第36話
レイがウォルシュ家に馴染んだ頃に両親が帰ってきた。
アランの隣で緊張しながら両親に挨拶をするレイだけれど、母の反応が凄かった。
「こんな可愛い子がわたくしの義娘になるの~最高だわ!アラン、よくやったわ!」
いきなり抱きしめられたレイは慌ててアランを見るが「ごめんねレイ、諦めて」と困った顔をしている。
「いや~ん!エリーと違って抱き心地もいいわ!」
それは胸の事を言っているのかな?
「もう、ロキシーちゃんそれは思っていても声に出してはダメよ」
お祖母様までそう思っていたの?
ちょっと何でお父様やお爺様まで頷いてるの?
え?メイド達まで?
まだ15歳よ?胸の成長なんて、これからよね?
前世でだって人並みにはあったわよ!たぶん・・・
確かに高校上がるまではブラなんて必要ないぐらい微かな膨らみだったけどね!
「だ、大丈夫よエリー、わたくしの娘ですものそのうち成長するわよ」
お母様!目を逸らしながら言われても説得力ありませんからね!
「レイチェルちゃん!わたくしと一緒にお茶会に行きましょう。来週呼ばれているの。昔からエリーとアランは嫌がって一緒に参加してくれたことがなかったの~」
そうだったわね。
「レイが行くなら僕も一緒に行くよ。僕もレイを見せびらかして自慢したいからね」
「アランが一緒に行ってくれるならウォルシュ侯爵夫人よろしくお願い致します」
照れながら小さく笑うレイ!可愛いわ!
「まあ!お義母様と呼んでちょうだいレイチェルちゃん!」
それからもお母様の暴走は誰にも止められず、デザイナーを呼んでレイのドレスや普段着用のワンピースを大量に注文した。
ついでだと、私の分も大量に。
それでも収まらず、アランとレイの結婚も学院の卒業後すぐ行えるよう手配しようとするわ、結婚後の夫婦の寝室を業者を呼んで大改造しようとしたり(これはアランがレイと相談して決めると断った)祖父母の住む離れもあるのに、もう1つ離れを注文しようとしたりと止まらない。
そこにお祖母様まで参加するものだから、勢いは2倍に・・・それならと私とレイも加わった。
最初のうちは遠慮していたレイも、お母様とお祖母様に自分の希望や意見も言えるようになると、いつの間にか世代を越えた恋バナが始まった。
お母様の話しがぶっちゃけ過ぎていてレイと一緒に赤面したり、レイもアランとの出会いから婚約破棄までの話をしたり、女4人もいれば話も終わりが見えない。
それが終わったのは、ヤキモチを焼いたアランがレイを迎えに来たから。
久しぶりに拗ねたアランを見て私たちは爆笑しながらレイを返してあげた。
室内が一気に静かになると、「エリーあなたとも恋の話が出来るようになりたいわ」そう言ってお母様が抱きしめてくれた。
「エリーが何も言わなくてもわたくし達はあなたを愛しているから隠していても顔を見れば分かるのよ」お祖母様も優しい顔でそう言ってくれる。
もう泣かないと決めたのに、お母様にしがみついて子供のように泣いてしまった。
誰にも言えないと、言わないと決めていたのに、私は堰を切ったように泣きながら話してしまっていた。
言葉に詰まりながら自分の思いと決意を。
お母様が優しく背中をポンポンしてくれるから、私の心も落ち着いてくれた。
お母様の体温が温かくて泣き疲れた私は睡魔に襲われた。もう目を開けていられない。
お母様、お祖母様最後まで黙って聞いてくれてあ・りが・・と・・・う。
眠ってしまった私の顔を見ながらお祖母様が「エリーの決意は2人だけの秘密にしましょうね」
「はいお義母様、この子は諦める恋をしたのですね」
2人を泣かせてしまったことを私は知らない。
~レイチェル視点~
エリーとルフランが話した内容は分からない。
でも、エリーが目を腫らしながら何事もなかったように振る舞うから、わたしもアランも何も聞けなかった。
本当なら交わるはずの無かった縁がエリーがアランとアトラニア王国に逃げてきてくれたおかげで、わたし達は出会えた。
そして、わたしは悪役令嬢になることも無くアランと婚約する事ができる。
もう既に元のゲームの内容は変わっている。
だってアランに婚約者はいなかったのだから。
ウインティア王国の学園に通っていないのもそうだが、エリーがルフランの婚約者候補になっていない事もゲームとは違う。
それに、エリーが公爵家の養子になるなんて設定にはなかった。
エリーはルフランの気持ちを知ったのだろう。
そしてエリーは彼の立場と、自分の立場を考えて決別したのではないだろうか?
エリーにも幸せになって欲しい。
ゲームの結末なんて関係ない。
ルフラン以外にもエリーを幸せにしてくれる人なら沢山いる。
だってまだ15歳だよ?
出会いなんていくらでもある。
王子妃教育を済ませたわたしから見てもエリーは完璧な令嬢だ。
いつかエリーが言っていた『自分のことを信じて守ってくれる人。浮気をしない自分だけを一途に愛してくれる誠実な人。』そんな人とも出会えるだろう。
変な男が近づいてきたら追い払う仕事はアランとわたしで請け負うからね。
想像していたよりも遥かにウォルシュ侯爵家は凄かった。
相手の有責とはいえ、婚約破棄になったわたしを快く受け入れてくれて、既にアランのお嫁さんとして扱ってくれるのは凄く嬉しいのだけれど、今までお金の使い道が無かったと言ってわたしに湯水のように使おうとしてくれる。
その使い方が怖すぎるのだ。
わたしだって同じ侯爵家の令嬢だが、レベルが違う。
桁が違いすぎるのだ。
この環境で育って、エリーとアランが我儘にも傲慢にもならなかった方が不思議だ。
2人が御家族の方や使用人達にも愛されているのは見ていても分かる。
その中にわたしも含まれているのが気恥しいけど嬉しい。
明日はアランがゾルティー殿下に呼ばれて会いに行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます