


両手を広げてエリーに近づいて行くレックス。


「もっと喜んでいいんだよエリー。君は今から私のモノになるんだからね。一晩中抱いてあげるよ。そして君は私の子を産むんだ。」


コイツ!

エリーを穢すつもりか!


エリー大丈夫だ!

コイツには指1本触らせないからな!




「何言ってるの頭大丈夫?だいたいあなた誰?」




!!噴き出しそうになった。

エリー幼少の頃も会っているし、2年ほど前のお茶会でも会っているぞ。

エリーに婚約まで申し込んできた相手だ。

しかも、クラスも同じだ。


レックスが固まっているじゃないか!


「一晩中抱くって、あなたバカなの?」


レックスの後ろ姿しか見えないが震えているな。

覚えられていないことが悲しいのか?

バカと言われたことが悔しいのか?

まあ、プライドは高そうだもんな。




もういいだろう。


「おい!」


俺の声に反応して振り向いたレックスの顔を力の限り殴る。

はは勢いよく飛んでいったな。


「俺のエリーに何をしようとしてたんだ?エリーは俺の女なんだよ!」


胸ぐらを掴んでさらに殴り続けていると、エリーが止めに入ってきた。


「ルフラン!俺の女ってもう一回言って!」


目をキラキラさせてスゴく嬉しそうなんだが・・・


「いや、まずはコイツを」


「その人もう意識ないよ?ねえ早く!お願いルフラン」


エリーのお願いポーズが可愛い!

よし任せろ!


「俺の女」


「ちっが~う!さっきの勢いがない!」


勢いって・・・お前この状況分かっているのか?


困る俺に助け舟を出してくれたのは、頼りになるレイだ。


「エリーそれは今度ね。まずはコイツを護衛に引渡して、お爺様とお祖母様に無事を知らせましょ」


「そうだね!アランも心配だし帰りましょ」


エリー切り替えが早いな・・・




レックスを護衛に任せ、疲れの見えるエリーとレイの事情聴取は明日にしてもらい、ウォルシュ家に帰ることにした。


もちろん護衛達にはこの事件のことは口外しないよう約束させた。


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