第24話
またアランとレイが庭園を散歩している。
2人が思い合っているのはカトルズ公爵家では皆んなが知っている。
2人だけの時は適切な距離をとっているのがそれもまた2人らしい。
入学式に遅れてきた子がヒロインの男爵令嬢だとレイが教えてくれた。
確かに庇護欲をそそる、か弱そうな美少女だった。
でも本当にか弱い令嬢があんなに目立つ音を立てて1人で入ってこられるだろうか?
それこそ注目をされたかったのでは?
ヒロインを見てから私の心が荒んでいる。
彼女の行動がワザとらしく感じるのは私の心が穢れているからだろうか。
彼女はアランの言った通り要注意人物ね。
Aクラスには王子もヒロインもいなかった。
ヒロインはともかく、幼い頃から王子教育を受けているはずの王子はどうなんだ?
これまた乙女ゲームでよくある、アホ頭の顔だけ王子だっりして。まさかね。
明日からはレイが1人にならないように常に私がへばりついておこう。
クラスが違えばそう会うこともないだろう。
甘かった。私の考えは甘かったのだ。それが分かるのに時間はかからなかった。
今日もレイをアランと迎えに行ってから教室まで3人で歩いていた。
もう周りの視線は気にならない。
彼ら彼女らはアランとレイを見ているだけだからね。
自分がモブだってことを忘れていたわ。ハハハ
教室に入ると先に来ていたルフランが「エリーおはよう」と挨拶してくれる。
「おはようルフラン早いのね」
「ああ俺は寮に入っているから近いんだ」
「不便はしていないの?何か困ったことがあれば気軽に相談してね」
「今のところは大丈夫だ。何かあればお願いするよ」
これよ!これ!気軽な会話って楽だわ~
「ルフラン、今日までは午前で終わるだろ?予定がないならうちに来ないか?」
横からアランがルフランを誘ってきた。
「いいわね!レイも帰りに寄っていくのよ。ルフランだめ?」
背の高いルフランだから見上げる形になるわね。
「だ、大丈夫だ」
やったー!
ルフランとも友達になれそう!
今日はこの広い学園内を説明しながら案内された。
普段授業で使う教室や、食堂。気軽に使用できる庭園やカフェなど。
カフェだけで5つもあった。
各学年120人程度、全体でも400人はいない。
貴族の子息子女がほとんどで、少ないけど平民もいるが彼らはとても優秀な人達だ。
明日から本格的に授業が始まる。
今日は案内が終わったら解散になった。
前を私とレイが歩き、後ろにはアランとルフランがついてきている。
馬車乗り場まで歩いていると前から走って来る令嬢が・・・もちろんヒロインだ。
そして何も無いのに私とレイの目の前で転んだ。
え~どう見てもワザと転んだよね?
私はルフランに庇われていたようだ。
だって前にはルフランの広い背中が見える。
横から覗くと彼女は涙目でアランを見上げているが、アランはレイをエスコートしてヒロインには目も止めず歩きだした。
「あ、あの」それでもヒロインはアランを呼び止めようと、手を伸ばすがアランはスルーして足をとめない。
私もいつの間にかルフランに手を繋がれて引かれていた。
彼の大きな手に手を繋がれて歩き出す。
彼を見上げると、ほんのりと顔が赤くなっている。
後ろを振り向くとヒロインがすごい顔で睨んでいた。
あ~やっぱり狙ってワザと転んだんだ。
ヒロインはアラン狙いなのか?
まだ1日しかたってないのに、もうアランに目を付けたの?
早すぎるだろ。
黙ってルフランに手を引かれながら馬車に乗り込んだ。
アランとは違う彼の大きな手は温かかった。
「ねえ、私の目にはワザと転んだんだように見えたんだけど、どう思う?」
前の席にはアランとルフランが座っている。
私の隣はもちろんレイだ。
「わたくしもそう思いましたわ」
あら?レイ淑女モードなの?
「そうだよ。国が違っても使う手は同じだね」
だから無視したのねアラン。
「ああ、そうだな」
ん?ルフランは平民よね??
カトルズ公爵家に着いて馬車から降りる時もルフランが流れるように手を差し出してくれたから私は自然に手を添えてしまっていた。
んん???
「ルフラン、ごめんね応接室で待っていてくれる?急いで着替えてくるわね」
「ああ、ゆっくりでいい」
公爵家の使用人にルフランを案内してもらっている間に私も私室に急いで向かう。
よく訪れるレイの為に、公爵家には私の部屋にある衣装部屋よりも狭いが、レイの衣装部屋もある。まあ軽装を置いているだけなんだけどね。
私もルフランを待たせないように楽な格好に着替えて急いで応接室に向かう。
扉を開けると窓から庭園を見ていたのだろう、ルフランが振り返った。
私の姿を見るなり手で口を押さえてしまった。
「やっぱり令嬢らしくないかな?」
「い、いや、エリーはそんな格好もよく似合うな」
そう、今の私はパンツスタイルだ。
ピタッとしたベージュのズボンに白いシャツ。
そして真っ直ぐな髪を高い位置で結んでポニーテールにしている。
「ルフランとも仲良くなりたいから本当の私を見て欲しかったの」
ニコリと笑うと、ほとんど表情の変わらなかったルフランがなにか言おうと口をパクパクさせている。
「慌てなくても大丈夫よ。ゆっくりでいいの本当の私を理解してくれたら嬉しいわ」
そう言って彼の手を引いてソファに誘導した。
やっぱりルフランの手は温かかった。
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