第16話
楽しみにしていたお茶会当日。
伯母様が指揮を取り公爵家のメイド5人がかりで着飾られた。
化粧も終わり鏡を見てびっくり!
メイドが施してくれたメイクは私を美少女に変身させていた。
目元が違う。
私の怖顔が柔らかくなっている。
今更だが人の顔って目の印象で随分変わるのね。
伯母様が用意してくれたドレスが可愛くて私には絶対に似合わないと思っていたが、自分で言うのもなんだが、今の私にとても似合っている。
エントランスで待っていた伯父様は「私の可愛いエリーは妖精だったようだ」
それは褒めすぎだよ。普通の人間ですから。
アランは「エリーとても似合っているよ。会場では僕から離れないでね」
「アランこそ私から離れないでね。ここにも女狐が出没するはずだから!」
だって今日のアランはとっても素敵だもの!
アランは私が守らないと!
伯母様は満足気にウンウンと頷いている。
今日招待されているビジョップ侯爵家には私たちと同じ歳のレイチェル様と、2つ上のクラウド令息の2人兄妹で、レイチェル様はこの国の第三王子の婚約者なんですって。
既に王子妃教育も始まっており、かなり優秀な令嬢だと噂だそうだ。
この日生まれて初めて人が恋に落ちたところを見た。
私たちはお茶会の会場である庭園に案内された。
会場の入口には30代半ばほどの夫人と令嬢が出迎えてくれた。
侯爵夫人とレイチェル令嬢だろう。
「ようこそお越しくださいましたカトルズ公爵夫人。横にいるのが娘のレイチェルです。息子は遅れての参加になりますの」
「初めまして公爵夫人、ビジョップ家が娘レイチェルと申します。」
顔を上げたレイチェル様はとても綺麗な令嬢だった。
綺麗に手入れされたふわふわの青い髪、エメラルドのような輝く瞳。
私と同じキツめの顔だが、さすが王子妃教育を受けているだけある。見事なカーテシーを見せてくれた。
「ご招待いただきありがとうございます。隣にいるのはウインティア王国のウォルシュ侯爵家の双子ですの。今我が家に滞在している甥と姪ですわ。」
「初めましてウォルシュ侯爵家が娘エリザベートと申します。以後お見知りおきを」
私もカーテシーで挨拶する。
私と目が合った瞬間、レイチェル様が驚いた顔をした。
すぐに笑顔になったが、化粧で誤魔化している私の怖顔に気づいたのか?
私の後にアランが続くと思ったが、なかなか動こうとはしない。
変に思ってアランを見ると、真っ赤な顔でレイチェル様を見つめている。
レイチェル様もアランに目線を向けると、一瞬目を見開いて同じように真っ赤になってしまった。
今まで照れた顔を見ることは多々あったが、なんでもソツなくこなすアランの赤面は初めて見た。
見つめ合ったまま動かないアランの背中を優しく叩いて「まずは挨拶しましょう?」と声をかけると、我に返ったのかすぐに「アラン・ウォルシュと申します。」アランらしくない簡素な挨拶で済ませると、またレイチェル様を見つめて動かなくなってしまった。
侯爵夫人も伯母様も一目惚れの瞬間に立ち会ってしまったことに頬を染めながらも困った顔になっている。
だって2人が一瞬で惹かれあったのを目撃してしまったのだ。
でもレイチェル様には婚約者がいる。
アランだって分かっているはずだ。
初恋と同時に失恋してしまったのだ。
侯爵夫人の声かけで席まで案内された。
座ってからもアランの目はずっとレイチェル様を追いかけている。
レイチェル様も招待客の相手をしながらもアランを気にしている様子だ。
アランを気にしながらも、伯母様とお茶とお菓子を堪能していると、私たちの席にもレイチェル様が来た。
「先程は失礼いたしました。」凄く申し訳なさそうに言うレイチェル様。
「気にしないで、完璧なカーテシーでしたわよ」
「あの、伯母様私ウインティア王国ではお友達がいなかったの。だからレイチェル様とお友達になりたいわ。」
バッとすごい速さで私に(ナイスだ)アイコンタクトを送ってくるアラン。
「あら!それならレイチェル嬢されよければ我が家にも遊びに来て欲しいわ。是非エリーのお友達になって欲しいの。」
さすが伯母様!
アランは真っ赤な顔で何度も頷いている。
「是非!ありがとうございます!わたくしもお友達になりとうございます」
目を輝かせて笑顔を見せるレイチェル様に見惚れているアランを放っておいて、お互いの都合のいい日を手紙でやり取りする約束をした。
だって王子妃教育の空いている日じゃないとダメだもんね。
王族との婚約だ。
可愛いアランの初恋でも可哀想だが諦めるしかない。
せめて友達のポジションぐらいは確保してあげたい。
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